大日本国家戦争遂行機関 3 統合兵站本部
統合兵站本部
統合兵站本部 総裁 迫水 紘一
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軍需省 国民の動員についての改善、軍需生産の効率化、資源生産、輸送、研究部門の再編、兵器製造の効率化と再編。、エネルギーの生産の設備の整備、生産と研究。
統合兵站本部直轄の「海上護衛総隊」
海上護衛総司令部
物資・予算管理の最高責任者 保科善四郎
戦略担当 野村直邦
現場総指揮官 堀内茂礼
研究開発局 研究部門 兵站本部直轄の「研究開発局」には、陸海軍の枠を超え、大学の物理学者や民間の技術者が集められた。既存技術の効率化、帰還艦隊の提供した技術の研究を開始。
交通物流政策局の実働部隊 国内の物資輸送 兵站本部直轄の『交通物流政策局の実働部隊』を編成し、農村から都市への物流を、鉄道、軍のトラックを動員して強行する」
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伊藤整一司令長官と《帰還艦隊》司令長官は日吉の統合兵站本部の一室で御前会議の成果の大日本国家戦争遂行機関の図をみていた。
「……縦割りという名の『病』は、ようやく根絶されたか」
伊藤整一司令長官は、大きな机の上のその図を見ながら静かに呟いた。傍らには、未来の技術と情報を携えて帰還した《帰還艦隊》司令長官が座っている。
二人の目の前にあるのは、従来の陸海軍の反目を物理的に解体し、一元化した機能的な戦時機構だった。
内閣総理大臣・鈴木貫太郎を頂点とし、外交の舵取りを担う東郷茂徳が補佐する。陸軍の阿南惟幾、海軍の米内光政は、もはや「省」の権益を争う大臣ではなく、この巨大な国家機関の歯車として、参謀本部や軍令部を各省へ統合。作戦と行政の乖離を強引に埋めていた。
「驚くべき効率化だ」と《帰還艦隊》司令長官が応じる。
「本土決戦のために温存されていた兵力を、沿岸防衛と『工兵・輜重大隊』へ即座に分割。南方からの資源を、滞りなく北の防衛線へ送り込む……。この『動脈』の確立こそ、我々が持ち帰った最善のシナリオだ」
統合兵站本部の胎動:迫水と保科の執念
特に二人の目を引いたのは、組織図の横に張り出した「統合兵站本部」の文字だった。
総裁・迫水紘一が、軍需省を実質的に掌握。国民動員の無駄を省き、エネルギー生産と兵器製造のラインを極限まで単純化していた。
「見てください。保科善四郎中将が物資を管理し、野村直邦大将が戦略を練り、堀内茂礼少将が現場を守る。この『海上護衛総隊』こそが日本の生命線です」
伊藤長官が指した先には、陸海軍の枠を超え、大学の物理学者や民間技術者が集められた「研究開発局」の名があった。帰還艦隊がもたらした未来の対潜技術や電子兵装の解析が、ここでは日夜、技術者や工学博士や物理学者の手によって進められているのだ。
「さらに、私が最も評価しているのは、この『交通物流政策局の実働部隊』です」
伊藤の声に力がこもる。
「農村から都市への物流を、軍のトラックと鉄道を総動員して強行する。物流を途絶えさせない、国民を飢えさせない。その一点において、この戦争遂行機関はこれまでの軍部とは一線を画している、この体制は各種天災においても効果的に復旧の作業が行われる」
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新・連合艦隊の決断
二人は図から視線を外し、机に広げられた新たな海図へと目を移した。
「組織は成った。次は『力』の行使だ」
《帰還艦隊》司令長官が、ニューギニアとマリアナ諸島を繋ぐ線をなぞった。
「『新・太平洋艦隊』は、すでに南下を開始している。彼らがビアク島を叩き、ホーランディア・ジャンブラの司令部と兵站補給基地を攻め、ポートモレスビー、マヌス島の拠点を落とせば、ニミッツはマリアナの維持か、オーストラリアへの補給路死守かの二択を迫られる、もしくはハワイへ撤退も考えられる。」
「そして、我ら『新・連合艦隊』の出番だ」
伊藤長官の眼光が鋭くなる。
「戦艦『大和』を旗艦とする遊撃艦隊は北から侵略してくるソヴィエト連邦軍の撃滅。そして、本国から再編成された北方防衛開放軍の北方軍は樺太、北方諸島、満洲のソヴィエトの共産党軍の撃滅」
「そして、新・太平洋艦隊は太平洋上のアメリカ軍の撃滅。陸海を統合した『大本営航空総軍』が、全戦域で日本の敵を圧倒する」
「司令官、この体制の変化こそが、次の戦いへの架け橋になるはずだ」
《帰還艦隊》司令長官の言葉に、伊藤は深く頷いた。
かつてのような無謀な突撃や、特攻による決死な攻撃は、今の日本軍には存在しない。あるのは、合理的計算と、一人の将兵、一人の国民の命を、最も有効な局面で指揮する「責任」だった。
「アメリカ、そしてソヴィエト。二大国を相手にするには、この『国家戦争遂行機関』という一つの巨大な意志が必要だったのだ」
二人は、再び作戦立案に戻った。
組織図に書き込まれた名前の一つ一つが、日本の新しい血管として拍動し始めている。
1945年8月。日本は、死を待つ敗戦国から、自らの手で未来を切り拓く「国家」へと、その姿を完全に変容させた。




