第六話
「カボチャのプリンとカボチャのシュークリームはいかがでしょうか?本日から十月三十一日までの一週間限定メニューとなっております」
新たなる音声入手。
俺は内心宴状態だったが、いつも通り平静を装った。
こういう時生まれついての無表情は有り難い。
ハロウィンか。
店の前にデカいカボチャが置かれていたのはそういうことだったのか。
あのカボチャ運んだのは誰だろう。
店員さんは女性ばかりだからひょっとして、ちーちゃんさんが運んだのだろうか。
あの細腕で。
痛々しい。
カボチャ千個くらい運んでやりたい。
でもカボチャをよいしょよいしょと両手に抱えるちーちゃんさん尊い。
見たかった。
凄く見たかった。
俺は自分の想像に奥歯を噛みしめた。
「カボチャのプリンとカボチャのシュークリームとアップルパイで」
カボチャのお菓子が嫌いなわけではないが、そんなに好きでもないので、アップルパイも買っておく。
ちーちゃんさんは喜んでくれた、様に見える。
今日一日ずっと言っていたんだろうし。
職務に忠実で頭が下がる思いだ。
「ハロウィン、ここ何かするんですか?」
「はい、当日お子様連れのお客様限定ですがカボチャのクッキーを配る予定です」
「そうですか」
コスプレはしないんですか?と聞けるわけもなく俺はちーちゃんさんからケーキを受け取り、店を後にした。
ありがとうございましたの声が何だか少し大きかった気がする。
一日言っててどれくらい成果があるものだろう。
買ってくれない人がほとんどじゃないか。
カボチャとか嫌いな人もいるだろうし。
取りあえず十月三十一日まで毎日買う。
ケーキの予約とか言われなかったな。
母の日と子供の日はあったのに。
母の日にロールケーキはいかがですか?を帰ったら再生しよう。
二つくらい予約してあげたらよかったと今も後悔している。
だが母親が二人いて複雑な家庭環境なのではとあらぬ誤解を受けるのではという自分でも恥ずかしくなるほどの杞憂に侵され予約は一つに留めた。
子供の日のこいのぼりケーキも間抜けな心配に勤しんだ。
子持ちだと、既婚者だと思われやしないかと。
だが聞かれてもいないのに甥っ子にとか姪っ子にとか言うのは不自然で自意識過剰だ。
俺はちーちゃんさんと会話がしたいわけじゃない。
ただ毎日彼女の生存と実在を確認したいし、できれば毎日違う姿を見てみたい。
毎日同じ服を着ていたって今日のちーちゃんさんは今日だけのちーちゃんさんだ。
一日だって同じじゃない。
だから毎日会いたい。
見たい。
聞きたい。
カボチャのシュークリームは思ったより美味しかった。
プリンも悪くないし、これなら毎日食べられる。
明日ちーちゃんさんがいたらカボチャの入れ物に入った焼き菓子の詰め合わせも買おう。
ハロウィン当日は仕事だ。
タイミングよく子連れの客とぶつかってクッキーを配るちーちゃんさんを見れないものだろうか。
見たい。
見た過ぎて吐きそう。
コスプレの可能性は低いが、もしかして「トリックオアトリート」とか言ってくれたりするか。
不味い。
死ぬ案件かもしれない。
心して当日を迎えねば。




