第四話
「今日から苺大福始めました。宜しければいかがですか?」
彼女はいつも新商品が出ると必ずこのように言ってくれるのだが、俺は話しかけられることを想定して生きていないので、いつも反応が遅れ、暫く固まってしまう。
まるで時が止まったように。
今日一日これを繰り返していたのだと思うといじらしさに涙が出そうになる。
可愛い。
「あー、じゃあ、それ六個下さい」
苺大福は六個しか残っていないから、これでもう今日彼女が苺大福を来る客来る客に言う必要はなくなる。
「はい、かしこまりました。苺大福六個ですね、少々お待ちくださいませ」
結構大きな苺大福なのでいつもよりケーキの箱が大きい。
俺は新しい音声が手に入り浮かれた。
明日は非番だから、店内で食べる。
楽しみだ。
長い時間いるということはそれだけ彼女を見ていられるし、貴重な音源が手に入る。
有り難い。
ただ明日彼女が休みなら家に帰って食べる。
昼間っから男一人でケーキを食べてるなんてどんな人間だと思われているだろう。
おこがましいとすぐに反省する。
こんな取るに足らない眼鏡男彼女のような可愛い女の子が興味持つわけがなかった。
図々しい。
苺大福を食べながら彼女の「今日から苺大福始めました」を延々とリピートする。
もう少し高いイヤホン買おうかな。
ああ、可愛い。
ケーキ屋が苺大福始めるとか、経営が上手くいってないのだろうか。
心配だ。
明日からもっと買おうか。
でもお客さんはいつも入っているし、城塞へと続くこのキャッスルロードにケーキ屋は此処しかないから儲かっていそうなものだが。
まあ、元々小豆の入ったロールケーキとか、抹茶系のケーキも多かったから苺大福を始めてもおかしくないのかもしれない。
冷やし中華始めたら経営難かもと心配しよう。
もしくは方向性に迷い。
俺としては彼女がずっと働いていてくれるのならラーメン屋になっても構わない。
ラーメンは好きだし毎日食べに行く。
制服は変わってしまうだろうが、ラーメン屋と言うことはチャイナドレスが見れたりするか。
嫌、それは彼女に申し訳ない。
というより、太腿とか直視できない、死んでしまう。
今の制服が最高すぎるんだよな。
スカート丈長くて、黒いタイツ履いてるから露出してるの首と手と顔だけなんだよな。
また手が小さいんだ。
夏服の手首の細さ、白さ。
初めて見た日死ぬかと思った。
夢かなと、俺が見ている夢なんじゃないかと。
彼女自身が俺が作り出した願望なんじゃないかと。
夏服でもスカート丈はそのままで、黒タイツに黒のストラップシューズとか素晴らし過ぎだろ。
店長の趣味だろうか。
だとしたらどれだけ礼を尽くしても足りない。
半年通って今だに顔を見たこともないが。
まあなんだっていい。
あの店で働いていてくれる限り俺は彼女にいつでも会える。
明日も、明後日もずっと。




