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待たせたな!  作者: 僧籍
第三部 戦線を押し上げろ!

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ニューギニア島急襲 ホーランディア上陸戦 4 日本軍航空隊 VS アメリカ軍ホーランディア航空隊 1945年8月16日午前6時30分

アメリカ軍航空隊は地上において「アイドリングで待機する」ところを「搭乗員は機体の傍らで待機し、命令後にエンジンを始動して発進する」様に変更しました。アメリカ軍の偵察機の箇所を変更しました。

1945年8月16日午前6時30分


イファル山の総司令部のクルーガー中将、そしてセンタニ湖のケニー中将の元へ、緊急通信「日本軍、大艦隊、敵襲」が届いた時には、すでに水平線の向こう側から日本軍機の発動機の音が地響きのように響き始めていた。


「バカな! あれだけ、索敵に力を割いていたのに、敵の侵攻に気づかなかったのか!?」


ケニーが叫ぶが、もう遅い。発見の遅れと誤情報の連鎖が、アメリカ軍から「初動の数分間」という、最も貴重な命の時間を奪い去っていた。ホーランディアの空は、重苦しい嵐から、数百の航空機の発動機の巨大な昆虫の羽音のような爆音に支配された。日本軍の電撃侵攻は、アメリカ軍が築き上げた『楽園』を地獄へと変えようとしていた。


センタニ飛行場の指揮所。極東航空軍司令官ジョージ・ケニー中将は、目の前の作戦机を拳で叩きつけていた。日本海軍航空隊が仕掛けた奇襲の速度は、アメリカ軍の全面攻勢のタイミングの遅れを容赦なく突いてきたのだ。


---


時間なき始動スクランブル


「敵襲! 敵襲ッ! 敵機、防空網を突破!」


スピーカーから響く悲鳴と同時に、飛行場全体に不気味な空襲警報が鳴り響いた。

滑走路脇の搭乗員待機所から、パイロットたちが一斉に飛び出す。彼らは機体へと全力で走り、コックピットへ這い上がった。


始動コンタクト! 急げ、早く回せ!」


あちこちで慣性始動機スターターの金属的なうなりが響く。プロペラが重々しく回り始め、エンジンが爆音を上げて目覚める。しかし、冷え切った心臓に火を入れ、滑走を開始するまでには、どうしても数分間の物理的な時間が必要だった。


管制官たちが誘導灯を狂ったように振り回し、まだ油圧の上がりきらないP-38 ライトニングやP-47 サンダーボルトを強引に滑走路へと送り出す。


「行け! 速度を上げろ! 滑走路が潰される前に離陸しろ!」


プロペラの風圧と爆音が砂塵を巻き上げる。エンジンをかけたばかりの機体では、位置的にも速度的にも、あまりにも圧倒的に不利だった。高度6000m付近までなんとか上昇してきた部隊は編隊を組もうとしていた。しかし、高度8000メートルの「迎撃回廊」から一気に急降下してくる日本軍の影は、すでにキャノピーの向こう、目視できる距離まで迫っていた。


---


結果として、ホーランディアに集結していた350機の最新鋭機のうち、辛うじて大空へ駆け上がれたのはP-38 ライトニング 約150機(3個飛行戦隊)、P-47 サンダーボルト 約50機(1個飛行戦隊)の200機に留まった。残る3分の1――約150機の空中退避ができなかった、A-20 ハヴォック 約80機(2個飛行戦隊)の2個飛行戦隊、B-25 ミッチェル 約40機(1個飛行戦隊)、B-24 リベレーター 約30機はプロペラを回し、あるいはまさに始動しようとした瞬間のまま、滑走路の端や駐機場で立ち往生するしかなかった。


「駄目だ、前詰まりだ! 離陸できない!」


パイロットたちがコックピットの中で絶望の悲鳴を上げる。空へ上がる時間を与えられなかった150機のアメリカ新鋭機たちは、地上という名の檻に閉じ込められた「動けぬ標的」となった。


---


一方、ホーランディア上空。雲を突き抜けて現れたのは、日本軍の圧倒的な大編隊であった。空母「葛城」「天城」から発艦した浅岡中佐が率いる艦載機隊と、ビアク島から長距離進出した第四航空隊の基地航空部隊。その数、合計350機。


戦闘機群(200機): 新開発の燃料とプラグで咆哮を上げる隼、零戦。そして、鹵獲機でありながら日の丸を背負ったP-51D ムスタング、P-47 サンダーボルト。

攻撃機群(150機): 第四航空隊と艦載航空機隊の爆弾を抱えた99艦爆、爆装を施した97艦攻、そして精鋭の天山。


浅岡中佐は、コクピットから眼下に広がるホーランディアを冷徹に見据えた。


「……上がってきたのは200機か」


浅岡は無線機のスイッチを入れる。


「各隊、予定通り突入せよ。戦闘機群は上昇中の敵機を各個撃破。攻撃機群は地上を火の海にせよ。ベースGの息の根を、今ここで止める!」


---


8000m上空。迎撃に上がった200機のアメリカ軍機に対し、200機の日本軍機が襲いかかる。第5航空軍の象徴、P-38 ライトニングの編隊に対し、急降下で襲いかかったのは同じ星の形を塗りつぶし、日の丸を背負ったP-51D ムスタングとP-47 サンダーボルトだった。


「皮肉なものだな。貴様たちの性能を、今からたっぷり味わせてやる!」


「こちら第四航空隊ムスタング部隊長・月岡中佐! 敵のP-38を捕捉する!」


月岡中佐が駆るムスタングは、新開発の添加剤入りガソリンによって、本家を凌ぐほどの鋭い加速を見せる。旋回性能で劣るP-38が双胴の巨体を翻して逃れようとするが、ムスタングの層流翼はその動きを完全に予測し、ターゲットを離さない。


月岡中佐のP-51Dが、上空からライトニングを完璧に捉えた。

ライトニングの操縦手は上空から打ち下ろされる銃弾によってその生命を絶たれた。

P-38は黒煙を吹き出しながらバラバラになって墜落していく。


「新しいプラグの火花は最高だ。エンジンのツキが違う!」


先手を取った日本軍戦闘機隊は高空からアメリカ軍戦闘機隊に襲いかかる。

一機、また一機と、翼をもがれた戦闘機が爆炎の中に消えていく。


---


隣では、重装甲のP-47が、P-38の放つ12.7ミリ機銃掃射を物ともせず突進していた。


「火を吹くぜ、俺の雷神は!」


サンダーボルトの八挺の重機関銃の圧倒的な火線がP-38のエンジンを貫く。片肺となったライトニングは、黒煙を吹きながらセンタニ湖へと墜落していった。


---


一方で、日本軍の上空からの奇襲攻撃をかわしたアメリカ軍機と日本軍機の戦闘が激化していた。低高度から中高度にかけては、日本軍の戦闘機たちが死闘を繰り広げている。P-47 サンダーボルトのパワーと頑丈さで日本機を圧倒してきたアメリカ軍機に対し、隼と零戦はこれまでにない「キレ」で対抗する。


「エンジンが止まらん! このプラグ、最高だぞ!」


熱帯の湿気で不調をきたしやすかった「栄」や「隼」のエンジンは、新開発の点火プラグによって、極限の機動中でも完璧な火花を散らし続けていた。

P-47がその強力なエンジンで一撃離脱を試みるが、零戦は水メタノール噴射による一瞬のオーバーブーストでこれに追従。P-47が旋回に入った瞬間、その内側へと軽々と入り込み、20ミリ機銃を叩き込む。


---


高高度の敵機を撃滅し、上空の脅威を排除した月岡中佐のムスタング隊とサンダーボルト隊が、翼を翻して降下を始めた。


「零戦部隊を助けるぞ! 全機、敵機の頭を抑えろ!」


P-38とP-47の群れに、上空から「自国の最新鋭機」が日の丸を掲げて襲いかかるという、アメリカ軍パイロットにとっては悪夢のような光景が展開される。


「バカな……味方じゃないのか!?」


パニックに陥ったの敵機の背後から、P-51Dの機銃が降り注ぐ。ムスタングの機動力とサンダーボルトの打撃力が、隼と零戦の旋回性能を援護する。この「日アメリカ混成」の奇跡的な連携の前に、迎撃に上がった200機のアメリカ軍機は次々と翼を折られ、ホーランディアの空から駆逐されていった。


地上では、ケニー中将が呆然と空を見上げていた。自分たちが信じていた「技術の優位」が、日本軍によって、自分たちを切り刻む刃へと変わっていた。新技術を得た零戦や隼は、熱帯の空とは思えないほどの軽快な機動を見せ、P-47の重厚な一撃を翻弄する。


ケニー中将が恐れていた「地上で焼かれる恐怖」が、いまや現実となってホーランディアを飲み込みつつあった。真壁少将の指揮のもと、日本軍の「電撃侵攻」は、アメリカ軍の防衛網を確実に粉砕していった。ホーランディアの上空は、かつての攻守が入れ替わって、日本軍に支配された。


「……空の支配権が、消えていく」


ケニーの呟きは、滑走路上で爆発するB-24の轟音にかき消された。空中戦の勝敗は、決した。

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