第九話
「女なら誰でもいいわけ?」
「そんなわけないだろう」
神尾との会話はまだ続いている。
考えたこともなかったので、今考える。
自分がどういう子が好きなのか。
答えは決まっている。
ちーちゃんさんだ。
ちーちゃんさんの様な女の子が好きだ。
でもそれはどう説明するんだろう。
ちーちゃんさんを他者に伝えるには。
ちーちゃんさんの素晴らしい可愛さ、その絶対的価値を。
「目がキラキラしてて」
「ほうほう」
嫌、待て。
キラキラしてなくてもよくないか。
死んだ魚のような目でも全然あり。
寧ろ見たい。
いつも全力で笑顔を振りまいてくれているが、無表情なちーちゃんさんとかレアすぎて見てみたい。
「キラキラしてなくていい」
「何言ってんの?あー、じゃあ胸は?大きい方がいい?」
ちーちゃんさんは巨乳だ。
華奢な体に不釣り合いな豊満な胸はちーちゃんさんの溢れる魅力の一つだろう。
これだけは譲れない。
「それはそうだな」
「巨乳派なんだ?」
「ああ」
嫌、待てよ。
貧乳なちーちゃんさんとか普通にありじゃないか。
あれだけ大きければ肩こりとか凄いだろうし。
走ったとき揺れて痛いのではないだろうか。
ちーちゃんさんの苦しみが軽減されるのなら胸なんか小さくていい。
「小さくてもいい」
「どっちよ」
「働き者で」
「へー」
ちーちゃんさんはいつも一生懸命働いている。
客商売というのは大変らしい。
嫌な客も多いだろう。
だがいつも彼女は笑顔で新作ケーキの売り込みに余念がない。
あんなに頑張らなくてもと思う。
「具体的にはどんな仕事してる人がいいの?」
別に何でもいい。
寧ろ働かなくてもいい。
ニートで引きこもりなちーちゃんさんとか見てみたい。
お昼頃起きて来てだぼだぼのグレーのスウェット姿で髪はボサボサ。
養いたい。
何にもしてくれなくてもいい。
「お腹すいたー」とか「ご飯はー?」とか言われたい。
ちーちゃんさんのお母さんが羨ましい。
ちーちゃんさんが女友達と雑な会話をしているのを延々と聞いていたい。
お店にいる時と違ってもっと砕けてぞんざいなんだろうなと思うとワクワクする。
「別に働いてなくてもいい」
「顔は?」
「顔は可愛い」
「ほー」
ちーちゃんさんは可愛い。
とてつもなく可愛い。
あの顔と声じゃなかったら俺はちーちゃんさんを好きにならなかった。
嫌、待て待て待て。
違う。
俺はちーちゃんさんがどんな見た目でも好きだ。
あの顔じゃなくても、あの声じゃなくても、ちーちゃんさんだと俺が認識できれば、それはちーちゃんさんに違いないのだ。
あの見た目である必要はない。
あの声を失ったとしても関係ない。
ちーちゃんさんが例え鬼火のような姿になっても俺は追いかける。
それはきっとこの世のものとは思えない美しい炎に決まっているのだから。




