プロローグ
1945年9月9日「重陽の節句(菊の節句)」
すでに、南方の戦の趨勢は決した。ニューギニア島へ派遣された艦隊は呉に戻っている。
南方の陸軍航空隊も南方から移動を開始している。
準備は整った。
本国では強靭な装甲を纏い、素材からアップデートされたエンジンを得た「国内軍」。そしてフィリピンでアメリカ製の兵器を装備した「南方軍」。
掛井道真大将の号令一下、この軍団はフィリピンの地を力強く蹴り、黒潮に乗って一路、北の海へと突き進みむ。本国の北方軍もそれに呼応して新潟から進軍を開始する。それは、火だるまとなって耐える関東軍・満州守備隊、北方守備隊への、最大の「救援作戦」であり、侵略者の存在を撃滅させるという宣言だ。
ソヴィエト軍は信じて疑わない。日本はすでに落日を迎えており、自分たちはただ「トドメを刺す」だけで良いのだと。共産主義の勝利を確信し、奢り高ぶった顔で満州を闊歩し、樺太を土足で踏み荒らす赤軍の将官、兵士、共産主義者たち。
しかし、その瞬間に、彼らは目撃することになる。
南方の水平線から、想定を遥かに超える質量と速度で突っ込んでくる「北方防衛開放軍」の姿を。
それは単なる増援ではない。
最新の戦術教義に基づき、アメリカ軍の物量と日本の最新技術、そして歴戦の士官、兵士たちの犠牲とそこから得た戦訓が融合した、侵略者どもを撃滅し、悪を成す鬼を滅ぼす力、羅刹そのものだ。
「……貴様たちのリングは、ここではない。シベリアの果てまで追い返してやる」
掛井大将の指揮のもと、真っ赤に灼熱した拳がソヴィエト軍の顔面に炸裂する。
「共産主義者とソヴィエト軍による樺太、朝鮮、満州蹂躙」というページは、いま、凄まじい音を立てて破り捨てられて、掛井たちの雄叫びが、敵を滅ぼせと、轟き叫ぶ!
代わりに刻まれるのは、絶望の淵から這い上がった日本軍が、強大なソヴィエト軍をリングの彼方へと吹き飛ばす、空前絶後の逆襲の記録。
日本海の新潟やフィリピンを飛び立つ無数の航空機、海を割る戦艦、空母、水雷艦隊、地上軍を乗せた輸送艦隊が出撃する。
戦鬼たちが、いま、血塗られた北の戦場へと殴り込みをかけようとしていた。
我らを地獄に落としたすべての者共をすべて追い落とすまで、この進撃は止まらない。
前話の最後のシーンを朝から、夕方に変更しました。




