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待たせたな!  作者: 僧籍
第五部 悪鬼・羅刹

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モンゴル征伐 10-4 侵攻 11月20日

モンゴル人民共和国への攻撃


モンゴル解放作戦:凍土の鉄路逆走

1945年11月。シベリア本線と南下路の結節点、ウラン・ウデ。ここが北方防衛開放軍によるモンゴル侵攻の起点となった。後方参謀(兵站)の榎本隆正大佐がウラジオストクで接収した米国製蒸気機関車「ロシアン・デカポッド」の群れは、広軌化された鉄路を逆に利用し、南へとその巨躯を動かした。貨車には、M4・神官、M36・雷轟、M18・電光といった機甲部隊が満載されている。これらソヴィエト国内から逆走する鉄道部隊の進撃スピードにモンゴル軍が対応することできなかった。



国境線は瓦解した。ソヴィエト側のナウシキ、およびモンゴル側のスフバートルに配置されていた国境守備隊は、突如出現した日本軍の圧倒的な機甲戦力の前に、一時間と持たず霧散した。地上戦力のM36・雷轟の九〇ミリ砲が遠距離から守備隊の拠点を破砕し、スピードが早いM18・電光が退路を遮断した。空中支援によって上空では、P-51・麒麟とP-47・稲妻が、国境陣地にロケット弾を叩き込んだ。国境を突破した機甲部隊は、モンゴル平原をウランバートルに向けてひた走った。


首都強襲と中枢粉砕 首都ウランバートルのチョイバルサンの総司令部は、空と地からの同時強襲を受けた。日本軍は戦略爆撃を実行する。B-17、B-24および一式陸上攻撃機、飛龍の重爆撃機隊が索敵情報を元に司令部周辺を絨毯爆撃で粉砕した。その後に空中降下作戦を実行する。一〇〇式輸送機の編隊より、加藤中佐率いる横須賀鎮守府第一特別陸戦隊(横一特)と、安藤大佐の挺進第一旅団が降下した。


---


重爆撃機隊による絨毯爆撃の轟音が止んだとき、モンゴル人民共和国の首都ウランバートルは、真っ赤な炎を上げていた。


近代的なビルや舗装道路がほとんど存在せず、歴史ある寺院を中心に無数の移動式住居(ゲル)が広がるこの街にとって、B-17や飛龍が降らせた爆弾の雨は文字通りの天災だった。総司令部周辺は完全に叩き潰され、通信網は寸断。ソヴィエト軍残存部隊、モンゴル軍の将兵や平原の民は、降り注ぐ硝煙と砂塵の中で完全に指揮系統を失い、大混乱に陥っていた。


その地獄絵図の頭上、東の空から、地響きのような重低音が近づいてきた。

一〇〇式輸送機の巨大な編隊である。


---


降下、零下十五度の突風


一〇〇式輸送機の機内。凍てつく11月のモンゴルの寒気が、開け放たれた扉から猛烈に吹き込んでいた。


「猶予はない、一気に中枢を刺すぞ! 続けッ!」


横須賀鎮守府第一特別陸戦隊(横一特)を率いる加藤中佐が、風に抗って怒号を上げた。その背後には、猛訓練を耐え抜いた海軍横一特の精鋭たち、そして陸軍から参戦した安藤大佐率いる挺進第一旅団の兵士たちが、隙間なく身を詰めている。


「降下!!」


輸送機の機内に設置された信号灯が赤色から緑色に変わるとともに、男たちが次々と極北の虚空へと躍り出た。

零下15度の突風が五感を麻痺させようとするが、彼らの眼下には爆撃で炎上するウランバートルの全景がはっきりと見えていた。


数秒後、ウランバートルの上空に、何百という白い絹の傘が文字通り大輪の華を開かせた。空を埋め尽くす降下兵の群れ。地上で右往左往していたモンゴル軍の残党兵たちは、煙の向こうから降ってくる「空の軍隊」を見上げ、ただ絶望に目を見開くしかなかった。


---


「着地! 各員、ただちに目的地へ進軍せよ!」


安藤大佐の挺進第一旅団が、雪原とゲルの密集地帯へと次々と滑り込んだ。寒風に煽られながらも、彼らは着地するやいなやパラシュートの索をナイフで切り裂き、九九式短小銃やアメリカ製のトンプソン短機関銃を構えた。


街のあちこちで、混乱するモンゴル軍警備兵との凄惨な遭遇戦が始まった。


「敵襲! 側面から銃撃!」

「黙らせろ!」


舗装されていない土の路地、風に揺れるゲルの残骸のフェルト壁を挟んで、至近距離での銃撃戦が展開される。しかし、組織的な指揮を失った敵部隊に対し、陸海軍の精鋭部隊は一糸乱れぬ連携を見せた。横一特の兵士たちが手榴弾で銃座を吹き飛ばし、その爆煙を突切って挺進部隊が前進する。


標的は最初から決まっていた――政府施設、物資集積所、通信施設、そしてチョイバルサンの総司令部である。


---


爆撃によって半壊し、黒煙を上げる政府本庁舎。

その重厚な扉を、加藤中佐率いる横一特の突入班が爆薬で吹き飛ばした。


「動くな! 日本軍北方防衛開放軍である!」


硝煙が立ち込める内部に、陸戦隊の銃口が一斉に向けられた。部屋の奥、机にしがみついていたのは、モンゴル人民共和国の最高指導者、ホルローギィン・チョイバルサンその人であった。周囲の共産党幹部たちは、恐怖で青ざめたまま両手を挙げていた。各部隊との連絡が完全に遮断された彼らは、日本軍がすでに市内に降下し、建物を包囲するまで何が起きたのかすら把握できていなかったのだ。


「チョイバルサン閣下、お迎えに上がりました。あなたの戦争は、今ここで終わりです」


加藤中佐は冷徹に告げ、幹部たちの身柄を拘束した。


半壊した政府本庁舎の奥、白煙と硝煙が立ち込める部屋で、拘束されたホルローギィン・チョイバルサンはなおも激しく身をよじっていた。両脇を頑強な横一特の陸戦隊員に押さえつけられながらも、その顔を真っ赤に変え、狂ったように吠え立てる。


「ファシストの汚らわしい豚どもめ! 糞の役にも立たん東洋の滓が、この偉大なる国を汚しおって! お前たちなど、間もなく赤軍の鋼鉄の軍団によって一人残らずすり潰され、平原の泥にまみれて犬死にするのだ! 地獄へ落ちろ、卑劣な侵略者どもめ!」


口から泡を飛ばし、狂乱のままに喚き散らされる醜悪な罵詈雑言。通訳の兵士が顔をしかめて一瞬言葉を詰まらせるほどの、呪詛に満ちた言葉の嵐だった。


だが、その狂態を前にしても、加藤中佐の表情はピクリとも動かなかった。ただ、冷徹極まる眼光が、チョイバルサンの歪んだ顔面を真っ直ぐに見据えていた。


加藤は無言のまま、ゆっくりと一歩を踏み出した。

そして、次の瞬間――。


――ガッ!!!


引き締まった拳が、チョイバルサンの顎を正確に、そして容赦なく撃ち抜いた。

凄まじい衝撃音とともに、チョイバルサンの体が横へとはじけ飛び、拘束していた隊員の手を振り切って床の瓦礫へと叩きつけられた。部屋の装飾品がガシャガシャと音を立てて崩れ落ちる。


「ぶっ、う、く……っ」


顎を砕かれ、口から鮮血と泥を吐き出しながら、チョイバルサンは床を這い、怯えた目で加藤を見上げた。先ほどまでの狂気的な尊大さは消え失せ、そこにあるのはただの哀れな権力者の残骸だった。


加藤中佐は、拳についた血を静かに拭い、床に這いつくばる独裁者を見下ろした。その声は、モンゴルの冬の荒野よりも冷たく、凍てついていた。


「黙れ。お前たちの口から正義を語るな」


加藤は一歩近づき、チョイバルサンの胸元を冷たく指し示した。


「お前が、そしてお前たちの共産党が、この平原の地でどれほどの同じ民族の同胞の血を流し、どれほど無辜の民を虐殺してきたか忘れたわけではあるまい。ラマ僧、知識人、ただ平穏に生きていただけの遊牧民たち……。お前たちがこれまで『粛清』の名の下に葬り去ってきた、数万の者たちの怨念を、今度は地獄の底で一人残らず聞き続けるがいい」


その言葉は、史実においてこの国を血で染めた大粛清の歴史を、真っ向から糾弾する鉄槌だった。


チョイバルサンは青ざめ、言葉を失ったままガタガタと震えることしかできなかった。かつてこの地で絶対的な死を振り撒いていた独裁者は、今や、空から降り立った「侍」たちの前に、ただ己の業に怯えるだけの哀れな囚人へと変わり果てていた。


1945年11月20日、ウランバートル。

空からの絨毯爆撃と、間髪入れぬ陸海軍合同の電撃的空中降下作戦。この双頭の鉄槌により、モンゴル共産党の中枢機能は物理的、かつ組織的に地図から消滅した。平原の冬が本格化する前に、この強襲によりモンゴル人民共和国の抵抗は終わった。

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