満州奪還・ソ連軍包囲殲滅作戦:『回天・通遼作戦』 8-5
17:00 | 通遼の処刑:降伏拒否の宣言
昭和二十年十月下旬、十七時。
秋の短い陽光が地平線に沈み、通遼平原が急速に夜の闇に呑まれようとしていた。四方を完全に包囲され、背後の川に架かる橋梁を含むすべての退路を爆砕されたソヴィエト軍の残存部隊に対し、北方防衛開放軍の全周波から通信が流された。
『……共産党軍とソヴィエト軍残存部隊に告ぐ。貴官らに降伏の選択肢は与えられない。貴官らが蹂躙した地、奪った命の代償は、ここで清算される。……『悪鬼・羅刹』が下すのは、審判ではない。完全なる消去・滅却だ』
通信が途絶えた瞬間、それが地獄の幕開けとなった。
極東第一正面軍、極東第二正面軍、ザバイカル方面軍、
ソヴィエト軍ザバイカル方面軍、モンゴル人のコミュニスト騎兵部隊、すべての敵がこの平原に集められた。
「死ね、この地より」「死ね、この世から」「死ね、この時代から」「死ね、永遠に、常しえに」
「貴様らに、来世も、転生も、救いもいらぬ、ここで朽ち果てて、すべてを終わらせる」
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一、全方位からの飽和攻撃
宣言の終わりと同時に、平原を囲む全周の地平線が同時に日本軍の砲火で埋め尽くされた。包囲網は急速に収縮を始める。
北翼:伊勢神本国軍の蹂躙
北の地平線を埋め尽くして迫る伊勢神忠雄中将の「北方本国軍」は、新一式中戦車と新九七式中戦車を鋭利な楔とし、圧倒的な密度で突入を開始した。
新素材《帰還鋼》を纏った重厚な車体群が、狂おしい排気音とともに大平原を震わせる。絶望に駆られたソヴィエト軍の砲兵陣地から、悲鳴のごとき発射音とともに最後の76mm野砲弾が叩きつけられた。しかし、必殺のはずの砲弾は、甲高い金属音と凄まじいオレンジ色の火花を散らすだけで、《帰還鋼》の強靭な表面を1ミリの貫通すら許さない。
「弾かれただと!? 馬鹿な、そのまま突っ込んでくるぞ!」
恐慌がソヴィエト軍陣地を穿つ中、速度を緩めることすらしない鉄の楔は、そのまま敵の懐深くまで食い込んでいく。
新一式中戦車の長砲身が一斉に火を噴いた。高初速の徹甲弾が陣地深くに座す装甲車を内部から炸裂させ、間髪入れずに叩き込まれる榴弾が、たこつぼの兵隊もろともソヴィエト軍の即席陣地を泥と爆炎の噴煙へと吹き飛ばしていった。
逃げ場を失った敵歩兵たちが泥の中に這いつくばる上を、重厚な無限軌道が地響きとともに容赦なく踏み荒らしていく。北翼からの蹂躙は、まさに容赦なき鉄の破砕機となって、ソヴィエト軍の防衛線を跡形もなく消し去りながら猛進を続けた。
南翼:今村・掛井南方軍の狙撃
南の平野から怒濤のごとく攻め上げる今村均大将と掛井道真大将率いる南方軍は、機械のごとき精密さと、完全にシステム化された近代統合戦の絶大な暴力を展開していた。単なる個別の砲撃や戦車戦ではない。偵察・観測・機動・打撃が通信網で完璧に連動していた。
M36・雷轟(対戦車自走砲) ―― 一千メートルの精密射撃
地平線の彼方に陣取る『雷轟』の群れは、長砲身90mmライフル砲の砲身を水平に揃え、砲手は直接照準用のM76F望遠鏡の中のレティクルを引き定めていた。ズ、ン! と大気を震わせる重低音が響くたび、超音速で飛翔する重量徹甲弾が一千メートル以上の遥か遠方からソヴィエト軍の陣列を襲う。自軍の誇るT-34-85の傾斜装甲や、米英からのレンドリースで配備されたM4A2シャーマンの車体正面を易々と穿ち、車内の弾薬庫を一撃で誘爆させた。直撃を受けた車体は内部から激しく炸裂し、砲塔を十メートルも吹き飛ばしながら巨大な火球へと姿を変える。反撃の機会すら与えぬ長距離からの無慈悲な射撃は、ソヴィエト軍装甲部隊の戦意を根底から砕き割っていった。
M18・電光 & M24・迅雷 ―― 電撃の側背分断
『雷轟』が長距離から敵の巨頭を撃ち抜くのと同時に、最高時速80キロを超える驚異的な機動力を誇る『電光』と軽戦車『迅雷』の混成連隊が、左右の地平線から猛然と躍り出た。狂ったような排気音とともに砂塵を巻き上げ、組織的な抵抗を再構築しようとするソヴィエト軍小隊の脇腹へと電撃的に肉薄。50口径重機関銃の猛烈な十字砲火と大口径榴弾の掃射が、無防備な側背を晒したソヴィエト軍の歩兵陣地や補給トラック列を次々と泥と肉片の混ざり合う焦土へと叩き伏せた。
退路を探して錯乱する敵の眼前にて、速度を殺さず旋回する『電光』と『迅雷』の鉄の防壁が完成する。逃げ場を完全に失い、すり鉢の底へと追い詰められたソヴィエト軍に対し、南方軍の緻密に噛み合う鋼鉄の歯車は、ただ容赦なくその包囲網を締め上げていった。
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二、蒼空の断罪:重爆撃とロケットの雨
地上軍の怒濤の進撃に寸分の狂いもなく呼応し、通遼の蒼穹を完全に掌握した北方防衛開放軍の航空大艦隊が、ソヴィエト軍が逃げ場を失い蠢く平原へと殺到した。
高度六千メートルの高空。大連飛行場にて迅速な再補給を完了した一式陸上攻撃機、四式重爆「飛龍」、そして圧倒的な爆載量を誇るB-17およびB-24からなる混成重爆撃機隊が、大気を爆ぜさせる重低音とともに雲海を突き破って姿を現した。爆撃手の照準線が敵兵によって埋め尽くされた敵陣地を捉えた瞬間、一斉に開かれた爆撃倉から、爆弾の雨が空を黒く染めて落下していく。
ヒュンヒューーーーーン ドドドドドォォォン……ッ!
地表を揺らす連続炸裂音とともに、重なり合う巨大な爆風の波が文字通り大地を埋め尽くした。ソ連軍の即席陣地、逃げ惑う装甲車列、密集した歩兵の群れ――あらゆる人工物と生命が、絶え間なく押し寄せる火柱と焦熱の風によって地表から削り取られ、黒煙の巨大な壁となって破片とともに天へと舞い上がった。
高空からの壊滅的打撃に続き、爆煙の立ち込める低空へ、P-47『稲妻』とP-51『麒麟』の部隊が空を切り裂く咆哮とともに急降下を敢行する。
「ロケット弾、一斉斉射!」
主翼下に懸吊された大口径ロケット弾が次々と発射され、激しい白煙を吹き出しながら直進して、攻撃対象に命中した。ズババババッ! ドカンッ! 猛烈な爆発が連鎖し、組織的な反撃を試みようとしていたソ連軍の牽引野砲や補給トラックが、車体ごと内部から粉々に破壊され、砕け散った鉄片となって飛散した。
さらに、前線の仮設飛行場から一足早く進出していた『九九式艦爆二二型改』の編隊が、立ち込める黒煙を突き破って空から落下してきた。流れるような急降下から放たれる精密爆撃が、焦土の中でなお蠢く残存T-34の薄い上面装甲を寸分の狂いもなく捉える。直撃を受けた戦車はハッチから勢いよく火柱を吹き上げ、巨大な火球となって沈黙した。
高空からの絨毯爆撃、中空からのロケット弾掃射、そしてからの急降下爆撃。空からの多重的な航空攻撃は、通遼の平原を完全なる不毛の死地へと変え、侵略者の生命と戦意を根底から粉砕していった。
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三、焦土の執行:徹底的な掃討
十七時三十分。
平原の中央に押し込められたソヴィエト軍は、すでに軍隊としての指揮系統を完全に喪失していた。残されたのは、泥と硝煙にまみれた敗残兵の群れだけだったが、日本軍の進撃は緩まない。
多目的トラックであるダッジ WCやGMC CCKWから次々と飛び出した歩兵部隊が、一列の散兵線を組んで前進を開始した。
手にした自動小銃の硬質な作動音と連続する銃声が、平原に響き渡る。物陰から反撃を試みようとするソ連兵は、その姿を晒した瞬間に数発の弾丸を撃ち込まれ、泥に沈んだ。
頑強な塹壕や装甲車両の残骸に立てこもる狂信的な政治将校やNKVD守備隊に対しては、工兵隊の火炎放射器が投入された。数千度の液体燃料が塹壕の深い堀の間を駆け巡り、空気を燃焼させ、内部のすべてを骨まで焼き尽くした。
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ソヴィエト軍陣地
十七時三十分。夕闇が迫る通遼の平原は、もはや戦場ではなく、黒煙と焦熱の臭いが澱む絶望の屠殺場と化していた。
歩兵のミハイルは、撃破されて煙を吐くT-34のひちぎれた履帯の陰で、自らの血と味方の肉片に塗れながら身を縮めていた。無線機からは金切り声のようなノイズが流れるばかりで、指揮官の怒号も、頼みの綱だった砲兵の援護も完全に途絶えている。かつて独ソ戦の地獄を生き抜き、欧州を震撼させたソヴィエト軍の誇りは、この満州の果てで影も形もなく破砕されていた。
「来やがった……!」
ガタガタと震える顎を押さえ、装甲の隙間から外を覗き込んだミハイルの視界に、地獄の光景が映し出された。
泥煙を上げて停車したダッジやGMCトラックの荷台から、日本軍の歩兵たちが次々と飛び出し、寸分の乱れもない美しい散兵線を組んで前進してくる。彼らの歩調には焦りも興奮もなく、ただ害獣を駆除するかのような冷徹な正確さだけがあった。
「ウラーッ!」
十数メートル先、崩れた補給箱の陰から意を決して跳びだし、モシン・ナガン小銃を構えようとした同郷のイワンが、その全身を晒した瞬間に叩きのめされた。乾いた自動小銃の発射音が連続して響き、イワンの胸と顔面に一瞬で数発の鉛弾が撃ち込まれる。彼は悲鳴をあげる猶予すら与えられず、泥沼の中に顔面から倒れ伏した。物陰から頭を覗かせた者から順番に、寸分の狂いもなく頭部や胸部を穿たれていく。反撃など最初から成立していなかった。
「退くな! ソヴィエトの勇士として死ぬまで戦え!」
背後の半壊した塹壕の闇から、手榴弾を握りしめたNKVD(内務人民委員部)の政治将校が、錯乱したような怒号を上げた。だが、その叫びすらも長くは続かない。
近づいてきた日本軍の工兵隊が、斬壕に向けてノズルを突きつけた。
ズオオオオオッ!
暗闇を一瞬で昼間のように照らし出したのは、数千度に達する火炎放射器の猛烈な液体燃料であった。狭い塹壕の内部へ容赦なく流し込まれたオレンジ色の炎の津波が、酸素と肉体を一瞬で焼き尽くす。土壁をかきむしる凄惨な絶叫と、肉が焦げる異臭が土の奥から吐き出され、やがて黒煙とともに静まり返った。
履帯の影で息を殺すミハイルの目の前へ、日本兵の泥塗れの半長靴が、重い足音を立てて近づいてくる。手にした小銃の銃口から立ち上る薄い硝煙。沈みゆく夕日の赤に染まる焦土の中で、ミハイルは引き金を引くことすら忘れ、ただ迫り来る冷徹な死の影に身を震わせるしかなかった。
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四、完全なる滅却
ソ連兵たちは、この一切の妥協も慈悲もない、「処刑」の光景を前に、恐怖の叫びをあげた。
《Японский чёрт (ヤポンスキー・チョールト/日本の悪魔)!》
その絶叫も、M1ガーランドの銃声と、重機関銃の乾いた連続音にかき消され、叫んだ者は即座にこの世から消し去られた。
日本軍は戦場の残敵を一つずつ、網の目を絞るように探し出し、部隊からはぐれた一人ひとりを地の果てまで追い詰めて処理していった。共産主義という欺瞞にまみれた思想の下に集められたザバイカル方面軍、極東各正面軍、そしてモンゴルのコミュニスト部隊は、この通遼平原において、文字通りの「焦土」と化し、破壊された残骸、地面の染み、黒い灰になって果てた。歴史の表舞台から完全に滅却されたのである。




