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ナナコChannel  作者: 木山碧人
第十一章 オクトーバーフェスト

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第32話 祭り

挿絵(By みてみん)





 戦闘は目的を達成するための手段でしかない。トゥーレ協会を創設した当時から変わらない思想であり、強いこだわりはない。勝つか負けるかさえも興味は薄く、計画が進むのならどちらに転んでも構わなかった。


 今回の戦いに関しても同じことだ。常闇の王を復活させた時点で役目は果たされており、後は補佐に回るだけでいい。寄せ集めの第一級悪魔如きが封印にこぎつけられるはずもなく、私が勝とうが負けようが世界の結末は決まっている。


 それなのに、この気持ちはなんだ。この胸の高鳴りはなんだ。血湧き肉躍る理由はなんなのだ。私の知らない感情が押し寄せる。握る大太刀の影響かとも考えたが、違う。外側ではなく、内側から生じている感情なのは分かる。


 ここまで考えれば答えは二つに一つ。


 ナツキ由来のものか、私自身のものか。


 ここでその結論を出すのは、時期尚早だ。


 今は愉しもう。この『祭り』を心の底から。


「ハハ、ハハハッ、ハハハハハハッッ!!!!!」


 溢れ出したのは喜怒哀楽における喜の感情。


 腰椎が折り砕かれるような痛みが心地よく感じる。


 私の計画を阻もうとしている青の軌跡が愛おしく思える。


 舞台は移動し続けており、公園を抜けて、公道に突入していた。


「気でも触れたか? なぁ、お山の大将!!」


 弾け飛ぶアスファルトを横目に見ながら、突きつけられるのは銃口。


 私のセンスを突破できるのは証明済みであり、角を砕かれれば死に至る。


「分かりかねるね。答え合わせといこうか!!!」


 振り向きざまに言葉を返し、指鉄砲の要領で左手人差し指を銃口に見立てる。


「「――――ッッッ!!!!」」


 バン。チープな音色を奏で、私たちは公道を直進し続ける。


 車窓から眺める風景のように街並みが通り過ぎ、戦闘は過熱する。


「……やるねぇ。だが、こいつはどうだ!!!」


 衝突は対消滅で終わった後に、視界に入るのは白の銃口。


 黒の銃とは異なる能力が秘められると思われるが、予測不能。


「――黒縄地獄グレイプニール!!!!」


 放たれた銃弾は正面のアスファルトを打ち抜き、白い鎖に変わる。


 移り行く景色が静止する。自動車が交差する十字路が次の舞台と化す。


 鎖に身体を縛られたと気付いた頃、正面には義足の男と魔法使われがいた。


 ――壊したはずの義足が修復している。


 継ぎ目は残ったままだが、動く状態にあった。


 私の背中を超スピードで蹴りつけたのもアレが原因。

 

 どうやら加速装置の他にもギミックが搭載されているようだ。 

 

「砕いた義足がなんで直ってんだって言いたげだな」


 問いかけと同時に、交差点の信号機が全て赤に変わる。


 行き交う車はなく、時間が止まったかのような錯覚を覚えた。


 恐らくこの問答に意味はなく、向こうの答えはすでに決まっている。


「教えてやらねぇよ!! 地獄で知れや!!!」


「――再試行四連ヴィーダーホーレン・フィーアファッハ!!!!」


 魔法使われは義足男の肩に手を置き、能力を行使する。


 信号は青に変わり、上空に煌くのは見覚えのある四つの軌跡。


「「「「超伝導疾駆――【奔星ステラ】ぁぁぁあああ!!!」」」」


 彼らは展開を焼き回す。一度で駄目ならと次は四度で攻め立てる。


 逃げられない工夫が施されており、今の私でも直撃すれば死が見える。


「…………」


 直後、交差点中央は激しい閃光に包まれる。


 アスファルトがめくれ上がり、破片が宙に浮いた。


 ◇◇◇


 魔法使いってのは大したもんだ。名前負けしないポテンシャルを遺憾なく発揮している。詳しい内容を聞いたわけじゃねぇが、ここ数十秒以内に起きた出来事をそっくりそのまま再現できるらしい。さらには同じ動作の複数展開も可能ときた。他人をベースにした場合、身体に触れる必要があるらしいが、発動コストは驚くほど低燃費のように見える。俺っちの全力蹴りを四発打つのに必要なコストを100だとすれば、5か10程度で再現できるんだろう。あくまで蹴りを出力するのは俺っちだからな。再現する部分のコストはかかるが、他の部分は相方に依存する仕様のはずだ。


 味方でいてくれて助かったぜ。彼女が敵に回った時のことなんざ考えたくもない。手を組むのは今回限りだろうが、今は束の間の共闘を楽しもう。


「……立てよ。どうせこの程度じゃ、くたばらねぇんだろ」


 ルドルフの生存を確信し、俺っちは土煙が舞う交差点中央に話しかける。当たった気配はあったが、鬼の生命力はゴキブリ以上だ。角を砕けば殺せたんだろうが、今回の勝利条件は倒すことにある。なんせ、器となる中身は別にいるからな。それを無視して殺しにかかるのは最終手段であり、端から助ける可能性を諦めて殺しにかかるのは人でなしのすることだ。例え相手が鬼だろうと関係ない。人外には生きる権利がないっつーのは極論過ぎるんだよな。人類を脅かす可能性はあるが、人類を救う可能性も同時に存在している。ケースバイケースってやつだ。一個一個の問題にきちんと向き合い、白黒ハッキリつけるのが重要だと俺っちは思ってる。その判断を誰がするのかって小難しい問題が残っているが、近いうちに頭のいい奴らが法体制を整えるだろう。ここまで表沙汰になれば化け物に適用される法律が導入される可能性も高い。鬼は人間の血が主食であるのも懸念点の一つに挙げられるが、今では『人工血液』なんて代物もあるらしいし、科学が発展すれば共存は可能だと思ってる。


 だからこいつは、何がなんでも生け捕りにする。


 生かす前提で戦ってるといってもいいな。あの魔法使い……アンナの心境は不明だが、少なくとも俺っちに殺意はない。そう思っていた。


「私に長く触れすぎたな。大太刀の殺意は身体越しに伝染する」


 砕かれた白い鎖から現れた衣服がボロボロのルドルフは言った。そこから先のことはよく覚えてねぇ。

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