ニューギニア島 解放された「棄てられた軍」として死を待っていた第二軍
ビアク島の西、マノクワリ。そこはかつて補給が途絶えて、軍団全体でサバイバル生活を強いられた、第二軍の墓標となるはずの場所だった。しかし、新太平洋艦隊の電撃的な進攻とホーランディアの陥落は、この死の淵にあった将兵たちに、文字通りの「天佑」をもたらした。
米軍の執拗な海上封鎖により、マノクワリに集結した第二軍は約2万人の兵力を擁しながら、事実上の「棄てられた軍」となっていた。飢餓と疫病に苦しめらている「鯉(第5師団)」「楓(第32師団)」「東(第35師団)」「雪(第36師団)」――名門の師団旗を掲げながら、兵士たちは密林で木の根を齧り、マラリアの熱に浮かされながら、ただ死を待つ日々を送っていた。
サバイバルの限界
精強を誇った野戦高射砲第73大隊も、肝心の砲弾は底を突き、もはや高射砲は空を仰ぐ鉄の棒に過ぎなかった。その静かなる絶望を破ったのは、長門の総司令部から発信された超短波無線でした。
「新太平洋艦隊、マノクワリ沖に到達。制空・制海権を確保せり。第二軍は直ちに戦闘状態に復帰し、補給を受けよ」
第二軍司令官・豊嶋房太郎 陸軍中将は、震える手で電信を受け取った。
「帝国は……我々を見捨ててはいなかった」
豊嶋中将は即座に、生き残った全将兵へ向けて「戦線復帰」を命令。同時に、水平線の向こうから姿を現した日本軍の輸送船団から、待ちに待った食糧、医薬品が次々と揚陸された。
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マノクワリの泥濘で「棄てられた軍」として死を待っていた第二軍。その運命は、新太平洋艦隊の到来とホーランディアの陥落によって劇的に塗り替えられた。彼らに下された次なる命は、北方の脅威
――満州へ侵攻したソヴィエト軍を迎え撃つための、フィリピンへの転進だ。
「我々は……本当に生きてここを出られるのか」
輸送船のタラップを踏みしめる第5師団(鯉)の兵士の頬を、熱い涙が伝う。数日前まで木の根を齧り、マラリアに震えていた将兵たちは、新太平洋艦隊がもたらした潤沢な医薬品と食糧により、驚異的な回復を見せた。港湾施設や飛行場を維持する最小限の守備隊を残し、豊嶋中将率いる主力2万人は、迎えの大型輸送船団へと乗り込んだ。かつての「死の街」マノクワリが水平線の彼方へ消えていくのを、将兵たちは無言で見送った。それは地獄との決別の瞬間でもあった。
新太平洋艦隊の護衛を受けた輸送船団は、フィリピンへ向けて北上を開始した。船内では、休養と同時に新たな戦いに向けた準備が着々と進められていた。ニューギニアで失った装備を補填するため、ホーランディアで鹵獲された大量の米軍兵器が次々と運び込まれる。
「この自動小銃、重いが頼りになりそうだ」
「見てくれ、このバズーカというやつを。これなら戦車も恐るるに足らんぞ」
熱帯のジャングル戦で鍛え抜かれた兵士たちの手に、最新の火器が握られていた。船団は、すでに日本軍の強固な統治下にあるフィリピンの港湾へ到達した。岸壁では、地元住民や先に展開していた部隊が大歓声で彼らを迎えます。
「ようこそ、ニューギニアの英雄たちよ!」
上陸した第二軍の将兵たちは、即座にフィリピン国内の広大な演習地へと移動。そこで彼らを待っていたのは、満州の平原戦を見据えた「再編成」のプログラムだった。フィリピンの強い日差しを浴びながら、第5師団(鯉)、第32師団(楓)、第35師団(東)、第36師団(雪)の旗が再び力強く翻る。
第二軍はフィリピンに集結した南方軍と共に軍備を共通化し、他部隊と連携して戦うための錬成を繰り返していた。第二軍司令部でその訓練の報告を部隊長達から受けていた豊嶋中将の元に最新の満州戦況報告が届けられた。
「ソ連軍が国境を越えたか……。満州の関東軍が耐えているうちに、我ら『南方の精鋭』が大陸へ上陸してソヴィエト軍に風穴を開けてやる」
ニューギニアの飢餓を生き抜いた不屈の精神と、米軍から奪った圧倒的な火力。その両方を兼ね備えた「最強の増援」として。第二軍の将兵たちは、遥か北の大地で待つ新たな敵――ソ連機甲軍団との激突を見据え、さらにその錬成の強度をましていく、さながら実戦の様に。




