南方奪還フィリピン攻略 2-19 第32軍の電撃戦
一、アメリカ製軍用トラックとジープと兵器 ―― 第32軍の機動化
スービック海軍基地の巨大な埠頭。
かつて沖縄の洞窟陣地で最後の一兵まで戦い抜く覚悟を固めていた第32軍——その将兵たちは、いまや見違えるような精鋭機動部隊としてルソンの地に降り立っていた。
「……感無量だな、八原君。首里の泥の中で米軍の物量に耐え忍んでいた我々が、今やそのアメリカ軍の車両と火器で進撃することになるとは」
司令官・牛島満中将は、接収したばかりのウィリスMBジープの助手席に腰を下ろし、熱帯の強い日差しの中で見渡す限りに立ち並ぶ車列を感慨深みに見つめた。
その傍らで、高級参謀・八原博通大佐が手にしていた作戦図面を丸め、冷徹な笑みを浮かべた。
「首里では手榴弾と九九式小銃すら底を突きかけておりました。しかし今、我が軍の全兵士の手に握られているのは、沖縄で接収した自動火器——M1ガーランド小銃、ブラウニング重機関銃、そして敵の装甲を容易に粉砕するバズーカ砲です。さらにスービック基地の倉庫には、手付かずの膨大な車両群が眠っておりました」
八原大佐が指し示す先には、接収された無数のGMC 2.5トントラック、ウィリスMBジープ、そして無限軌道を履いたM3ハーフトラックが、何千台も整然と排気音を響かせていた。
「第24師団、第62師団、独立混成第15連隊にこれらの車両を即座に分配いたしました。我が第32軍はこれより、完全なる『機動歩兵軍団』として再編成を完了。徒歩行軍の遅滞など皆無、かつてない機動力で敵の懐へ飛び込みます」
牛島中将が頷き、力強く手を振り上げた。
「全軍、発進! クラーク陸軍航空基地を電撃的に粉砕し、そのまま敵司令部のあるマニラ、フォート・マッキンリー基地へと進撃せよ!」
地鳴りのようなエンジン音が鳴り響き、最新の火器を構えた日本兵を満載した鋼鉄の車列が、クラークへと続く幹線道路を怒涛の勢いで突き進み始めた。
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二、近接爆撃と電撃進撃 ―― クラーク基地攻略
クラーク陸軍航空基地の手前、米第6軍が固める防衛線。
米軍の重機関銃と迫撃砲が乱射される中、第32軍の先頭を進むM3ハーフトラック群が停車し、車上からバズーカ砲と重機関銃が一斉に火を吹いた。だが、本当の「鉄槌」は上空から訪れる。
シュギャアァァァンッ!!
スービック湾に展開する新・連合艦隊の空母群から飛来した『流星改』と『零戦64型改』の編隊が、雲を突いて急降下を開始した。
『零戦64型改』の主翼にずらりと並んだ無数の対地ロケット弾が白い尾を引いて連続発射される。同時に『流星改』の胴体の爆弾槽から80番爆弾が米軍のトーチカや砲兵陣地の真上へと投下された。
ズドォォォォンッ! ズバババババッ!
極限まで研ぎ澄まされた操縦士たちの技量による近接爆撃が、アメリカ軍の防衛網を猛烈な爆炎と土煙の中に呑み込んでいく。
「近接爆撃成功! 敵陣地壊滅! 車両部隊、突撃ッ!」
空爆の泥煙が舞い散る中、GMCトラックから飛び降りた第32軍の機動歩兵たちが、M1ガーランド小銃の激しい連続射撃を浴びせながら敵の残存陣地へ雪崩れ込んだ。
首里の死闘を潜り抜けた凄惨な実戦経験を持つ熟練兵が、米軍の誇る圧倒的な火力と輸送力を手に入れたのだ。クラーク基地を守備していたアメリカ軍部隊は、前方からの激しい射撃と空からのロケット掃射にひとたまりもなく瓦解。
「クラーク陸軍航空基地、完全に制圧! 我が軍の手に落ちました!」
「休むな! この勢いのままマニラへ進撃せよ!」
八原大佐の鋭い号令のもと、機動歩兵群は止まることなく再びトラックとジープへ飛び乗り、マニラ・フォート・マッキンリーを目指して怒濤の電撃進撃を続けた。
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三、山々の雷鳴 ―― 尚武集団・振武集団への支援攻撃
その頃、前日の『彩雲(空中前線管制型)』による超広域の索敵によって、各地で苦戦を強いられている第14方面軍の精確な位置情報が帰還艦隊へともたらされていた。
ルソン島北部、ボントックやキアンガンの峻険な山岳地帯。山下奉文大将が自ら指揮を執る「尚武集団」は、米軍の圧倒的な包囲網と迫撃砲陣地に追い詰められ、最後の死闘を繰り広げていた。
山下大将が岩陰で腰を降ろし、迫り来る米軍の足音を聞いていたその時——。
ドバババババッ! ズドォンッ!!
険しい山々の合間を縫うように超低空で滑空してきた『流星改』と『零戦64型改』の編隊が、山肌に陣取るアメリカ軍の迫撃砲陣地や歩兵列へ向かって、ロケット砲を叩き込んだ。
連鎖する爆発と激しいロケット弾の炸裂が山々を揺らし、山下大将を包囲していた米軍部隊が一瞬にして吹き飛ぶ。続いて投下された大型爆弾が、アメリカ軍の臨時司令部幕舎をピンポイントで打ち砕いた。
「な……日本の飛行機か!? 爆撃とロケット掃射だッ!」
痩せこけた尚武集団の兵士たちが、歓声を上げて立ち上がる。
同じ頃、マニラ東方のシエラマドレ山脈。横山静雄中将率いる「振武集団」の頭上にも、帰還艦隊の攻撃隊が飛来していた。鬱蒼としたジャングルの中に潜む米軍の重砲陣地に対し、正確無比なロケット砲掃射と爆弾投下が敢行され、敵の包囲網は猛烈な炎とともに粉砕されていった。
絶望の淵にいた第14方面軍の将兵たちの眼前に、圧倒的な航空火力による「救援の雷鳴」が轟き渡ったのだった。
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四、サンバレス山脈の合流 ―― 建武集団の救出
一方、マニラ中部・クラーク飛行場群の防衛のためサンバレス山脈のピナトゥボ山周辺に潜伏していた「建武集団」。
彼らは度重なる激戦と補給の途絶により、すでに組織としての体脈を失い、飢餓と病に倒れながら壊滅状態に陥っていた。倒れ伏した兵士たちが最後の手榴弾を胸に抱き、自決を覚悟したその時——山道をなぎ倒して接近してきたのは、ジープのエンジンの音であった。
「建武集団の兵隊さん方かッ! 無事か!」
ジャングルを破って現れたのは、アメリカ軍マークを日章旗へと塗り替えた大量のGMCトラックとウィリスMBジープの車列だった。車体から飛び降りてきたのは、アメリカ軍製の防弾ヘルメットをかぶり、M1ガーランドとバズーカ砲を背負った第32軍の機動歩兵たちであった。
「な……お前たちは……? アメリカの車……!?」
建武集団の将校がかすれ声で問う。第32軍の兵士は力強くその手を取り、担架と水と糧食を差し出した。
「第32軍だ! 沖縄から助けに来たぞ! スービック基地のアメリカ軍を叩き潰し、車両も食料も全部奪い取ってきた! ほら、水と食料だ、食事ができるものは食ってくれ!できないものは水だけでも飲んでくれ、それと塩と飴だ、一緒に口に入れてくれ」
上空では『流星改』が旋回し、山脈の周りに残存していたアメリカ軍の追撃部隊へ容赦ないロケット砲と爆弾の雨を降らせて敵を牽制していた。
空からの完全な遮断と掩護のもと、建武集団の生存者たちは手厚く救出され、第32軍のトラックの荷台へと次々に収容されていった。
最新の兵器と無制限の糧食の供給を受け、死の淵から蘇った建武集団のまだ戦える残存兵たちは、そのまま第32軍の機動歩兵列へと合流。
空からは帰還艦隊の精鋭航空隊がロケット砲と爆弾で道を切り拓き、地上ではアメリカ軍から奪取したジープとトラックに乗った第32軍が破竹の勢いで突き進む。
壊滅の絶望を過去のものとした日本陸軍の機動軍団は、敵総司令部が存在するマニラ・フォート・マッキンリーの喉元を目指し、怒濤の進撃をしていくのだった。




