大連、旅順への上陸作戦 6-5 第6近衛戦車軍へ打撃艦隊・全力斉射開始 1945年10月4日午前9時
大連・旅順、打撃艦隊・全力斉射開始
1945年10月4日午前9時
新太平洋艦隊旗艦「長門」の司令部作戦室は、緊張感に支配されていた。
卓上の巨大な海図には、索敵機が持ち帰ったソヴィエト軍の全容が、無数の赤印となって刻み込まれている。それは単なる情報の集積ではなく、これから始まる「管制砲射撃」のための座標であった。
一、始まり
主任参謀の堀切大佐が、海図から顔を上げ、傍らに立つ加治中将へ鋭い敬礼を送った。
「加治司令長官、すべての攻撃目標に対する各艦の割り振りが完了しました。榛名、伊勢、日向への目標データおよび砲撃情報の伝達、すべて終了しております」
加治は短く頷き、全艦隊へと繋がるマイクを握りしめた。その声は、作戦室全体に響く、静かで、かつ重かった。
「こちら長門、太平洋艦隊司令官・加治だ。これより、旅順および大連に陣取るソヴィエト軍に対し、全艦隊による砲撃を開始する。――撃ち方、始め!」
その号令は、瞬時に随伴する巨艦たちへと伝播した。
戦艦「榛名」:司令官・義積大佐が「撃ち方始め!」と吠える。
航空戦艦「伊勢」:司令官・高城少将が冷静に「撃ち方始め!」と命ずる。
航空戦艦「日向」:司令官・村雨大佐が「撃ち方始め!」と追随する。
各艦の砲塔内で復唱が響き渡り、火蓋が切られた。
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二、鋼鉄の咆哮
「長門」の41センチ主砲が火を噴いた。
巨大な砲門から放たれた衝撃波は海面を円形に押し潰し、数瞬遅れて戦艦全体を覆い尽くすほどの巨大な噴煙が立ち昇る。一発ではない。計算され尽くした間隔で、長門、榛名、伊勢、日向の連装砲、三連装砲が次々と連続発射されていく。
大連、38万人の都市、東洋の真珠と呼ばれた巨大都市に砲弾が降り注ぐ、幾つもの広場を中心として放射状に通りが広がっている。パリをモデルにしたその整然とした街並みは偵察機からも良く見える。大連の中心、行政経済を司る重要な建物が取り囲んでいる大連大広場。その中心に立っていた陸軍大将・大島義昌の銅像はソヴィエト軍に引き倒されて、地面に転がされている。大連の市民たちは建物の奥や地下室に身を固めて耐えている。東洋一と呼ばれた大連港、5000人を収容できる大連埠頭の建物に付近にいた市民が避難している。
目標への規定回数の投射を終えると、巨大な砲塔は機械的な精密さで旋回し、次なる獲物へと牙を向け直す。空を切り裂く重金属の唸りは、遼東半島の鉛色の雲を震わせ、大連・旅順の地へと「物理的な審判」として降り注いだ。
三、平等の破壊:ザバイカル方面軍の終焉
そのとき、地上は地獄と化した。
アンドレイ・クラフチェンコ上級大将率いる第6近衛戦車軍、およびその精鋭たちが展開する各拠点が、同時に「戦艦の砲弾」という名の裁きが叩きつけられたのである。
第5近衛戦車軍団:ウラルから直送されたばかりのT-34-85が、至近距離に弾着した衝撃波だけでスクラップに分解され、装甲板は紙のように引き裂かれた。
第7近衛機械化軍団:強固なコンクリート防御陣地は、41センチ砲弾の質量によって「押し潰され」、中の兵士たちは脱出する間もなく定規で測れるほどの厚さに圧縮された。
第9近衛機械化軍団:米国供与のM4A2シャーマンが、宿舎や物資集積地とともに赤黒い火柱へと変わっていく。
旅順の司令部、対空砲陣地、さらにはソ連軍最強の重戦車IS-2や、ISU-122といった強力な自走砲までもが、一撃の下に鋼鉄の残骸へと成り果てた。
その破壊は、まさに「共産的」であった。
平地であれ、陣地の中であれ、丘の上であれ、窪地であれ。建物の影に隠れていようとも、戦艦による圧倒的な弾量は、指の隙間から砂をこぼさないほどの密度で、すべての敵に「平等」な死を分配したのである。
かつて「東洋のパリ」と謳われた美しい街並みは、水平線の彼方から飛来する「41センチ砲弾」という名の死神によって、一瞬にして地獄へ叩き落とされた。
「……来るぞ! 地下へ潜れッ!」
ソ連軍第5近衛戦車軍団の若き中尉が叫び声を上げたが、その言葉が部下たちの耳に届くことはなかった。上空を支配したのは、大気を物理的に引き裂き、巨大な貨物列車が驀進してくるような、凄まじい風切音――新太平洋艦隊が放つ巨砲の咆哮だった。
次の瞬間、視界は真っ白な閃光に塗り潰された。
至近距離で爆発の爆風を浴びた兵士は叫ぶこともなく消滅した、そして、この痕跡すらも次々に着弾する砲弾の轟音に掻き消されていった。
最強を誇った重戦車IS-2の内部は、外側からの見た目以上の地獄と化していた。
「脱出だ! 早くしろ、ハッチが開か……」
装填手の絶叫が途切れる。41センチ砲弾の直撃ではなく、わずか数メートル横に弾着した際の超高圧の衝撃波が、戦車の分厚い装甲を透過し、内部の人間の内臓を一瞬で破裂させたのだ。
鼻や耳から鮮血を噴き出し、言葉にならない「ヒッ、ヒッ……」という引き攣った呼吸音だけが、鉄の箱の中に虚しく響く。生き残った操縦手も、装甲の内側が剥離して飛び散る「スポーリング現象」により、全身に無数の金属破片を浴び、肉を削ぎ落とされた。彼は自身の臓器を抱えながら、開かないハッチを血まみれの手で叩き続けた。
砲撃が一時的に止んだ一瞬、街に満ちたのは、静寂ではなく、おぞましいまでの悲鳴だった。
崩落したコンクリートの壁の下から、泥を噛んだような低い呻き声が漏れる。
「……ウ、ウー……ママ……ママー……」
かつて精強を誇った第9近衛機械化軍団の兵士だった塊が、瓦礫の隙間から震える指を伸ばしていた。彼の腰から下は、戦艦の砲撃による衝撃で押し潰された瓦礫に挟まれ、完全に平坦に押し潰されている。痛みすら通り越し、ただ生理的な恐怖と寒さだけが、彼の喉から獣のような音を絞り出させていた。
「助けてくれ……誰か……」
その横では、片腕を失った衛生兵が、虚ろな目で自分の失われた四肢を探して這いずり回っている。周囲には、衝撃波で衣類をすべて剥ぎ取らた、戦友たちの手足がバラバラになった亡骸が無数に転がっていた。
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再び、空が鳴った。逃げ場のない平地で、窪地で、あるいは病院として使われていた宿舎の跡で、ソ連兵たちは天を仰いだ。
「ボルシェビキも、農民も、ここでは皆同じだ……!」
ある将校が狂ったように笑い声を上げ、次の瞬間に降り注いだ鋼鉄の塊が、その笑い声ごと彼を分子レベルまで粉砕した。
大連・旅順を埋め尽くしたソ連軍の叫び声は、やがて噴煙の中に溶け込み、消えていった。残されたのは、焼けた鉄と肉の臭い、そして、かつて「無敵」を信じた軍隊が、海の彼方の神のごとき暴力によって、指の隙間からこぼれ落ちる砂のように消え去ったという、冷徹な事実だけだった。
遼東の地は、ただ赤黒い泥と、止むことのない風の音だけが支配する、巨大な墓標へと変わっていた。
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四、沈黙する遼東
砲撃からわずか数十分。大連・旅順の軍事施設は粉砕された。至近距離でなくとも、地上を駆け巡る猛烈な爆風は人間の鼓膜を裂き、肺を潰し、あらゆる生存の試みを無に帰した。「長門」の艦橋から遠く水平線を見つめる加治中将の瞳には、黒煙を上げて燃えるかつての日本の拠点が映っていた。
「……これより、南方軍の上陸行動へ移行する」
海からの断罪は終わった。空に消えゆく噴煙の向こう側、もはやソ連軍の組織的な抵抗は、完全に消滅していたのである。第6近衛戦車軍 クラフチェンコ上級大将指揮下の機械化部隊は、多くの損害を被った。
★北方防衛開放軍が援軍として大陸へ上陸する前の第6近衛戦車軍
朝鮮半島と満洲北部の境界が戦火に包まれる中、関東軍の背後、広大なモンゴル高原の先で一つの「怪物」が胎動していた。それは、アンドレイ・クラフチェンコ上級大将が指揮を執るソ連第6近衛戦車軍だ。
この軍は、単なる戦車の集団ではなかった。歩兵、砲兵、戦車のバランスを重視し、後に「冷戦期のソ連機械化軍」の原型ともなった、当時最先端のドクトリンを具現化した軍団だった。
部隊編制
クラフチェンコ上級大将の旗下には、ソ連軍が誇る精鋭部隊が名を連ねていた。
第5近衛戦車軍団
第7近衛機械化軍団
第9近衛機械化軍団
これらに加え、自走砲連隊、軽砲兵旅団、高射砲師団、さらには偵察の要となるオートバイ大隊といった直轄部隊が脇を固めていた。
装備の全容
軍全体で1,019両から1,100両以上という、圧倒的な数の戦車と自走砲を保有していた。その顔ぶれは、ソ連の工業力と連合国の支援を象徴する多種多様なものだ。
| 車両カテゴリー | 主な車種と特徴 |
主力戦車 T-34-85 : ウラルの新造工場から直送された最新の傑作戦車。
供与戦車 M4A2 シャーマン : 米国からのレンドリース車両。第9近衛機械化軍団の主力として運用。
重戦車 IS-2 : 日本軍のあらゆる対戦車砲を跳ね返す、ソ連最強の怪物。
自走砲 ISU-122 / SU-100 / SU-76 : 強力な対戦車火力と歩兵支援を兼ね備える。
旧式戦車 T-26 / BT戦車 : 国境警備や補助的な任務に充てられた古参車両。
断崖の奇襲:大興安嶺越え
関東軍司令部にとって、北方の守りの要である大興安嶺山脈は、大規模な装甲部隊の通行など「不可能」であるという常識の中にあった。しかし、クラフチェンコはその常識を鋼鉄の履帯で踏み潰した。
「機械化部隊は道なき道を行く。山が立ち塞がるなら、その頂を乗り越えるまでだ」
第6近衛戦車軍は、険峻な山脈を越えるという無謀とも言える奇襲攻撃を敢行した。凄まじい損耗を出しながらも、彼らはわずか数日で満洲中央部へと進出。予期せぬ方向から現れた巨大な装甲集団を前に、関東軍の指揮系統は瞬く間に混乱に陥り、北の防衛線は根底から覆された。
しかし、今、その栄光に輝く第6近衛戦車軍団は北方防衛開放軍の手によって、地面に叩きつけられ、細切れにされ、存在を抹消されつつある。戦艦の砲撃が開始され、爆風で人体は吹き飛ばされ、バラバラの襤褸のように散らばった。装甲車両も人も大砲もトラックも、すべて共産主義的に平等に与えられる戦艦の砲弾が裁きを与えた。




