大連、旅順への上陸作戦 6-2 詔勅《みことのり》
掛井総司令官は状況説明の後に続けて、本国より、天皇陛下の詔勅とお言葉を頂いたことを報告し、読み上げた。
詔勅
「朕はこの大戦において、この国のために命をささげた御霊たちに対し、厚い感謝と共に深い敬意を抱く。南方で、南洋で、中国大陸、朝鮮、マリアナ、ハワイ、太平洋のいたる所に我々の同胞たちの躯が横たわり、あるいは海の底に、あるいは、戦友たち達の手によって葬られたかもしれない。そして、この戦いに巻き込まれた日本から身一つで出て、かの地で自らの身代を培い、その地の一部になろうとした者たち。そして、不幸な運命に倒れた者たち。彼らの存在している場所こそ、その人々の最後の場所であり、我らはそこへ向かって、祈り、悲しみとともに、彼らに誓う。彼らの家族、兄弟、その子孫をこのような戦いの果てにおいても、その命をつなぎ、ともに生きることを」
御名御璽
昭和二十年九月三十日
内閣総理大臣、鈴木貫太郎
それに引き続き、内閣総理大臣、鈴木貫太郎と日本軍総司令部・総司令官 畑俊六 元帥からの感状を読み上げる。
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内閣総理大臣 鈴木貫太郎
感状
北方防衛解放軍、関東軍、朝鮮軍、新太平洋艦隊、新連合艦隊、並びに挺身諸部隊将兵へ
今次、祖国の興廃に関わる未曾有の国難に際し、諸士が発揮したる忠勇無双の武略と、疾風の如き電撃的果断に対し、政府および帝国臣民を代表し、謹んで深甚なる感謝を捧ぐ。
北満・朝鮮の地において、圧倒的圧迫に抗し、猛威を振るう強敵を瞬時に打ち砕き、同胞と避難民を絶望の淵より救い出したる戦功は、誠に万世に燦然と輝く偉業なり。陸海の精鋭が固き絆をもって結ばれ、冷徹なる法と絶対の秩序を即座に再構築せし忠誠の誠気は、全軍の模範にとどまらず、祖国の未来を照らす不滅の灯火たり。救援が来るまで、耐えていた関東軍、朝鮮軍の将兵の諸君にも感謝が絶えない。
今や戦局は、我らの主導する大逆撃の秋を迎えたり。大連・旅順の奪還と、大陸における東亜の真の秩序再建に向け、全軍がさらに一致団結し、その神武を発揚せんことを切に望む。
昭和二十年九月三十日
内閣総理大臣 鈴木貫太郎
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日本軍総司令部 総司令官 畑俊六 元帥
感状
北方防衛解放軍北方軍・南方軍、関東軍、朝鮮軍、北支那方面軍、並びに新太平洋艦隊、新連合艦隊の将兵へ
諸士は暴虐なるソヴィエト赤軍の侵略に対し、神速なる機動と猛烈無比の火力をもってこれを迎撃、清津、平壌、京城より釜山に至る朝鮮全土の敵対勢力を雲散霧消せしめ、破竹の勢いをもって凄絶なる大勝利を収めたり。
特に、空陸一体の圧倒的攻勢による過激派パルチザンの掃討、および厳格なる軍政の確立をもって敵の無法を断罪せし戦果は、我が陸海軍の威信を全天下に示せしものなり。見敵必殺の冷徹なる意志と、果敢なる兵站運用を完遂したる各指揮官並びに全将兵の功績は、極めて顕著なりと認む。
然れども、戦いは未だ半ばなり。南北および東より敵の要衝たる大連・旅順を完璧に包囲し、ザバイカル方面軍を完全粉砕するの機は今や熟せり。全軍、速やかに戦力を整え、陸海相協力して西方の敵路を遮断し、敵の息の根を止めよ。栄光ある勝利は、我らと共にあり。
昭和二十年九月三十日
日本軍総司令部 総司令官 陸軍元帥 畑俊六
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その後に、今後の戦いの目的とその達成方法の概略を述べていく。
「極東第一師団第二師団の高官の尋問によって報告された、ソヴィエトのシベリア鉄道から続く、東清鉄道の「兵站輸送経路」の終着点は、この大連・旅順だ」
「北方防衛開放軍司令部は南方軍が旅順、大連に逆進撃をかけることを決定している。ここは日本軍にとっても、重量拠点であり、絶対に再占領しなくてはならない場所だ」
「北方防衛開放軍北方軍の本隊が東清鉄道を逆進撃を行い、ハルビンまで占領をした。北方防衛開放軍北方軍の本隊がハルビンから南へ進撃を開始することは決定事項である。南北からの包囲網を完成すること。そして、戦力を回復した関東軍によって東からも圧力をかけることが戦略の骨子である。そして、西からの攻撃も北方防衛開放軍南方軍第8軍が天津から上陸する。この大連、旅順の上陸作戦が行われると同時に天津上陸も実行される」
「第8軍の今村均大将には天津に上陸し、現地の北支那方面軍を支援し、司令官根本博中将と共同して、北上し、そのまま、有力なソヴィエト軍を排除しつつ東に進撃し、侵略者どもを完全に包囲する」
「敵は大連の港を自国の庭だと思っているようだが、ところがギッチョン。旅順に停泊しているソ連の巡洋艦ごと、叩き潰せ」
掛井の瞳が、並み居る将官たちをゆっくりと映す。
「大連・旅順だ。ここを奪還せねば、我々に真の勝利はない」
北からの進撃(北方軍)
すでにハルビンまでを占領下に置いた伊勢神中将率いる北方軍本隊が、東清鉄道を逆走する形で南進を開始。
東からの圧力(関東軍)
戦力を回復した山田乙三大将率いる関東軍が、東部戦線からソヴィエト軍を圧迫し、逃げ道を塞ぐ。
西からの回廊(第8軍)
今村均大将率いる第8軍が天津へ上陸。北支那方面軍司令官・根本博中将と合流し、ソヴィエト軍の側面を突きつつ東進する。
「南と北と東からの包囲網を完成させ、西からは今村大将が西方を遮断する」
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掛井の言葉を受け、南方軍総参謀長・武田五郎大佐が補足説明に立った。
「大連のソヴィエト軍は、我々の平壌への大規模な反撃によって大混乱に陥っています。彼らの航空軍団は我が航空軍によって徹底的に排除され、空の傘を失いました。旅順港もまた、加治中将率いる新太平洋艦隊の射程内にあり、まさに風前の灯です。この機を逃す手はありません。一気に肩を付けましょう」
作戦室には、次の戦闘への準備の打ち合わせの活発な意見の声が聞こえてくる。
南方軍の小倉善二中佐(兵装・技術)や桜木徹少佐(航空連絡)といった実務を担う幕僚たちも、最新の補給状況と機体稼働率を手に、確実な勝算を弾き出している。
新連合艦隊の伊藤司令官、《帰還艦隊》司令官、新太平洋艦隊の加治司令官と水町中佐、白川少佐、榎本大佐ら北方軍の参謀団も、すでに具体的な兵站と作戦行動の最終調整に入った。
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会議の締めくくりに、掛井大将は再び全員を見渡した。
「大連・旅順は、我々日本軍にとって『栄光』の地だ。だが今は違う。そこは『奪還すべき最前線』だ。強大なザバイカル方面軍をここで壊滅させ、太平洋、そして大陸の秩序を我々の手に取り戻す」
「応!異議なし!」
北方軍、南方軍、関東軍、艦隊司令官達の声が重なる。
南北からソヴィエト軍を圧砕するため包囲網が閉じ始める、ターゲットは赤色に染まった大連・旅順。




