ニューギニア島急襲 ホーランディア上陸戦 8 第二次ホーランディ大空中戦 2 アメリカ軍の降伏
1945年8月16日午後3時
「ラエ航空隊の連中はどうした!? 予定より20分も遅れてるぞ!」
ナドザブ飛行場から飛来した第5空軍、P-38ライトニングのパイロット、ミラー大尉は、コックピットで焦燥に駆られていた。
ラエから来るはずの爆撃編隊との合流は叶わず、眼下には日本軍の対空火器が砲撃の噴煙を上げている。
「……クソッ、ラエの爆撃部隊と合流ができない、このままでは爆撃隊は護衛なしで突っ込むことになるぞ!」
その時、上空から銃撃が降り注いだ。第四航空団のP-51(ムスタング)だ。
「なっ、味方か!? いや、日の丸だ! 日本のムスタングが上から来るぞ!」
ミラー大尉はスロットルを押し込んだが、日本軍の操縦士は回避機動する敵機を見逃さなかった。
「……これも戦いだ」
上空8000メートルで待ち構えていた第四航空団の坂井中尉は、獲物のP-38が苦し紛れの旋回に入るのを見透かしていた。
「高度も速度もこちらが上だ。運がなかったな」
坂井のムスタングが放つ12.7mm重機関銃の弾幕が、P-38の右エンジンを正確に撃ち抜く。双胴の悪魔は黒煙を吹き、力なく熱帯の海へと吸い込まれていった。
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ラエ航空隊のB-25ミッチェルとA-20ハボックの編隊が、海面すれすれの超低空でホーランディアの港湾施設へと突入する。彼らは時間差で到着したため、護衛の戦闘機を欠いた、裸の状態だった。
「司令部、こちら『ストライカー1』! 護衛がいない! 敵の零戦が群がってきている!」
A-20のパイロットが絶叫した瞬間、背後の空を零戦五二型の編隊が埋め尽くした。
「遅かったな! 貴様らの仲間は、もうここにはいないぞ!」
天城から発進した天城戦闘機隊の零戦が、二十ミリ機銃を斉射。低空で逃げ場を失った攻撃機たちは、日本軍を爆撃することもなく、次々と火達磨になって海に激突した。
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最後にやってきたのは、ポートモレスビーからのB-24リベレーターの大編隊だった。彼らには十分な燃料があったが、連携すべき戦闘機と攻撃機はすでに戦場から消え去っていた。
「……第六軍司令部、第五航空軍はどうした? 全く応答がない」
B-24の機長、ロバーツ少佐は眼下の光景に言葉を失いました。そこにあるはずのアメリカ軍基地は、完全に日本軍の統制下に置かれ、対空砲火は自分たちに向けて放たれている。
「敵機接近! 12時方向、上から来る! あれは……サンダーボルトか!?」
「待て、色が違う! 日本のサンダーボルトだ!」
上空からP-47(サンダーボルト)の重厚な弾幕が、B-24の編隊を真っ二つに引き裂く。
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「敵機、全機敗走! もはや組織的な編隊を維持していません!」
長門の総司令部に勝利の報告が響いた。
ラエ、ナドザブ、ポートモレスビー、マヌス島。それぞれの拠点は強大な戦力を持っていたが、日本軍の電探と高高度待機戦術によって時間差による「各個撃破」を許した結果、ニューギニア島のホーランディア周辺は、アメリカ軍機の残骸で埋め尽くされることとなった。
1945年8月16日午後6時
ホーランディアの空には、補給を終えて悠然と飛ぶ零戦と、旋回を行うムスタングのシルエットとサンダーボルトの頼もしい機体が力強く飛ぶ姿が誇らしげに残っていた。南洋の夕日がすべての戦闘を終えた日本軍の飛行隊を真っ赤に染めあげた。
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ニューギニア東部、ホーランディア(ベースG)。かつて米軍が「フィリピン奪還への踏み台」として心血を注いで築き上げたこの巨大拠点は、今や日本軍の「南太平洋における最大の戦略拠点」へと生まれ変わった。
既に日本軍の統治下にあるフィリピンにとって、ニューギニアからの米軍の逆襲は最大の懸念材料であった。しかし、クルーガー中将率いる第6軍が組織的に崩壊し、第5航空軍も壊滅したことで、フィリピンの背後は「空白地帯」から「鉄壁の盾」へと変貌した。カリマンタン、フィリピン、そしてホーランディアを結ぶ巨大な戦略三角地帯が完成したのである。
アメリカ軍が日本攻略のために蓄積した膨大な食糧、燃料、弾薬。それらは破壊される前に日本軍の工兵部隊と整備員の手によって管理下におかれた。
「アメリカが我々のために運んできてくれたようなものだ」
日本軍の兵士たちは、缶詰のCレーションを食べながら、整備された舗装路を行き交う鹵獲戦車やトラックの列を頼もしげに見つめている。
天城・葛城を擁する、新太平洋艦隊と、ホーランディアの修復された滑走路から発進する基地航空隊。この二つが連動することで、ソロモン諸島からオーストラリア北部に至るまで、連合軍のあらゆる反撃の芽は事前に摘み取られることとなった。
ホーランディアを巡る戦いは、単なる拠点の奪還を超え、南太平洋における連合軍の存在そのものを根底から否定する歴史的転換点へと至る。かつて世界を震撼させたアメリカ軍の物量は、その「供給源」を断たれた瞬間、巨大な鉄の重荷へと変わった。
燃料・弾薬の枯渇
新太平洋艦隊の精密な艦砲射撃は、米軍の燃料タンクや弾薬集積所を破壊せずに敵の司令部、防御陣地、敵の航空機を破壊し、上陸部隊により燃料、弾薬、補給物資、車両を接収した。ニューギニア島の他のアメリカ軍がどれほど勇敢であっても、ホーランディア基地の兵站を締め上げられれば動けない。「動けないアメリカ軍」に対照的に、カリマンタン島から次々と飛来する日本軍の増援機が空を埋め尽くす。制空権を完全に喪失し、ニューギニア島、ソロモン諸島の中に孤立した数万の米兵は、補給も退路もない「巨大な遊兵の群れ」と化した。かつてガダルカナルやタラワで日本軍が味わった「航空爆撃」が、今度は皮肉にもアメリカ軍の頭上に降り注ぐことになる。
火力差の逆転
重火器の弾薬の補給が途絶えた米軍地上部隊に対し、沖合の戦艦「長門」や「伊勢」「日向」が放つ巨砲は、慈悲なき審判を下すことになる。遮蔽物のない沿岸基地で、米兵たちはかつて自分たちが日本軍に強いた以上の「火力の地獄」を経験することになる。アメリカ軍の優れた通信網は、この時、皮肉にも「敗北の伝波」を加速させる道具となった。ニューギニア島各地の基地に届くのはホーランディア基地の「機能喪失」「敵艦隊接近」「航空隊の壊滅」という悲鳴ばかり。グアムやアメリカ本国は情報の洪水に飲み込まれ、優先順位を付けることすら不可能な機能不全に陥る。
孤立無援の自覚
ハワイやグアムからの補給、増援はこれから占領された日本軍ホーランディア基地の守備隊の航空機や艦隊に撃沈され、さらに、海中では日本軍の潜水艦が牙を剥いて潜んでいる――。この「絶望の共有」が、米兵たちの士気を根底から叩き折る。
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昭和二十年八月十八日
日本軍はこの勝機を逃さない。ホーランディアのアメリカ軍司令部に対し、冷徹かつ重厚な「無条件降伏」を突きつける。
日本軍の最後通牒
「貴軍に再起の道はない。全兵員の生命を保証する代わりに、直ちに武装を解除し、組織の中枢部を解体せよ」
孤立無援となったアメリカ軍司令部・ウォルター・クルーガー中将とジョージ・ケニー中将は、ついにこの要求を受諾。南太平洋における連合軍の反攻計画は、ここに文字通り「白紙」へと戻された。降伏調印の席で、日本側は驚くべき提案を行う。
「士官以上の捕虜は規定通り収容するが、それ以外の膨大な兵員については、我々が用意する輸送船団によってオーストラリアへ移送・送還することを認める」
これは、膨大な捕虜の管理コストを抑える戦略的判断であると同時に、戦後のパワーバランスを見据えた日本側の余裕の現れでもあった。
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ホーランディアが陥落し、ニューギニアのアメリカ軍の兵站計画の重要地点とともに戦略物資が奪われたことで、連合軍の反攻作戦は根本から破綻した。マッカーサーの描いたシナリオは塵に帰し、戦線はグアム以外は一気にハワイ周辺まで押し戻されることとなった。夕陽に染まるホーランディアの港からは、敗れた米兵を乗せた輸送船団がオーストラリアへと去っていく。それを見送るのは、岸壁に整列した日本軍の精鋭部隊と、空を舞う零戦の編隊。南太平洋に刻まれたのは、星条旗の落日と、揺るぎない「新秩序」の始まりだった。




