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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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清津の惨劇 悪鬼羅刹の蛮行 5-7-3 地上戦 朝鮮方面のソヴィエト軍の最後

清津(チョンジン)の地下深く、冷たく湿った防空壕。地上ではソヴィエト軍が消滅する轟音が響き、死の瞬間が近づいていた。中央のテーブルを囲むのは、歴史の表舞台に立つはずだった共産主義の指導者たち——パルチザン派(満洲派)の指導者、ソヴィエト派、そして延安派。しかし、そこにあるのは「同志」の絆ではなく、追い詰められた獣たちの醜い責任転嫁だった。


「……チスチャコフめ、我らを見捨てたか!」


ソヴィエト派の幹部が、電信機の沈黙を睨みつけながら叫ぶ。


「ソヴィエトの軍事力を盾に大口を叩いていたのは貴様らだろう! 疲弊した日本軍など、一突きで崩れると言ったのはどこのどいつだ!」


延安派のリーダーが、テーブルを叩いて応戦する。


「黙れ! 毛沢東同志の教えを無視し、ソヴィエトの物量にのみ頼った貴様らの失策だ。山中で隠れることしか知らぬパルチザンなど、近代戦では何の役にも立たん!」


その視線の先には、満州派の指導者がいました。彼は軍服の襟を正しながらも、その瞳には隠しきれない動揺と焦燥が混じっていた。


「……我らパルチザンの闘志を疑うか。日本軍の背後を突く準備はできていた。だが、あの戦車、あの陣地……あんなものは戦訓にはなかった!」


「言い訳はいい!」ソヴィエト派が鼻で笑います。「貴様が『英雄』として平壌入りするための御輿(みこし)を担いでやっていたというのに、これではただの敗残兵だ。結局、貴様は山の中で消えていればよかったのだ」


「何だと……!」満州派の指導者の手がホルスターに伸びた。


罵声と怒号が地下室のコンクリート壁に反響し、もはや誰が味方で誰が敵かも分からぬ混沌が渦巻いたその瞬間——。


会話は、突如として断絶した。言葉よりも先に届いたのは、鼓膜を突き破らんとする「空気を切り裂く音」だった。遥か沖合に鎮座する戦艦『大和』。その三連装主砲から放たれた一トンを超える鋼鉄の塊は、絶対的な物理的破壊として、清津の地下室をピンポイントで射抜いた。物理法則は、彼らのイデオロギーも、権力への執着も、そして醜い罵り合いも、等しく無価値なものとして扱った。


コンクリートの天井が自重を失って破裂するより早く、超音速の衝撃波が彼らを襲った。最初に破壊されたのは、彼らの「器官」だった。鼓膜は内側から弾け飛び、凄まじい気圧差によって眼球は眼窩から文字通り噴出した。叫ぼうとした口からは声ではなく、肺胞がすべて破裂したことによる黒い血霧が、高圧スプレーのように吹き出した。


ホルスターに手をかけていた満州派の指導者は、自分の指先が、そして腕の肉が、衝撃波の暴力によって「削ぎ落とされ、霧散していく」のを視覚すら失った脳で一瞬だけ感じたかもしれない。骨は一瞬にして粉砕されて砂となり、皮膚は激しい摩擦熱で炭化しながら剥ぎ取られていく。ソヴィエト派も、延安派も同様だった。彼らが最期に抱いた互いへの憎悪も、権力への執着も、シナプスの電気信号が途絶えるのと同時に消滅した。首から上が原型を留めぬ肉塊へと変わり、超高温の熱線が彼らの体液を一瞬で沸騰させ、水蒸気爆発を起こす。脳漿も、内臓も、骨髄も、すべてがドロドロに溶け合い、清津の冷たい土と混ざり合う泥炭へと成り下がった。


そして、直後に届いた数千度の爆炎が、その肉の残滓すらも許さなかった。有機物は一瞬にして炭素の塵へと分解され、超高温の炎によって、その痕跡すら残さず「粉微塵」に蒸発した。爆煙が晴れた後、そこにあったのは地下室ではなく、大地を抉り取った巨大なクレーターだけだった。歴史を動かすはずだった男たちの肉体は、ただの「煤(すす)」となって、朝鮮の空へと吸い込まれて消えた。


朝鮮半島の歴史を歪めようとした共産主義のリーダーたちは、ソヴィエト軍の敗走と共に、歴史の表舞台に立つ前に「消滅」した。彼らが最後に残した言葉は、後世に語り継がれる革命の言葉ではなく、仲間を貶める醜悪な罵倒に過ぎなかった。


沖合で砲塔を冷やす『大和』。その艦橋から戦果を確認した観測員が、静かに報告を上がる。


「目標地点、完全消失。……すべて排除されました」


---



艦砲射撃の咆哮が止むと、清津(チョンジン)の街に恐ろしいほどの静寂が訪れた。新太平洋艦隊が解き放った圧倒的な衝撃波の余韻が残る中、第9師団(武部隊)の先鋒が、黒煙の立ち込める清津市内へと足を踏み入れた。


市街地の街路は、原形を留めないほどに崩壊していた。砕け散ったコンクリートの大きな塊、飴細工のようにへし折れた鉄骨、そして破砕された建造物の瓦礫が、道路を埋め尽くしている。第9師団のM4「神官」やM36「雷轟」の重量級車体は、履帯で砕石を踏み砕き、邪魔な瓦礫を力任せに押し分けながら慎重に進んで行った。


「……ひでぇ有様だな」


車長の呟き通り、目に入る光景は凄惨を極めていた。艦砲の直撃を受けて砲塔ごと吹き飛んだソヴィエト軍のT-34/85、爆風で吹き飛ばされ、潰れた軍用トラックの無残な残骸。そしてその至る所に、かつて「人間」であった黒焦げの肉塊や、原形を失った肉片が手足の区別もつかぬまま散乱していた。巨砲の圧倒的な破壊力は、生きとし生けるすべてのものを等しく粉砕し、街ごと灰燼に帰せしめていた。


武部隊は市街地の瓦礫を抜けて、ソヴィエト太平洋艦隊の艦艇や脱出船が待つはずだった清津港へと到達した。しかし、そこに広がっていたのは、艦砲射撃による破壊以上に、逃げ場を失った人間の「狂気」が生み出した絶望的な光景であった。


「これは……味方同士でやり合ったのか」


港の埠頭には、脱出用の船に群がり、パニック状態に陥ったソヴィエト兵とパルチザンたちの遺体が累々と重なり合っていた。日本軍の迫撃と艦上からの絶望的な砲撃を前に、理性を失った兵士たちは唯一の生還ルートである船を巡って暴動を起こしたのだ。将校も下士官も、パルチザンも関係なく、我先にと船へ乗り込もうと互いに小銃を撃ち合い、銃剣で刺し刺され、果ては手榴弾を投げ合って共倒れとなっていた。


舷側に折り重なる遺体の山、至近距離から撃ち抜かれた痕跡を残す無数のソヴィエト兵、そして赤く濁った海面に浮かんでは揺れる無数の死体。そこには、軍隊としての統制も政治的理念も欠片すら残されておらず、ただ自らの生に執着した者たちが繰り広げた、見苦しくも凄惨な自滅の痕跡だけが刻まれていた。


---


「生き残りを逃すな。瓦礫の隙間一つ、崩れた地下道一つ見落とすな」


武部隊の歩兵部隊は装甲車両の援護のもと、散開して徹底的な「ローラー作戦」を開始した。兵士たちは手にした小銃や短機関銃を構え、瓦礫の山を一つひとつ手作業で動かし、崩れ落ちた建物の暗がりを検分していく。


「そこに潜んでいるぞ!」


崩落した地下室の隙間や、ひっくり返った戦車の影で死んだふりをしていたソヴィエト兵やパルチザンの生き残りが発見される。彼らが投降の素振りをみせる間もなく、あるいは悲鳴を上げる間もなく、武部隊の冷徹な銃砲火が至近距離から一斉に叩き込まれた。


交渉も、情けも、猶予もない。

見つけ次第、容赦なくその場で排除していく。かつてこの地で暴虐を繰り広げ、混乱を煽った敵対勢力に対する、徹底的な存在の抹消であった。


日が沈み、清津の港が漆黒の闇に包まれる頃、市街地と港湾からの銃声は完全に途絶えた。


清津港を埋め尽くした瓦礫と煙のなかで、最後の一兵まで排除されたソヴィエト軍および共産勢力。


---


北の羅津から南の釜山、西の平壌、そして東の清津に至るまで――。


朝鮮半島の全土を覆っていたソヴィエト軍は、北方防衛解放軍と新太平洋艦隊が振るった「圧倒的暴力」と「冷徹な秩序」の前に一瞬にして粉砕された。かつて猛威を振るったソヴィエト軍および共産党軍は、その存在の痕跡すら残さず、歴史の闇の彼方へと完全に消滅したのである。


砲声が止み、硝煙が薄れゆく街々へ、矢継ぎ早に投入されたのは北方防衛解放軍の「軍政憲兵隊」であった。黒い腕章を巻いた憲兵たちは、占領と同時に主要街道や港湾、主要庁舎を掌握。ソヴィエト軍の敗残兵や過激派パルチザンが残していった混沌を排除し、混乱に乗じて非戦闘員に対し掠奪、暴行、強姦、火災誘発といった凄惨な蛮行を働いていた犯罪者たちの徹底的な摘発を開始した。


「あの男です! 家に押し入り、主人を撃ち殺して金品を奪っていったのはあのソヴィエト兵です!」


「この朝鮮人どもは、ソヴィエト軍の手先となって逃げ遅れた女子供を……ッ!」


仮設された捜査所には、避難民や現地住民が押し寄せ、悲痛な怒りの証言が次々と寄せられた。押収された無数の掠奪品、遺体の検分結果、そして生々しく一致する目撃証言。


軍政憲兵隊の厳格な調査網は、逃亡を図る残党や市民に紛れ込もうとした過激派指導者たちを、一人残らず網の目へと追い詰めて行った。


---


瓦礫の残る大広場に設置されたのは、無駄を削ぎ落とした武骨な「臨時軍法会議」の法廷であった。


縄で硬く縛られ、銃口を突きつけられて引き出された罪人たち――かつて暴虐の限りを尽くしていたソヴィエト軍将校と兵、朝鮮共産党の幹部たちとごろつき共は、いまや蒼白な顔で膝をガタガタと震わせていた。言い逃れのできぬ動かぬ証拠の数々と、周囲を取り囲む無数の被害者たちの激しい憎悪の視線が、彼らを射抜いていた。


中央に座す法務官が、無感情な手つきで書類をめくり、冷ややかな視線を被疑者群へと向けた。


「被告らを、戦時における過激な暴虐、非戦闘員に対する殺傷および略奪の罪により――即刻死刑に処す」


感情を一切排した法務官の死刑宣告が、静まり返った広場に冷たく響き渡る。弁明の機会も、哀求の余地すらも与えられない。それが、法と秩序を踏みにじった者たちに突きつけられた唯一の答書であった。


---


宣告と同時に、罪人たちは逃走の隙すら与えられぬまま、引き立てられて陣地外縁の土のう前へと引きずられて行った。


「構えッ!」


直列に並んだ憲兵隊の小銃が一斉に跳ね上がり、黒い銃口が夕口の光を反射して冷たく光る。


「撃てッ!」


タダンッ! タダダンッ!


一斉射撃の乾いた咆哮が、秋の冷えた大気を切り裂いた。

崩れ落ちる罪人たちの体。かつて無法の限りを尽くした悪逆の徒は、その命をもって自らの罪を清算させられた。周囲で見守っていた住民たちからは、安堵の溜息とともに、静かな歓声が漏れ聞こえた。


銃砲の響きが遠のいた街には、軍政部が掲げた「厳格なる法」が速やかに浸透し始めていた。


過酷な火力をもって外敵を徹底的に粉砕し、鉄の紀律をもって法と秩序を即座に再構築する――。

北方防衛解放軍と新太平洋艦隊が刻みつけた「悪鬼・羅刹の蛮行」は、荒廃した朝鮮全土に、二度と揺らぐことのない絶対的な平静をもたらしたのである。

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