第三話 COUNT THREE Hymne à l'amour
ギッギッギッギッギッギッギッギッ
「…あっ、いけない のっ、だめっ、やめなさい…あ」
ギッギッギッギッ
「こんなこと は っ……んんっ、ねっ、ね?」
ギッギッギッギッギッギッギッギッ
「こ、こんな…ことしたら……刑務所に、い、いれられ…っつ、んっ 入れ、挿れられっっ ちゃうから」
ギッギッ
「はっ、はっ…んっ、お願い、誰にも 言いつけたり、しないか、ら、ねっ? ね」
ギッ
「今ならまだぁ っうっ、やめ…や やめ…堪忍して お願いっ、だめー あっ だめっ」
月光を照り返し、ぬらぬらと鈍く昏く光るボンネットはクッションの壊れた硬すぎるベッド。覆いかぶさる俺の体の影の中、かすかに照り返しをあびて柔らかくシルエットを浮かび上がらせる全裸の輪郭。組み伏せるように押しつぶし、俺は、その体を蹂躙する。
軒下に吊るされた干し柿のように、俺は容赦なく獲物を荒縄で締め上げる。裏に表に、右に左に転がしながら亀甲に縛り上げるためにその体を転がすたびに、タイムマシンの前輪のサスペンションと車体のフレームが軋みをあげる。
美は即興によって生みだされる。このステージで月のスポットライトを浴びながら、最後のひと縛りで俺のビーナスを、芸術を完成させる。ギリギリギリギリギリ~~。
「あっあっあ、あ、だめっ本当に、あっ、ほ、★くなっちゃうー 干しくなっちゃうからぁー」
角川のババアめ、こんな被虐的趣味があったとは。とんだ淫欲のおねだり悪魔、干からびたわがまま肥後ずいきだ。
俺はババアを荒縄でタイムマシンのボンネットごとグルグルに締め上げ終えた。
若奥さんは両腕を後ろ手に軽く縄をかけ、助手席に放り込んである。戦士の銃をちらつかせて脅し、ババアとあんたは人質として連れていくと告げるとおとなしくされるがままになった。銃を目にした時に一瞬、眉を曇らせ、そして縄をかけている時、憐れむように俺を見つめ、そして目を逸らしぽつりと一言口にしたが。
「そう。あなたが、そうなのね…」
ババアと若奥さんはこのまま連れ去る。これから始まる魔王子たちとの戦いで使えるコマになるかもしれない。奴らを惑わせるエサに使えるかもしれない。足手まといになれば放り出すだけ。復讐は非道だ。氷のように心を凍らせ続けていなければそれを完遂することはできない。北極圏で身に着けた復讐の掟。俺はその道を望んで進む。生萌との輝かしい日々を取り戻すために。
そう思いを新たに夜空を、星々を見上げた瞬間、強烈な違和感に全身が包まれた。
ざわざわ、ざわ、ざわわと、全身の肌が粟立ち毛が逆立つ。
泣きながらこの場から消えて無くなりたくなる圧倒的な不安と、発作的にとめどなく湧き上がる恐怖に塗り込められ、理由のない絶望に支配された。
今すぐ、記憶も人間らしさもセグウェイもサイコガンも、復讐心も恋心もプライドもそのへんに放り捨てて全力で逃げ出したくなる。
頭上に異変が生まれていた。まるで<夜>が質量を持って降ってくるような圧迫感。
煌めく星空を背景に、5つの円盤の腹がもう随分と大きく見えた。
ガタガタと震えながら歯をくいしばり、俺は言葉を絞り出した。
「刈り入れの季節だ」
(次回予告)すべての元凶である悪夢が生身で、ついに手の届くところに! レジスタンスと手を結んだタフネス大地に立つウォーターは戦闘の混乱のなか生萌の姿を探すが……。




