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ナナコChannel  作者: 木山碧人
第十一章 オクトーバーフェスト

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第42話 世紀の大発明

挿絵(By みてみん)





 マンハッタン地下で新たに建設された研究開発用のラボ。真新しい最先端の備品が所狭しと並ぶ中、注目を浴びるのは黒衣を纏う紫髪ショートヘアの小柄な女性。実験用作業台を介し、対面には黒スーツを着た金髪ロングの若々しい女性。慣れない手つきでマイクレコーダーを起動させ、インタビューを開始しようとしていた。


 ――名前と肩書きは?


「ナガオカ・ミアと申します。肩書きは超常現象対策局本部所属の副局長ですね」


 ――得意分野は?


「得意なのは量子物理学と核物理学ですが、医学、工学、薬学にも心得があり、博士号は五つ取得しています」


 ――これまで生み出した物の中で最高傑作はなんでしょう?


「メリ……いいえ、この質問の場合は私の発明品という意味ですよね。それなら、〝悪魔の右手〟と言いたいところですが、あれは再現性のないオーパーツが部品に組み込まれているので除外としましょう。純粋に私の専門分野だけで作った物の中で言えば、やはり……〝幻想の左足〟でしょうか」


 ――主な性能と用途を可能な限りお教え願えますか?


「義足として歩行をサポートする他、走行を強化するギミックが搭載されており、学術的な説明を省略すれば、磁力の操作による『反発』と『吸着』が表向きの能力だと使用者本人には告げてあります」


 ――ということは本来の用途は別にあると?


「はい。現在、時間停止状態にあるマクシス・クズネツォフが有する〝伝導の右手〟を利用した放電を組み合わせ、超高出力超高速状態で〝幻想の左足〟を一点に叩き込んだ場合、莫大な運動エネルギーが発生し、周囲の空間は歪みます。いわゆるワームホールが形成され、異なる世界と繋がることが予想されます。ただ、それだけでは不十分。力場が不安定のため、すぐに閉じてしまいます。それを想定し、〝幻想の左足〟には、不安定なエネルギーを安定させる機能が備わっています」


 ――学術的に言えば、どういうことなのでしょう?


「CFLクォーク物質。プラスの表面圧にマイナスのエネルギーを加えることが可能となり、内側に閉じようとするワームホールの性質を抑制し、外側へと押し広げ続け、周囲を際限なく吸い込むブラックホール化を阻止します。力場の内部は超流動、超電導状態が維持され、摩擦や抵抗がゼロになるはずなので、エネルギーロスは発生せず、半永久的に機能は維持されます」


 ――つまり?


「安定した異世界間航行が可能になる。あくまで理論的には、ですが」


 ◇◇◇


 黒雷を伴った義足の男の一撃は、確かにヴォルフへと直撃した。自然現象におけるプラスのエネルギーと意思の力におけるマイナスのエネルギーが組み合わさった必殺技が炸裂した。絶大な破壊力を発揮し、ヴォルフを地平線の彼方へと蹴り飛ばした。生死は不明で、復帰できるかどうかは定かじゃなかった。本来なら、安否を気にしないといけないところなんだろうけど、それよりも優先しなければならない問題が目の前に広がっていた。


「なに、これ……」


 二人が接触したと思わしき空間には穴が開いている。いや、奇妙な球体と言った方がいいのか、うにょうにょと絶えず動き続けており、内側には義足男が放ったと思われる黒雷が白く染まり、高速で回転して、形を保っているように見えた。


「とっとと。勢い余ってブラックホールでも作っちまったか?」


 当の本人は生成されたものに対して、理解が及んでいない様子だった。合っているように聞こえるけど、なんとなくしっくりこない。聞きかじった程度しかブラックホールを知らないけど、仮に彼の発言が正しいなら、私たちはとっくに吸い込まれているはず。そうなっていない現状を考えると、彼の発言は間違っていることになる。実際、あの球体から吸引力は一切感じず、非常に安定しているように見えた。

 

「いいえ、これは……」


 専門外の限られた知識の中から、私は最適解を手繰り寄せる。合っている保証はなかったけど、これ以外に考えられない。


「――ワームホール」


 私が思い浮かべた結論を口にしたと同時に、球体から生じる存在がいた。


『『『『…………』』』』


 現れたのは、多種多様な異形の怪物。奇しくも私の目的と密接に関係する『化け物』たちが現れていた。


 『殺意の伝染』に続き、『ワームホール』に続いて、これ。想定しなかった事象が次々と押し寄せ、私の頭はパンク寸前だった。


 何を優先して、何を切り捨てればいいか分からない状態。誰彼構わず全てを救うなんてのは無理な話で、割り切って行動する必要があるのは確か。ただ、私がこれから何をするにしても避けては通れない問題がある。


 アレを私が良しとする『化け物』の一員に加えていいのか。


 鬼を含めた特定外来種を世間に認めさせ、衣食住で困らないレベルに生活水準を引き上げるのが目標の一つだった。だけど、あんなものを世間が見ればどう思うか。歩み寄れないと思う人が大半で、同じ『化け物』に該当する私たちの地位も下がる。彼らを元の世界に戻し、ワームホールを閉じることができれば、『化け物』のイメージは保たれるけど、どうも引っかかる。


 『化け物』の良い面だけを伝えるのは戦略として当然だけど、悪い面も伝えないとフェアとは言えない。『化け物』の中の善と悪を世間に提示できなければ、社会的な問題まで持ち込めない。BANされたり、諸々の事情もあって配信や発信を怠っていたけど、このまま不透明性を維持した状態で活動を続けていれば、私たちの行き着く先は『彼ら』と同じだ。だから……。


「…………」


 私は懐から携帯を取り出し、配信開始ボタンを押し、胸元のホルスターにセットする。ナナコChannelのBANは数日前に解除されている。異議申し立てを行い、私たちの特別な事情を配慮して、一度だけチャンスをもらえることになった。世間に何らかのコンテンツを発信し、ある条件を満たせば、例外的に活動を認めてもらえるよう準備期間に話をつけておいた。


 高評価数1億。


 全体未聞の数字であり、生半可なコンテンツでは決して到達できない領域。本来の予定とは違ったけど、こうなった以上は腹をくくろう。

 

「こんばんは、皆さん。これから私は『化け物』のリアルをお届けします」

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