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ナナコChannel  作者: 木山碧人
第十一章 オクトーバーフェスト

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第29話 対ルーカス

挿絵(By みてみん)





 正面から迫り来るのは全体に亀裂が入った銀色の左義足。何らかの加速装置が備わっている可能性が高く、速度自体は大したもの。並みの使い手であれば、対処する暇も与えずノックアウトすることが可能だろう。……だが、損傷具合から見て、かなり使い込んでいる代物のように感じる。壊れる一歩手前といったところ。蹴りを受け止めるのは造作もないが、願わくば、その先を見越したい。


「――――」


 私は首を逸らして蹴りを躱し、去り際の左義足を右手で掴む。しかし、加速に引っ張られ、バヴァリア像の壁面を貫き、直線状にあるギリシャ風の神殿を突き破り、樹々をなぎ倒し、公園内にある広大な平地にたどり着いた。


 これ自体は許容範囲。受け攻めを繰り返せば、どのみちこうなっていた。問題はここからだ。


「……!!」


 勢いが衰えてきたところで、私は右手を握り込む。亀裂の走った左義足は容易く砕け散り、敵の主力武装は破壊された。これで機動力は大幅にダウン。片翼をもがれた鳥になったと言っても過言ではないだろう。


「それで、勝ったつもりか?」


 恨み言を吐き捨て、左足を失った男は残った右足で地面を蹴りつけ、後退。公園内に展開される樹々に身を隠し、気配を完全に絶っていた。


 発言から考えて、逃げたとは考えにくい。何らかの策があると考えていいが、選択肢が膨大過ぎて一つに絞り切れんな。


 あえて候補を挙げるとするなら、あの兎か。ただの小動物を戦闘に持ち込むほど馬鹿ではないだろうし、見たところ意思能力でもなかった。聖遺物レリックと考えていいだろう。仮にそれを正解だと断定するなら、気にすべきは中身。


「――っ」


 突如、左脇腹に感じたのは焼けるような痛みが走る。同時に軽い爆発音が鳴り響き、起きた現象を理解した。


 敵の得物は銃。


 幸い、受けた瞬間に身を逸らし、直撃を避けることができたが、状況的には極めて不利。こちらは樹々が遮蔽物となって相手の位置を特定できないのに対し、敵は平地にいる私を360度どこからでも狙える位置取りが可能。有効射程は定かではないが、木陰から狙っても弾丸が届く距離なのは間違いなく、私のセンスを貫通してダメージを与えられるほどの威力を持つ。


 確かに、勝ったと思うには時期尚早だ。片足を失った状態であろうと、創意工夫をすれば十分に戦える。義足になった時点で覚悟していた展開だろうし、舐めてかかるのは相手に失礼というもの。


「よろしい。ならば、全力でお相手しよう」


 青色のセンスを纏い、私は次なる一撃に備える。敵は恐らく大口径のライフルを使用していると思われ、先ほどと同じ位置から仕掛けてくることはないだろう。こちらが反応しやすい正面は除外され、本命は後方だと山を張っていいはずだ。


 私は耳を澄ませ、気配を絶っている敵の位置を音で探る。私が操る肉体……ナツキの系統は感覚系だ。センスの有り無しによる大雑把な探知よりも、さらに練度の高い技術を扱うことが可能となっている。


 五感の強化。中でも聴覚に長けているようで、片足を失った男が移動する独特の足音を把握することなど造作もなかった。


「そこだな――」


 振り向きざまに私は右手の掌を突き出し、速度に特化したセンスを飛ばす。単体の威力なら大したことはない。ただ、それに付随して発生する自然現象を加算すれば、紛うことなき必殺技へと昇華される。


「……っっっ!!!」


 芝生がめくれ、樹々が浮かぶように抜け、その隙間にいた白と黒の二丁拳銃を持つ男の姿が目に入る。音速弾ソニックムーブの餌食となったそれらは、まとめて吹き飛んだ。後方に位置する住宅街に突っ込み、甚大な被害を出している。


 ここまでくれば勝負ありだ。鬼の耐久力であろうと防ぎ切れなかった一撃。意思能力をかじった程度の人間が耐えられようもない。


 仮に受け切れたとしても、再び立ち向かってくることはないだろう。大抵の人間は心が折れる。実力不足を自覚し、退散する。


 数キロメートルほど吹き飛べば、銃の有効射程からも外れているだろうし、無駄なあがきをしてくる可能性は極めて低かった。


「さて……王を出迎えるか」


 私は敵に背を向け、バヴァリア像がある丘に向かい移動を開始する。


 思った通り大した敵ではなかったが、身体は温まった。第一級悪魔の前座だと考えれば、役割を全うしたと言えるだろう。


 芝生を革靴の踵で踏みしめ、振り返ることなく移動を続けようとするも、ピタリと足が止まった。聴覚に違和感があった。公園内の樹々が不自然に揺らめいた気がした。男が生きていると錯覚したが、これは違う。全くの別人だ。さっきとは比にならないほどの脅威が、すぐそこまで迫っている。


「名をお聞かせ願おうか」


 私は正面にある樹々に向かって話しかける。聴覚を頼りにして、直感的に位置を割り出す。もはや気配を隠す気もなく、膨大な赤いセンスが木陰を照らしており、見えてきたのは赤と黒の給仕服を着た褐色肌の女。長い黒髪の毛先はウェーブがかっており、左腰には見た目とは不釣り合いな大太刀が装備されている。


「アンナ・シュプレンゲル。肩書きは……魔法使い」

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