11/34
差し押さえ
悠斗が生まれ、ママが育休中だった頃。
家に、差し押さえの通知が来た。
ママは怒った。
「請求書も来てないのに差し押さえってどういうこと!?」
すぐ行政へ連絡した。
すると、請求はちゃんと来ていて、夫は役所とも話していた。
「子どもが生まれたから払えない」という話までしていた。
でも、ママには、通知を隠していた。
事情が分かった瞬間。
ママの態度は変わった。
「あー、分かりました。この件は全部私が処理するので、今後全部私に連絡ください」
怒る相手を間違えた。なら、その場で修正する。
夫からは、たぶん、「ごめん」くらい。
ママは両親に話した。
両親は言った。
「離婚しろ。帰ってこい」
そして、本当に迎えに来た。
ママには、帰る場所があった。
だから、逃げられなかったから残ったのではない。
それでも、帰らなかった。
仕事へ復帰する、一週間ほど前だった。
「会社に失礼だからできないよ」
離婚はもう頭にあった。
それでも、子どもには父親がいた方がいいのかな、
もう一人子どもが欲しい、という理想もまだ残っ
ていた。
今の自分から見れば、「それ違うよ」と言えることがある。
でも、当時の自分には、当時見えていた材料しかない。
ママが、昔の自分を簡単に責めない理由の一つだった。




