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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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227/280

満州奪還・ソ連軍包囲殲滅作戦:『回天・通遼作戦』 8-4

16:00 | 南と西からの攻撃:今村大将と掛井大将


満州奪還を目指すソヴィエト軍包囲殲滅作戦――『回天・通遼作戦』は、佳境を迎えつつあった。

すでに空の支配権を完全に北方防衛開放軍に奪われ、航空支援の灯が絶えたソヴィエト軍に対し、南と西の地平線から迫る「もう一つの地獄」があった。


今村均大将と掛井大将が率いる、南方軍。

フィリピンのジャングル、ニューギニア島の血戦という過酷な戦場を経て、彼らが手にした米軍最新鋭の兵器群は、独自の合理的な戦術システムの中に完全に組み込まれ、最新の近代戦を戦えるまでに発展を遂げていたのである。


地平線を埋め尽くす軍団が、通遼の南西平原で進撃を始めた。


---


「戦車第8連隊、突入開始!戦車第7連隊は西側への回り込みを急げ!」


南方軍の戦闘網を繋ぐ指揮通信型のダッジ WC多目的トラックから、暗号化された無線命令が矢継ぎ早に飛び交う。今村大将と掛井大将の各指揮下にある連隊は、まるで精密に噛み合う歯車のように、交互に連携し合いながらソヴィエト軍の防衛線をすり鉢の底へと追い詰めていった。


まず動いたのは、正面に布陣する今村大将指揮下の機甲連隊であった。

主力を担うM4・神官(戦車)の群れが、その重厚な車体で泥濘を押し潰しながら前進する。ソヴィエト軍の防衛陣地がその進撃を阻もうと、対戦車砲を放った瞬間、その後方からM36・雷轟(対戦車自走砲)の長砲身が牙を剥いた。


ズ、ン! と大気を引き裂くような重低音が響く。

90mm砲から放たれた大口径榴弾は、一千メートル以上の彼方からソヴィエト軍の対戦車砲を防盾ごと消し飛ばし、迎撃を試みたT-34-85の正面装甲を大口径徹甲弾が容易く貫通して車内を火だるまに変えた。


ソヴィエト軍がその圧倒的な正面火力に恐慌をきたし、陣形を立て直そうとしたその刹那、今度は西側の地平線から掛井大将指揮下の快速連隊が躍り出た。


「敵の右側面が完全に空いた! 叩き込め!」


最高時速80キロを誇るM18・電光(駆逐戦車)と、軽快な足回りのM24・迅雷(軽戦車)の混成部隊が、砂塵を巻き上げてソヴィエト軍の側背へと一気に回り込む。航空支援のないソヴィエト軍には、この驚異的な速度で展開する装甲部隊を阻止する手段がなかった。M18とM24は主砲を連射し、側面に無防備な腹を晒したソヴィエト軍のトラックや野砲陣地を次々と鉄くずの山へと変え、敵の防衛線を文字通り「寸断」していった。


---


ソヴィエト軍陣地


「砲兵隊! 敵の先頭車両を食い止めろ! 対戦車砲を前へ出せ!」


ソヴィエト軍第57戦車旅団のウラジミール少佐の叫びは、猛烈な地鳴りと黒煙の渦の中に掻き消された。


正面の地平線から押し寄せるのは、地響きを立てて泥濘を踏み潰す『M4・神官』の重厚な鉄の群れであった。陣地を守るソヴィエト軍の対戦車砲が一斉に火を噴き、弾火薬の臭気が鼻を突く。しかし、弾丸が敵の前面装甲で弾け飛ぶのとほぼ同時に、さらに遠方――一千メートル以上の彼方から、長砲身を突き出した『M36・雷轟』の絶望的な砲撃が突っ込んできた。


ズ、ン!


大気を引き裂く重低音が響いた瞬間、照準を合わせていた対戦車砲陣地が防盾ごと爆砕し、兵士たちの叫び声すら上がらない。さらに、反撃を試みた自慢のT-34-85戦車が、正面から『雷轟』の90mm大口径徹甲弾を喰らった。金属が激しく拉ぐ悲鳴とともに車内で誘爆が起き、ハッチから火だるまとなった戦車兵が泥の中へ転がり落ちる。


「馬鹿な……あの距離から正確に撃ち抜いてくるだと!?」


圧倒的な正面火力を前にソヴィエト軍陣地が恐慌状態に陥り、ウラジミール少佐が悲鳴を上げて陣形を再構築しようとしたその刹那、西側の地平線からさらなる絶望が牙を剥いた。


「西だ! 西側の丘から敵の高速部隊がなだれ込んでくるぞ!」


見張り兵の悲鳴のような叫び。砂塵を巻き上げて突進してきたのは、驚異的な速度を誇る『M18・電光』と『M24・迅雷』の凶悪な混成隊であった。


「側面を守る歩兵はどこへ行った!? 砲を向けろ! 砲を右へ回せ!」


だが、制空権を奪われ、機動力を削がれたソヴィエト軍に、その疾風のごとき展開速度へ追従する術は皆無だった。無防備な側面を晒していた補給トラックや野砲陣地へ、『電光』と『迅雷』の主砲弾が間断なく突き刺さる。燃料タンクが火柱を上げて弾け、車体ごと兵士たちが爆風で吹き飛ばされていった。


すり鉢の底へともがき苦しみながら追い詰められ、正面からは圧倒的な鉄壁で叩き潰され、側背からは電撃のごとき速さで絶ち切られる。かつて独ソ戦を生き抜いたソヴィエト軍の将兵たちは、逃げ場のない焦土の上で、自らの防衛線が精密な刃によって文字通り「解体」されていく惨劇を、ただ恐怖に身を震わせながら見つめることしかできなかった。


---



装甲部隊が敵の陣形を切り裂いた突破口へ、間髪入れずに突入したのは、大量のダッジ WC多目的トラック「ウェポン・キャリア」の車列であった。


この多目的トラック群こそ、南方軍がジャングル戦で培った戦術の結晶だった。

多様な派生型に改修されたダッジ WCは、戦況に応じてその役割を変える。


ロケット砲 & 重迫撃砲

前線に到着するや否や、牽引しているロケット砲と重迫撃砲で無数のロケット弾と迫撃砲弾をソヴィエト軍の塹壕目掛けて乱射。平原を一瞬にして爆発の炎で埋め尽くす。


無反動砲搭載型 & 速射砲搭載型

生き残った敵の強固な機銃座に対し、直射で砲弾を叩き込んで確実に破壊。


対空機銃搭載型

水平に銃口を向け、敗走するソヴィエト歩兵の集団へ12.7mm重機関銃の掃射を浴びせる。


そして、この目まぐるしい戦闘の背後を支えていたのが、「デュース・アンド・ア・ハーフ」と呼ばれるGMC CCKW(2.5トントラック)の巨体であった。

6輪駆動の強靭な足回りで深い泥濘を走破するこの軍用トラック群は、前線がどれほど突進しようとも、その後方から絶え間なく弾薬、燃料、そして真新しい資材を供給し続けていた。ロジスティクス(兵站)の完全な維持。それがあるからこそ、日本軍の各連隊は弾薬の枯渇を一切恐れることなく、最大火力での交互攻撃を維持できるのだ。


「全車、警戒! 歩兵部隊、展開せよ!」


トラックの荷台から、M1ガーランドを手にした南方軍の歩兵たちが次々と飛び出す。

彼らは装甲車両の影に身を隠しながら、機能不全に陥ったソヴィエト軍の防御陣地へと肉薄していった。


パパン、パパン、とM1ガーランドの高速な連射音が平原のいたるところで木霊する。ボルトアクションのモシン・ナガン小銃で応戦しようとするソヴィエト兵は、圧倒的な火網の前に顔を上げることすらできず、次々と泥の中に倒れ伏した。今村・掛井両連隊の歩兵たちは、残存する敵の小隊を排除し、敵の防御陣地を一つ、また一つと確実に占領・制圧していった。


---


16:30


南から押し上げる今村連隊の重火力と、側面から切り裂く掛井連隊の機動力による攻撃は、ソヴィエト軍の南西防衛線を完全に崩壊させた。


逃げ惑うソヴィエト軍の将兵たちの目に映ったのは、M4やM36、そしてダッジの車列が、日本軍の日の丸を掲げて前進してくる、極限の絶望の光景であった。


「南西、完全に閉鎖。敵残存部隊を平原中央の『処刑所』へと追い込み中」


無線報告が、淡々と司令部へと流れていく。

この十五時の攻撃によって、ソヴィエト軍極東正面軍は完全に逃げ道を失い、平原の中央へと文字通り圧搾されていった。それは、のちの十七時――降伏の選択肢すら与えられない、「完全なる消去・滅却」の処刑執行へと繋がる、完璧な外堀の埋め立てであった。

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