第4話
「私があなたたちの担任――グラダリィよ! 午前中は気楽に自己紹介させてあげたけど、ここからは気を引き締めなさい!」
食堂での騒動が終わったあと、教室へ戻った俺たちは、すぐに屋外授業へ向かうよう言い渡された。
「今日の授業は、あそこにある的を撃ち抜いてもらうわ!」
グラダリィ先生が指さした先には、空中に浮かぶいくつもの的があった。
ゆっくり動くものもあれば、かなりの速さで飛び回っているものもある。
「やることは簡単よ! 魔法を撃って的に当てるだけ! それであなたたちの実力を見させてもらうわ!」
課題そのものは、魔法を撃って的に命中させるだけ。
簡単と言えば簡単だけど、実際にやるとなると話は別だ。
威力、精度、それに一度に放つ魔力量。
どれも成績に影響する可能性がある。
正直、前世の俺だったら「そんなの簡単だろ」と思っていただろう。
でも実際に自分で魔法を使う立場になってみると、想像していたよりずっと難しい。
威力を調整する以前に、最初の頃なんて魔法をまともに放つことすらできなかった。
この世界の本を読んで、ようやく少し扱えるようになったくらいだ。
「それじゃあ、まず一人目!」
一人の男子生徒が、おずおずと前へ出た。
いきなり指名されたうえに、グラダリィ先生の迫力もあってか、その男子生徒は本来の実力をうまく発揮できなかった。
「落ち込む必要はないわ。誰にだって調子が悪い時くらいあるものよ」
よかった。
性格はかなり厳しそうだけど、実際のところは面倒見のいい先生らしい。
その後も次々と生徒たちが前へ出て、的を狙って魔法を放っていく。
撃ち終わるたびにグラダリィ先生が助言を与え、そのうえでもう一度挑戦させていた。
こうして見ると、本当にかなり面倒見のいい先生だ。
「次!」
そして、とうとうレインスの番がやってきた。
でも、俺が想像していた主人公みたいに、自信満々の笑みを浮かべているわけじゃない。
むしろ今のレインスは冷や汗を流し、完全にテンパっていた。
まあ、そりゃそうだよな。
俺が同じ立場だったら、間違いなく同じ顔をしている。
魔法を使えない生徒にとって、この課題はかなり厳しい。
レインスは銃を撃つような形で指を構え、魔力を指先へ集めようとする。
だが――。
何も起こらない。
二回目。
三回目。
四回目。
そして五回目になって、ようやく指先に小さな光が灯った。
しかし、その光もすぐに消えてしまう。
無理をしすぎたのか、レインスは力が抜けたようにその場へ膝をついた。
「レインス、大丈夫!?」
ルルアンが慌てて駆け寄り、彼の身体を支える。
「悪い、ルルアン……情けないな、俺……」
「大丈夫よ、レインス君。今はまだ魔法を使えなくても、あなたはちゃんとこの学園の入学試験に合格している。それなら、まだ目覚めていない魔法の素質があなたの中にあるってことよ」
さすがグラダリィ先生。
こういう時でもまず生徒を励まして、レインスが魔法を使えないからといって見下したりはしない。
そして次の挑戦者は――。
シス・ヴィノ。
彼が前に出た瞬間、周囲の視線が一斉に集まった。
ヴィノはゆっくりと中央まで歩いていくと、片手を上げて的へ向ける。
次の瞬間。
黒い魔法弾が射撃場を駆け抜けた。
一発。
二発。
三発。
ヴィノは片手だけで次々と標的を撃ち抜き、あっという間にすべての的を落としてしまった。
「……合格」
さすがのグラダリィ先生も、驚きを隠せていない。
そしてルルアンも、まだ力の入らないレインスのそばにいながら、その視線は完全にヴィノへ向いていた。
「次! ポート・トール!」
……あ。
俺の番か!
他のみんなの様子ばかり見ていて、自分の順番を完全に忘れていた。
ただ、この課題を見ていると、前世で祭りの屋台にあった射的を思い出す。
俺は姿勢を整え、まずは動きの遅い的や止まっている的を狙って撃った。
ヴィノみたいに一瞬で全部終わらせるなんて芸当はできない。
でも、急がば回れってやつだ。
中央付近を飛び回る少し速めの的は、しばらく狙いを定めてから一つずつ撃ち抜いていく。
そして最後に残ったのは、かなりの速度で動き続ける的。
俺はその動きをしばらく観察し、少し先の位置へ狙いを定めた。
――命中。
しかも、ど真ん中だ。
「うん! 少し時間はかかったけど、ちゃんと全部当てたわね。悪くないわ、トール君」
「はぁ……はぁ……」
俺は大きく息を吐いた。
どうやら魔力の消費は、体力ともある程度関係しているらしい。
それにしても……。
褒められるのは嬉しいけど、こうして面と向かって評価されると少し照れる。
ただ。
課題が終わったあと、俺は何人かの視線が自分へ向けられていることに気づいた。
更新が遅れてしまってすみません!
台風の影響で、自宅のネットが完全に繋がらなくなってしまいました。
お読みいただきありがとうございます。
「続きを読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、
ブックマークや☆での応援をいただけると、執筆の大きな励みになります。




