鉄の回廊――パナマ電撃接収作戦 9-2 パナマ攻撃部隊発艦始め
1946年3月30日、午前二時。パナマ湾沖四〇〇キロの漆黒の海原。
アメリカ軍の警戒網が西海岸の混乱に奪われている隙を突き、新・太平洋艦隊は静かにパナマ近海へと侵入していた。今の艦隊にとって、パナマは焦土に変える対象ではなく、世界の覇権を握るために「奪取すべき至高の財産」であった。
艦内のスピーカーから、新・太平洋艦隊司令官・伊藤大将の声が全軍へ響き渡る。
「これからの戦いは、この戦いの趨勢を決める重要な戦いだ。各自の奮戦に期待する!」
訓示が全艦艇を鼓舞する中、『陸奥』の装甲化されたCIC(戦闘指揮所)にて、《帰還艦隊》司令官・御袖大将が通信機を握り締めた。『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』『大鳳』『翔鶴』『瑞鶴』——七大正規空母の飛行甲板へ向けて、電撃の発令が下る。
「これより、艦隊は数時間後にパナマ湾に到達する。パナマ運河接収作戦『パナマの華』を開始する。航空隊は先に先行する。発艦始め!」
誘導灯の青い光の中、制空権を確固たるものにする『烈風改』、攻撃目標を精確に捉える『三式指揮偵察機改』、そして高高度から戦況データを送り続ける『彩雲』が、金星七一型エンジンの咆哮とともに次々と夜空へ駆け昇っていった。
その直後を追うように、爆装した『流星改』と『零戦六四型改』の大編隊が、海風を切り裂いて出撃していく。アメリカの大動脈を断ち切る先鋒隊が、暗黒のパナマの空へ向けて一足先に解き放たれた。




