三回
悠斗が小さかった頃。
イヤイヤ期のある日、食事中に悠斗がぐずった。
夫が、悠斗を投げた。
ぶつかった収納が、へこんだ。
ママは怒った。大喧嘩した。
夫は、もうしない、と言った。
そこで、ママは決めた。
「三回やったら絶対許さない!」
今なら、一回で十分だろう、と思うかもしれない。でも、その時のママは三回と決めた。
だから、あとから、一回で離婚を決めたことにはしない。
二回目。
少し大きくなった悠斗が、どこかで覚えてきた生意気な言葉を言った。
夫は、裏拳で悠斗を叩いた。
「もうやらないって言ったよね!? 子どものやることにそんな反応することある!? 家に全然いないくせに、いる時だけ父親面しないでよ!」
返事は、「あーはいはい、俺が何もかも悪いんだよ」だった。
それで、ママはさらに怒った。
半年ほど、ほとんど口をきかなかった。
三回目。
家族でテレビを見ていた。悠斗とママがふざけていた。
テレビの話を、悠斗が夫に振った。ママも、冗談で、ふーん、という顔をした。
突然。
夫が、悠斗を何度も蹴った。
げしげし。
物にも当たった。
食器。
家の中のもの。
大きな音。
紗良が泣いた。怖かったから。
三回目。
ママの中のカウントは、終わった。
夫は、頭を冷やすと言って実家へ行った。
その後。
三人で暮らした。一か月ほど。
その一か月で。
ママは気づいた。
「三人でいることが幸せだった」
夫がいない
それだけなのに、家が平和だった。
「これなら離婚した方が平和だなって」
離婚そのものへの不安は、ほとんどなかった。
なぜなら、家事も、育児も、もともとほとんど一人でやっていたから。
「もともとワンオペ状態だから、離婚しても負担増えることなんてないんだよー」
むしろ、減る。
やりっぱなし
出しっぱなし
後始末
臭い
大事なことは2回言う。
臭い
「帰ってくるだけでストレスだった(笑)」
離婚して、一人になったのではない。
もともと一人で回していた生活から、ストレスが一人分消えた。




