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ママはたぶん、こう言うよ。 ― 私がいなくても、困ったときに開いてください ―  作者: わく


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差し押さえ

悠斗が生まれ、ママが育休中だった頃。

家に、差し押さえの通知が来た。


ママは怒った。

「請求書も来てないのに差し押さえってどういうこと!?」

すぐ行政へ連絡した。

すると、請求はちゃんと来ていて、夫は役所とも話していた。

「子どもが生まれたから払えない」という話までしていた。

でも、ママには、通知を隠していた。

事情が分かった瞬間。

ママの態度は変わった。

「あー、分かりました。この件は全部私が処理するので、今後全部私に連絡ください」

怒る相手を間違えた。なら、その場で修正する。

夫からは、たぶん、「ごめん」くらい。

ママは両親に話した。

両親は言った。

「離婚しろ。帰ってこい」

そして、本当に迎えに来た。


ママには、帰る場所があった。

だから、逃げられなかったから残ったのではない。

それでも、帰らなかった。

仕事へ復帰する、一週間ほど前だった。

「会社に失礼だからできないよ」

離婚はもう頭にあった。

それでも、子どもには父親がいた方がいいのかな、

もう一人子どもが欲しい、という理想もまだ残っ

ていた。


今の自分から見れば、「それ違うよ」と言えることがある。

でも、当時の自分には、当時見えていた材料しかない。

ママが、昔の自分を簡単に責めない理由の一つだった。



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