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待たせたな!  作者: 僧籍
第二部 南方戦線に取り残された同胞の救出を誓う

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47/113

新・太平洋艦隊 4 天城 葛城

呉軍港を見下ろす丘の上の司令部施設。真壁毅少将は、傍らの重い遮光カーテンを勢いよく引き開けた。


室内に流れ込んだ強烈な夏の陽光が、海図台に広げられたニューギニア・ソロモン諸島の複雑な地形を鮮明に照らし出す。電灯の下では曖昧だった海岸線や等高線が、いまや逃げ場のない現実として浮き彫りになっていた。


真壁少将は眩しそうに目を細め、窓外の呉軍港を見下ろした。そこには、日本全国から集められた零戦、九九式艦爆、九七式艦攻、そして少数の天山を整然と並べた空母「葛城」と「天城」の姿があった。


真壁少将は、傍らに立つ航空総隊長・浅岡中佐に向き直った。机上の資料には、米軍の最新戦術に対する冷徹な分析が記されている。


「浅岡中佐、改めて確認する。我々の主敵はもはや洋上の空母打撃群ではない。ニューギニアの拠点に居座る敵地上部隊、そしてそれを守る迎撃戦闘機と攻撃機だ」


浅岡は海図の拠点を指し、淀みなく応じた。


「はっ。米軍の二機一組による相互掩護戦術『サッチ・ウィーブ』は極めて堅牢です。単機での深追いは死を意味します。ゆえに、小隊単位での数的優位の維持と、無線連携による波状攻撃を徹底させています。添加剤はあくまでエンジンの異常燃焼を防ぎ、本来の定格出力を安定して引き出すための下支えに過ぎません。機体の絶対的な性能差を埋めるのは、カタログスペックではなく、徹底した編隊内での連携と、格闘戦への引きずり込みです」


窓から差し込む光が、地図の上のニューギニアの険しい山々と海岸線を照らし出す。浅岡は、その地形をなぞるように指を動かした。


「ニューギニア特有の積乱雲――通称『壁』と、視界を奪う激しいスコール。これは敵にとっても脅威ですが、低空での地形習熟訓練を積んだ我々にとっては、電波レーダーを遮断する最高の盾となります」


浅岡の言葉に熱がこもる。


「思い出していただきたい。開戦劈頭、フィリピン戦における我が航空隊の戦果を。あの時、霧による発進遅延という逆境を逆手に取り、米軍の警戒が緩んだ正午、地上に並んだ敵航空機を完璧な奇襲で粉砕しました。今、我々が狙うのはあの再現です。米軍の迎撃網をこの『壁』で回避し、ジャングルの影から地上拠点へ肉薄する。九九艦爆や九七艦攻といった旧式機が、敵の対空火網を掻い潜り、確実に地上物資や司令部を仕留めるには、この気象条件を味方とする以外に道はありません。空中で敵を追うのではなく、地上で敵を叩き潰す――それこそが、我々の進むべき道です」


「天候を味方につけ、地形の死角から一撃を見舞う。最新鋭機には真似できぬ、泥臭い『戦術』の勝利だな」


真壁は、明るい日差しの中で、静かに頷いた。


本来なら歴史の片隅で朽ち果てるはずだった雲龍型空母は、かつての名艦「飛龍」が果たせなかった宿願を果たすべく、その錨を上げた。


整備し尽くされ、本来の力を取り戻した旧式機。ニューギニアの過酷な天候を熟知した操縦士。そしてそれを導く真壁少将。

葛城と天城。二隻の艦載機が熱帯の青い空へ放たれるとき、ニュージャージー島やソロモン諸島の戦場に、再び、日本軍航空隊の姿が戻る。


明るい陽光に照らされた呉の海に、新生・機動部隊の発艦の号令が、高く、鋭く響き渡ろうとしていた。


補足

1. 部隊全体の指揮(司令官・提督)


2隻(あるいはそれ以上)の空母をまとめる「航空戦隊」には、1人の司令官(少将など)がいる。

この司令官は、どの空母から何機飛ばすか、どこを攻撃するかという大きな作戦方針を決定する。

1隻の空母(旗艦)に乗って、部隊全体に命令を出す。


2. 空中での実戦指揮(空中指揮官)

実際に空に飛び上がった後、2隻の空母から発進したバラバラの機体を1つにまとめて敵を攻撃する際は、1人の「総隊長(空中指揮官)」が全体を率いるのが一般的だ。

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