満州奪還・ソ連軍包囲殲滅作戦:『回天・通遼作戦』 8-2
08:00 | 高空の監視者:
高度1万メートルから戦場を冷徹に見下ろすのは、《帰還艦隊》彩雲と一〇〇式司令部偵察機。
《帰還艦隊》彩雲は、泥濘に足を取られ、右往左往するソヴィエト軍第6近衛戦車軍の動揺を克明に捉え、一〇〇式司令部偵察機は熟練した観測員がソヴィエト軍の動きを判別し、各軍団の司令部へ伝達し、そこから、各攻撃隊へ高精度の情報に基づいた命令がされる。
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09:30 | 空の断罪:爆装戦闘機隊の攻撃
ハルビン近郊の各飛行場から、低く重厚な轟音とともに《帰還艦隊》戦闘機隊が発進。
烈風改 & 零戦六十四型改
250キロ爆弾を懸吊した戦闘機部隊は、水平爆撃でソヴィエト軍陣地へ突入。爆弾を投下、爆風とその破片でソヴィエト兵を粉砕し、さらに20mm機銃掃射で木っ端微塵にして血をぶち撒いて、地上の肉塊を細切れにして、なぎ払う。
西の第八方面軍 仮設航空基地から飛行してきた陸軍戦闘攻撃隊
P-47・稲妻 & P-51・麒麟の混成隊
翼下に装備された複数のロケット弾が、ソヴィエト軍の最前線に一斉に解き放たれた。ロケット砲による攻撃の後に麒麟の12.7mm重機関銃が敵陣を耕し、稲妻の掃射がソヴィエト軍の指揮車両を鉄屑へと変えていく。
10:30 | 空の要塞:重爆撃機爆機隊の審判
ウラジオストクのヴォズドヴィジェンカ飛行場から飛行してきた、一式陸上攻撃機、飛竜、B-17の大編隊はソヴィエト軍司令部周辺や対空陣地をはるか高空から絨毯爆撃を実行する。そのあたり一面が大爆発して巨大な噴煙が立ち上がる。
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昭和二十年十月一五日、十時三十分。
通遼平原のどんよりとした曇天の遥か彼方から、大気を激しく震わせる無数の重低音が響き渡った。
それは、ウラジオストク近郊のヴォズドヴィジェンカ飛行場を飛び立ち、遮るもののない蒼空を覇者の如く突き進んできた、北方防衛開放軍の重爆撃機の大編隊であった。一式陸上攻撃機、飛龍、B-17、B-24。200機が、美しい格子状の編隊を組み、太陽の光を遮る巨大な影となってソヴィエト軍の頭上へと侵入してきた。
「敵機……! 上空、高度六千に大編隊!」
ソヴィエト軍の対空陣地から悲鳴のような報告が上がる。しかし、先ほどの戦闘で対空砲は破壊され、すでに航空支配権を完全に喪失した彼らに、それを迎撃する術は残されていなかった。
地上のソヴィエト兵たちは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
泥塗れの陣地から、装甲車両のハッチから、砲陣地の中から、そして防衛壕の隙間から。彼らは首を直角に曲げ、自分たちを破壊するためにやってきた巨大な飛行機の大編隊をただ見上げるしかなかった。
自分たちを殺すためだけに作れらた爆撃機の油圧シリンダー、歯車、モーターが動き、爆弾倉を開く、
遥か高空で、200の爆弾倉の扉が一斉に、開け放たれた。
直後、各機の腹から無数の黒い点が解き放たれた。
高空から投下された無数の爆弾は、空気抵抗を孕みながら、地上の兵士たちの目には、まるで時間が引き延ばされたかのように「ゆっくりと降ってくる」ように見えた。
美しく、そして残酷に列をなして、迫り来る死神達。
それは、いかなる戦術も、いかなる思想も通用しない、純粋な物理的破壊だった。兵士たちは逃げることも、隠れることも忘れ、ただその『絶望』を両目で真っ向から受け入れるしかなかった。
防衛陣地の中心、半壊した通信車の陰にうずくまっていた一人の若いソヴィエト兵が、狂ったように頭を掻きむしり、天を仰いで絶叫した。
「絶望した! こんなくそったれな戦争に絶望した!」
彼の目には、白煙を引いて迫る爆弾の塊が、網膜に焼き付いて離れなかった。祖国のため、世界革命のためと吹き込まれ、満州の地を踏んだ結果が、この逃げ場のないすり鉢の底での圧殺だった。
「俺自身がくそったれのカスやろうだったことに絶望した! もう二度と人間になってこんな糞見たいな生き方をするくらいなら、もう、生きたくはない!」
男が全霊を絞り出した呪詛は、近づく爆音の大地鳴りにかき消され、誰の耳に届くこともなかった。ただ、彼の魂が完全に折れたその瞬間、爆弾の群れが平原へと到達した。
ドゴ、オオオォォォォンッ!!
一瞬の閃光の後、通遼平原の全域が文字通りの地獄へと変貌した。
ソヴィエト軍の野戦司令部周辺、および残存していた対空陣地は、格子状の精密な絨毯爆撃によって一網打尽に磨り潰された。大地は幾度も跳ね上がり、数百発の重爆弾が引き起こした連鎖爆発が、人工物、装甲車両、そして兵士たちの肉体を一瞬にして分解していく。
あたり一面に凄まじい爆風の波が吹き荒れ、天を衝くような巨大な黒煙の柱が幾本も立ち上がった。
先ほどの絶叫した兵士も、彼が呪ったくそったれな現実も、すべては一瞬にして爆炎の中に消去された。爆発の衝撃波は平原の泥を巻き上げ、太陽の光を完全に遮る硝煙の帳となって通遼を覆い尽くしていく。
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十時四十五分。
重爆撃機隊がもたらした「上空からの審判」が終わり、編隊の群れがウラジオストクへの帰路についた時、地表に残されていたのは、もはや軍隊の形をなしていない、ただ煙を上げる無数のクレーターと、完全に瓦解した赤軍の残骸だけであった。
その後から、四式戦闘機「疾風改」、五式改戦闘機の爆装した部隊が、250キロ爆弾を残存して動く目標や防御陣地に投下していく。
この午前中の圧倒的な破砕こそが、のちの十三時の戦車軍団の進撃、そして十七時の「完全なる消去・滅却」へと至る、冷徹極まる序曲であった。
11:00 | 新太平洋艦隊航空隊の猛撃
大連・周水子飛行場から飛び立った新太平洋艦隊航空隊の大編隊が、満洲平原の要衝・通遼の上空へ圧し掛かる。
爆音の先頭に立つのは、機体各部に「帰還鋼」を組み込み不壊の堅牢性を得た九九式艦上爆撃機二二型改(統合型)。その脇を固めるのは、急降下爆撃と雷撃を高次元で両立させた《帰還艦隊》攻撃機「流星改」、そして上空から睨みを効かせる零戦六四型改の群れであった。
通遼のソヴィエト軍の後方陣地には、まだ、ソヴィエト軍のT-34/85重戦車群や即席の対戦車塹壕、そして後方支援のトラック列と歩兵陣地が残っていた。
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九九艦爆二二型改の攻撃機隊指揮官・山田中尉は、風防越しに眼下に広がる通遼の泥濘と、そこにへばりつくソヴィエト軍の泥色の車列を見下ろしていた。
照準環の中心に捉えたのは、散開しようとあがくT-34/85の群れ。
「各機、急降下開始! 目標、敵重戦車群!」
山田中尉は無線で叫ぶと同時に、操縦桿を前に倒し、左手のスロットルレバーを一気にスローへと引き戻した。
次の瞬間、機体を取り巻く金星五四型エンジンの爆音がすっと消え去る。
――スーッ……
急降下風圧ブレーキが展張され、静まり返った大空にただ「スーッ」という澄んだ空気の切り裂き音だけが渡っていく。
高度3000メートルから垂直に近い角度で落ちていく機内。高度計の針が恐ろしい速度で逆回転し、風防の向こうでT-34/85の砲塔がぐんぐんと巨大化していく。
風を切る音以外のすべてが削ぎ落とされた、息を呑むような静寂。
高度800……700……照準器の十字とT-34/85のエンジンハッチが完全に重なった。
「放てッ!」
解体レバーを引き、25番(250kg爆弾)が離脱した瞬間、山田中尉は力任せに操縦桿を引き絞り、スロットルレバーを一番奥まで押し込んだ。
エンジン、全開――!
ブワーッ――――ッ!!
周囲の空気を力づくで引き裂くような猛烈な爆音が大空に響き渡る。
地面に激突する寸前、猛烈なGで視界の端が暗転しかける中、帰還鋼の強靭な桁支柱に支えられた九九艦爆は、悲鳴ひとつ上げずに垂直の軌道から一気に水平飛行へと復元した。
ズドォォォォンッ!!
背後で地響きのような大炸裂が起きた。直撃を受けたT-34/85は、重装甲を内側から破裂させ、数トンある鋼鉄の砲塔を玩具のように軽々と空中へ跳ね上げながら黒煙の渦へと消えていった。
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九九艦爆が散らした戦車群のさらに奥、ソヴィエト軍防衛線の要である。地面を掘り下げてその土を掩体にした対空陣地が14.5mm対空重機関銃の赤い弾幕を吐き出す部隊に対し、今度は《帰還艦隊》流星改の小隊が襲いかかった。
流星改の一番機を駆る高橋大尉は、高度3000メートルで逆ガル翼の美しい翼面を大きく翻し、機首を真下へと叩きつけた。
「流星各機、高度3000より突入! 敵対空陣地を粉砕せよ!」
スロットルが絞り込まれ、大排気量エンジンの咆哮が瞬時に途絶える。
――スーッ……
流線型の洗練された機体設計と風圧ブレーキが噛み合い、流星改は滑らかかつ恐ろしい速度で急降下線に乗った。3000メートル上空から目標の対空陣地へ向け、垂直の矢となって突き落ちていく。
風切り音だけが響く静寂の中、高度計は一瞬で2000、1000を割り込む。
対空陣地が視界いっぱいに迫り、対空砲火の火花が風防の脇を掠めていく。
「いまッ!」
高度600メートル。大型爆弾が機体から切り離され、急降下の慣性を乗せて、の頭上へと吸い込まれていく。
直後、高橋大尉は操縦桿を限界まで手前に引き倒し、スロットルレバーを叩きつけるように全開にした。
エンジン、全開――!
ブワーッ――――ッ!!
流星改の巨躯が強烈な爆音を轟かせ、地表すれすれの高度で強烈な引き起こしを敢行。極限のGに耐えかねて翼が悲鳴を上げる間もなく、帰還鋼の剛性が力づくで軌道を垂直上昇へと変え、空へと突き上がった。
ズ・ズゥゥゥン……ボゴォォォッン!
直後に炸裂した大型爆弾の衝撃波が、掩体と対空砲を破壊。爆風と炎が噴き出し、崩落した土砂とが内部の細切れになった砲兵ごと埋め尽くした。
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対空陣地と戦車という「盾」を失ったソヴィエト軍地上部隊に、残されたのは逃げ場のない広大な平原だけであった。
急降下爆撃を終えた流星改、九九艦爆、そして上空を旋回していた零戦改の群れが、今度は地上掃射の体制へと移行する。ターゲットは、パニックを起こして後方へ退却を図る非装甲のZIS-5トラック列と、そこに群がる赤軍歩兵たちである。
「全機、残存敵部隊を掃射せよ! 一両、一兵も逃すな!」
低空を這うように滑空した流星改の翼から、左右計4門の20mm機銃が一斉に火を吐いた。
タタタタタタタタッ! ズバババババババッ!!
20mm榴弾の曳光弾列が、泥道を埋め尽くすトラックの列へ吸い込まれていく。
直撃を受けたトラックのエンジンが粉砕され、燃料タンクが次々と大爆発を起こす。幌を破って飛び散る火柱の中、積み込まれていた補給物資と兵士たちがまとめて吹き飛ばされた。
さらに、逃げ惑う歩兵の密集列に対し、機首を傾けた機体が容赦なく20mm機銃の弾幕を浴びせかける。
ドスドスドスッと地表を跳ね上がる炸裂弾の列。
20mmの大口径弾が直撃した人体は、肉と骨の原形を留めることすら許されない。なぎ倒される歩兵たちの悲鳴は爆音にかき消され、あたり一面に肉片と血液の霧が飛び散り、泥濘の地表を赤黒く染めていった。
高度3000mからの静けさと轟音を伴う急降下爆撃、そしてそれに続く無慈悲な地上掃射。
大連から飛来した北方防衛開放軍艦載機航空隊の猛撃は、通遼のソヴィエト軍防衛陣地を文字通り「血と鉄の地獄」へと変えていった。




