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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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清津の惨劇 悪鬼羅刹の蛮行 5-7-2 地上戦 朝鮮方面のソヴィエト軍の最後

大打撃を受けたソヴィエト軍第1極東方面軍第25軍 チスチャコフ将軍はソヴィエト太平洋艦隊の艦艇が存在する、朝鮮東海岸部のソヴィエト軍重要拠点《清津》へと撤退を開始した。


南方軍上陸部隊は平壌を占領する。その地点で、南のへ向けて、朝鮮半島の残存共産党軍を殲滅を測るため、第62師団(石部隊)は分離して南下を開始する。


平壌を後にした第62師団(石部隊)の車両群。その車体に刻まれたのは、憤怒の相を浮かべる「羅刹」の意匠であった。それは、一度捕捉した敵対勢力を決して逃さず、徹底的に無力化する機甲師団の苛烈なる威容を象徴していた。M18「電光」を先頭とする高速機甲群は、大同江を越え、京城(ソウル)へと続く街道を怒濤の速度で南下を開始した。


ソヴィエト軍の敗走と治安の空白に乗じ、京城周辺では過激化した共産系パルチザンや混乱に乗じた武装集団が行政機関を占拠し、略奪と破壊を繰り広げていた。しかし、その混乱も第62師団の疾風のごとき到着によって一瞬にして破砕される。


「前方、漢江(ハンガン)橋頭堡に敵の重機関銃座およびパルチザンの陣地を確認!」


「『電光』、左右から回り込め! 『神官』、正面から圧砕せよ!」


市街地に雪崩れ込んだM18「電光」とM4「神官」の混成部隊は、圧倒的な火力と機動力で武装勢力を瞬く間に包囲。建造物に立てこもり抵抗を試みる敵拠点に対し、75mm砲と機銃の集中火力を叩き込み、文字通り一瞬で無力化した。かつて街を恐怖で晒していた抗日パルチザンやソヴィエト軍の残党は、死の恐怖に怯えながら次々と武器を捨てて投降するか、逃げ場を失って崩落する街並みの中に消え去っていった。


京城の主要拠点を完全に制圧した第62師団は、直ちに「軍政憲兵隊」を展開。混乱に乗じて非戦闘員に対する掠奪、暴行、火災誘発を主導していたソヴィエト軍関係者および朝鮮共産党の指導者たちの徹底的な摘発を開始した。被害を受けた現地住民や避難民の生々しい証言、そして押収された不法証拠品に基づき、臨時軍法会議が開かれた。


「被告らを、戦時における過激な暴虐、非戦闘員に対する殺傷および略奪の罪により、即刻死刑に処す」


冷徹な法務官の宣告とともに、言い逃れのできなくなった過激派の幹部や残虐行為を働いた兵士たちは引き立てられ、逃走の隙すら与えられず陣地外縁にて次々と銃殺に処された。無法と混沌に覆われていた街に、北方防衛解放軍の「冷徹なる法と秩序」が即座に打ち立てられた瞬間であった。


---


京城の安全を確保した第62師団(石部隊)は留まることなく、さらに南のテジョン、大邱(テグ)、そして朝鮮半島の南端・釜山(プサン)および麗水(ヨス)を目指して怒濤の進撃を続けた。


山岳地帯へ逃げ込み再起を図ろうとするソヴィエト軍の残存部隊や抗日パルチザンに対し、M18「電光」の軽快な走行性能で敵を追撃し、M36「雷轟」の火力が容赦なく襲いかかる。潜伏拠点は90mm砲の精密打撃によって山肌ごと粉砕され、海へ逃れようと海岸線へ追い詰められた敵群も、港湾を先回りして展開した「電光」によって完全に退路を断たれた。そして、偵察部隊に発見された敵部隊は航空部隊によって、上空から殲滅された。


街から、山から、港から、人のいるあらゆる場所から――。

過激な破壊工作を企てていた敵対勢力は完全に排除され、長引く混乱は終焉を迎えた。


半島の最南端、釜山の港から突き出る突堤。夕日に照らされる海を見つめる第62師団の将兵たちの腕には、赤く輝く「羅刹」を装飾した部隊章が誇り高く揺れていた。敵を一人残らず排除し、混乱を力によって平定した第62師団の電撃戦により、朝鮮半島全土に再び秩序が戻ったのである。


---


一方、 第9師団(武部隊)はそのまま、第1極東方面軍 第25軍 チスチャコフ将軍の追撃に入る。ソヴィエト軍第1極東方面軍 第25軍は朝鮮半島中央の山岳地帯を抜けて、日本海沿岸部を北上して《清津市(チョンジン)》へ向った。追撃する第9師団(武部隊)は咸興市(ハムフン)の港湾基地で日本海軍輸送艦から補給を受け、さらに、追撃を続ける。


咸興(ハムフン)の港湾基地は、日本海軍の圧倒的な制海権の下、すでに海上から上陸し、占領されていた。そして、新潟からの兵站線の中間補給基地として機能していた。武部隊が咸興に到達したその時、港には数隻の日本海軍輸送艦が横付けされ、クレーンが休むことなく物資を荷下ろししていた。それは、敵を追い詰める彼らにとって、必ず必要なものだった。輸送艦の船倉からは、ドラム缶入りのガソリンと、装甲機動部隊の砲弾が山のように運び出される。


港のドックでは、整備兵が武部隊の装甲車両に群がり、過酷な転戦で傷ついた無限軌道やエンジンの整備を徹夜で行った。さらに、輸送艦からは食料や水が補給された。


「待たせたな……」


補給を受け、完全に機能を回復した戦車の砲塔の上で、武部隊の指揮官は静かに呟いた。彼らの視線の先にはや(・)ら(・)ね(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)敵が存在した。追撃は続き、各地で戦闘を行われ、 第9師団(武部隊)はついに朝鮮半島の日本海側の海岸の都市《清津《チョンジン》》へと 第25軍を追い詰め、ウラジオストクから進撃してきた、北方軍第一軍と包囲網を敷いて、この戦いの最終局面に辿り着いた。


---


朝鮮方面作戦最終局面


1945年9月30日。


朝鮮半島からの唯一の脱出口である要衝・清津(チョンジン)の港は、すでにこの世の終わりを迎えていた。ソヴィエト軍第1極東方面軍第25軍司令官、イワン・チスチャコフ将軍は、司令部を脱出して港湾の泥濘に立ち尽くしていた。彼の眼前に広がる光景は、もはや組織された「軍隊」ではなかった。東の海原からは新・連合艦隊の影が水平線を埋め尽くし、陸路からは退路を断った日本軍の包囲網がじわじわと、しかし確実にその円を狭めている。すべての方向が敵、敵、敵。


「……終わりだ。我々は完全に袋のネズミにされたのだ」


チスチャコフは恐怖のあまり歯の根が合わず、顎をガタガタと震わせながら愕然とした。


---


軍団の統率、ソヴィエト軍としての誇りなど、最初の一発の砲声で消し飛んでいた。港に停泊していた太平洋艦隊のわずかな輸送艦や脱出船に我先にと乗り込むため、数万のソヴィエト兵と朝鮮共産党軍の敗残兵たちが、凄惨な「乗り込み競争」を始めていた。


「どけ! 貴様ら現地兵が先に乗るなど許さん!」


「どくのはお前たちだ! 船をよこせ!」


パニックの熱気の中で、誰かが狂ったように拳銃を連射した。それを合図に、岸壁はむき出しの殺戮場へと変貌する。銃を持たぬ者は背後から刃物を突き刺し、血を流して倒れた兵士の顔面を、後続の群衆が容赦なく踏みつけていった。一人が転べば、その上に十人が重なり、百人がその上を駆け抜けていく。地面に押し潰された兵士たちは、内臓を破裂させ、骨を砕かれながら、悲鳴をあげる暇もなく原型を失った「肉の絨毯」へと変わり果てていった。


嘆(・)き(・)、(・)憎(・)し(・)み(・)、(・)乱(・)闘(・)、(・)絶(・)望(・)、(・)そ(・)し(・)て(・)狂(・)気(・)。


タラップにすがりついたまま海へ叩き落とされる者、過重で転覆しかけたボートの上で互いを突き落とし合う者。清津の港は、ただ生き残るためだけに同胞の命を貪り合う、現世に現れた正真正銘の地獄だった。


---


その地獄の頭上へ、真(・)の(・)絶(・)望(・)が飛来した。


沖合に座する《帰還艦隊》の旗艦・戦艦『大和』、そして戦艦『陸奥』。その巨大な砲身が、冷徹な精密さで《清津》の港へと向けられた。

大和の艦橋で、伊藤司令官は静かに、しかし有無を言わさぬ重みをもって攻撃開始を告げた。


「《清津》に攻撃開始、撃ち方始め」


――ズゥゥゥゥンッ!!!


大気を引き裂き、地球そのものを震撼させるような46センチ砲と41センチ砲の斉射音が轟いた。数秒後、一トンを超える大和の超重量弾が、暴徒と化したソヴィエト兵たちがひしめき合う岸壁のド真ん中に音速を超えて着弾した。


ドガァァァァァァン!!!


それはもはや「爆発」という生易しい現象ではなかった。着弾の瞬間、ソヴィエト共産党軍、抗日パルチザンが、爆風と超高熱によって文字通り「粉微塵に分解」された。衣服や肉は一瞬で気化し、残された四肢や骨の破片が、赤黒い雨となって周囲に撒き散らされる。陸奥の放った41センチ榴弾は、密集した陣地やすり鉢状の港湾施設を容赦なく打ち砕き、すり潰し、爆殺していった。地表のあらゆる建造物が木端微塵に破砕され、逃げ惑う将兵を巨大な鉄とコンクリートの破片が襲う。五体をバラバラに引き裂かれた肉塊が、泥と混ざり合って清津の街を赤く染めていった。


---


陸上での蹂躙と同時に、海面でも一方的な処刑が始まっていた。命からがら岸壁を離れ、海へと逃げ出したソヴィエト軍太平洋艦隊の輸送艦や徴用船の前に、日本の《帰還艦隊》が誇る最鋭の秋月型駆逐艦隊が立ちはだかった。


「一隻も逃がすな。すべて海に沈めよ」


秋月型が誇る九八式10センチ高角砲の連射性能は、脆弱な輸送艦にとって《死》そのものだった。

バン、バン、バン、バン、バン! と小気味よい、しかし絶望的な連続砲撃が、逃げる輸送艦の脇腹に何百発もの風穴を開けていく。装甲のない船体は瞬時に引き裂かれ、機関室を破壊された艦は次々と黒煙を吹き、弾薬を積んだ輸送船は内部からの大爆発を起こしてバラバラになりながら、冷たい日本海へと引きずり込まれていった。


---


チスチャコフ将軍の無惨なる最期


チスチャコフ将軍は、混乱の極みの中で、かろうじて太平洋艦隊の中型輸送艦の一隻に滑り込んでいた。船が岸壁を離れ、これで助かったと胸を撫でおろしたのも束の間、彼の乗る艦の前に、防空駆逐艦『冬月』がその不気味な艦影を現した。『冬月』の艦首に据えられた連装砲が、チスチャコフの座乗する輸送艦を完全に捉えていた。


「照準よし、テーッ!」


次の瞬間、長10センチ砲から放たれた高角砲弾の嵐が、輸送艦の艦橋と甲板を完全に凪ぎ払った。

ドゴォォン! という激しい爆発とともに、船体の中央部がへし折れる。その凄まじい大爆発の瞬間、艦橋の防弾ガラスを突き破って、引きちぎられた鋼鉄の鋭利な破片が、チスチャコフの身体に向かって矢のように飛来した。


「あ、がっ……!」


長さ一メートルを超える凶器と化した鉄の破片は、チスチャコフの腹部から背中へと容赦なく貫通し、彼を船壁に「串刺し」にした。激痛が彼の神経を狂わせ、口から大量の鮮血が噴き出す。しかし、船体の傾斜はそれを許さなかった。轟沈していく輸送艦の断末魔の傾きとともに、串刺しにされたままのチスチャコフの身体は、千切れた甲板ごと、燃え盛る重油が広がる極寒の海へと叩き落とされた。


「……う、あ……たす、けて……」


チスチャコフは海面に浮かぶ重油を肺に吸い込みながら、激しい苦痛の中で藻掻いた。身体を貫く鉄の重みが、容赦なく彼を海底へと引きずり込もうとする。冷たい海水が傷口から容赦なく体温を奪い、傷ついた内臓が塩水に焼かれるような、言語を絶する激痛。彼は、自分が蹂躙し、見捨ててきた無数の部下たちの死に顔が、暗い海中から自分を睨みつけているような幻覚を見た。


チスチャコフ将軍は、すぐには死ねなかった。千切れた自分の内臓が海に溶け出していくのを生々しく感じながら、冷たく暗い日本海の底へ向かって、長い時間をかけ、絶叫とも呻きともつかぬ泡を吐き出しながら、孤独に、惨憺たる苦しみの果てに沈んでいった。爆炎が晴れた清津港の海面には、ただ破壊された船の残骸と、赤く染まった波だけが、揺れているだけだった。第25軍はここに、地球上から完全に消滅したのである。

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