↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
204/280

清津の惨劇 悪鬼羅刹の蛮行 5-7-1 地上戦 朝鮮方面のソヴィエト軍の最後

挿絵(By みてみん)


朝鮮半島の西海岸 平壌に最も近い鎮南浦(チンナンポ)。新太平洋艦隊の艦砲射撃が止むと同時に、上陸用舟艇から第9師団(武部隊)第62師団(石部隊)が、まさに津波のごとく海岸線へ押し寄せた。


かつて沖縄の洞窟陣地でアメリカ軍を恐怖に陥れた精鋭たちが、今度はアメリカ製の強力な装甲と新しい戦術——電撃戦——をマスターし、大陸を駆ける。上空では九九式艦爆が敵陣地を粉砕し、彼らの進撃路を切り開く。


---


海岸を離れ、平壌へと続く丘陵地帯の森。そこには、ソヴィエト軍が強固に築き上げた防衛線が広がっていたが、日本軍の進撃速度はその想定を遥かに超えていた。その圧倒的進撃を空から支えるのが、雲龍型空母「葛城」「天城」「阿蘇」「笠置」「生駒」の5隻からなる艦載機航空戦隊である。そこから放たれた決戦兵器――それこそが「九九式艦上爆撃機二二型改(統合型)」であった。


平壌街道を見下ろす丘陵地帯と深い森林。

そこにはソヴィエト軍の指揮官が自信を深める「隠蔽陣地」が張り巡らされていた。丘の起伏や窪みを巧みに利用し、徹底的にダッグイン(戦車掩体への隠蔽)されたT-34-85、そして重装甲を誇るスターリン戦車JS-1、JS-2が、獲物を待ち構える蜘蛛のように潜んでいたのである。沿岸から進撃してくる日本軍の先鋒を、ここで一気に挟撃する手はずであった。


その時――ソヴィエト軍陣地の上空を、一機の日本軍偵察機が音もなく通過していった。


「くそっ、日本の偵察機か!? 我が軍の空軍は何をしている!」


ソヴィエト軍指揮官が吠えた直後、東の水平線から重低音とともに、黒い点々の群れが急速に巨大化しながら迫ってきた。


「敵襲! 敵機多数接近! 対空砲、打てッ! 迎撃せよ!」


---


合成風力を得るために風上に向かって疾走する「葛城」をはじめとする雲龍型空母群の飛行甲板から、轟音を轟かせて次々と飛び立つ、二二型改・130機。

機首を揃えた攻撃機隊はすぐさま大空で巨大な編隊を形成し、敵地上部隊を求めて最前線の空へと西進する。


「全機、攻撃体勢に入れ。我が軍の地上部隊前方に敵有力部隊あり」


高射砲の黒煙が空を汚し、対空機関砲の曳光弾が赤い筋となって伸びる中、山田大尉は冷静に各攻撃隊へ目標を割り振っていった。


「全機、突入せよ! 敵の機甲師団を打ち砕け!」


高度3000メートル。山田大尉は機体を垂直近くまで深く傾けると同時に、スロットルレバーを引き、エンジン出力をスローへと絞り込んだ。


次の瞬間、それまで空間を震わせていた爆音がすっと消え去った。


――スーッ……


急降下風圧ブレーキが展張され、静まり返った大空にただ「スーッ」という澄んだ空気の切り裂き音だけが渡っていく。地上で待ち構えるソヴィエト兵たちの上空を、息を呑むような不気味な静けさをまとった死神の群れが、真っ逆さまに舞い降りていく。


目標――戦車掩体に身を潜めるソヴィエト軍重戦車JS-2の平たい砲塔トップ。

視界いっぱいに迫る巨大な鉄の塊。地上に激突するかと思われるギリギリの高度、距離と角度が完璧に合致した瞬間。


「放てッ!」


バシッと心地よい解脱音とともに、腹下に抱えられた25番(250kg爆弾)が離脱する。


直後、山田大尉は操縦桿を力任せに引き絞ると同時に、絞っていたスロットルレバーを一気に奥まで押し込んだ。


エンジン、全開――!


ブワーッ――――ッ!!


その瞬間、周囲の空気を丸ごと切り裂くような猛烈な爆音が大空と大地に響き渡った。

地面に激突する寸前、すさまじい轟音とともに機首を持ち上げた九九式二二型改は、全身に重いGを受け止めながら、帰還鋼の剛性を誇示するように力強く大空へと突き上がっていく。


直後――


ズドォォォォンッ!!


背後で地響きのような大炸裂が巻き起こった。

直撃を受けたJS-2の重装甲が内側から吹き飛び、戦車掩体ごと巻き上げる土煙と誘爆によって重い砲塔が軽々と空中へ跳ね上げられる。周囲の掩体に潜んでいたT-34-85やソヴィエト軍兵士たちも、黒煙と爆風の渦の中へと呑み込まれていった。


「全機、我に続け! 敵の残存部隊を徹底的に叩き潰せ!」


---


北方防衛開放軍南方軍 地上部隊


森の小道を疾風のごとく駆け抜けるのは、M18・電光(第62師団)。その圧倒的な速度と機動力を活かし、敵の側面へ回り込む。恐怖による、停滞はない、あるのは、敵の存在を認め、その瞬間に殲滅するという冷徹な意志だ、見敵必殺。電光の76mm砲が、待ち伏せしていたソヴィエト軍のT-34/85を零距離射撃で沈黙させる。


強力な90mm砲を持つM36・雷轟(第9師団)は、丘の稜線に陣取り、遠距離からソヴィエト軍の重戦車IS-2を正確無比な射撃で撃破する。その破壊力は、敵の防御陣地さえも一撃で粉砕する。その傍らを、M4・神官(第9師団)が森を押し潰しながら進む。敵の歩兵部隊や防御陣地に対し、同軸機銃と75mm砲を浴びせ、文字通り「蹂躙」する。ソヴィエト軍の戦車が反撃を試みるも、神官の厚い装甲と、航空支援による爆撃によって、その努力は水泡に帰す。


森の中は爆発音と無限軌道の轟音、そして敵の悲鳴に包まれる。上空からの九九式艦爆による精密爆撃が、ソヴィエト軍の予備部隊も焼き払い、日本軍の装甲部隊は混乱する敵部隊を「次々と殲滅」していく。沖縄戦での防御陣地の経験は、今や敵の防御を破り、その背後へ回り込む圧倒的な「攻勢戦術」へと昇華されていた。


「疾風の如く」森を抜けた第9師団と第62師団は、戦線を劇的に押し上げ、平壌の街を見下ろす丘へと到達した。敵の防御線は完全に崩壊し、平壌陥落はもはや時間の問題となった。


---


平壌を見下ろす丘陵地帯。硝煙の霧が晴れゆく中、牡丹台(モランボン)の眼下に広がっていたのは、ソヴィエト軍の支配から引き千切られ、混乱と爆音に揺れる平壌の市街地であった。


「全車、牡丹台(モランボン)を越えて市街地へ突入! 抵抗する敵拠点を即座に無力化せよ!」


第9師団(武部隊)のM4「神官」を先頭に、M36「雷轟」、そして第62師団(石部隊)のM18「電光」が履帯の咆哮を轟かせて坂を下った。大同江(テドンガン)を臨む街道を、圧倒的な機甲部隊が雪崩れ込んでいく。


平壌市街に残留していたソヴィエト軍第25軍の警備部隊と朝鮮人民委員会、抗日パルチザンは、すでにパニック状態に陥っていた。指揮官のチスチャコフ将軍が清津方面への撤退を命じたことで、司令部機能は機能停止した。街の要所に残された少数のT-34/85や対戦車陣地は、破竹の勢いで侵入してきた日本軍地上部隊の前に次々と粉砕されていった。


「12時方向、建物上に据え付けられた機関銃座!」


M4「神官」の機銃が真っ赤な火花を撒き散らし、75mm砲の一撃が建物の壁ごと銃座を吹き飛ばす。続いて滑り込んだM18「電光」が、狭い路地を軽快にすり抜け、逃走を図るソヴィエト軍の指揮車両を至近距離で撃破した。


わずか数時間の市街戦ののち、平壌の中枢部は完全に制圧された。かつてソヴィエト軍の赤星旗が翻っていた平壌の庁舎の屋上には、日の丸と北方防衛解放軍の旗がたなびき、平壌の占領が完全に達成されたことを告げた。


---


占領と同時に、追随していた工兵部隊と補給隊が電光石火の動きを見せた。平壌空港へ早くもブルドーザーや作業車が投入され、滑走路がすぐに整備された。そこへ、空中で待機していた航空隊が次々と滑り込むように着陸する。機体に、手際よく爆弾と燃料が再補給され、プロペラの爆音とともに再びソヴィエト軍第25軍の撤退列を追うべく大空へと飛び立っていった。


市街地の広場では、追随してきた「統合一型兵員輸送トラック」の車列が怒濤のごとく滑り込んでいた。


「弾薬箱を下ろせ! 燃料ドラム缶を回せ! 1秒でも惜しむな!」


トラックから吐き出された大量の90mm砲弾、75mm砲弾、そして燃料が、戦い終えたばかりのM36「雷轟」やM4「神官」の車内へと次々と滑り込んでいく。過酷な電撃戦を支えるのは、この隙のない完全なる「動的兵站(ロジスティクス)」であった。


---


補給が完了した平壌駅前広場。熱気を孕むエンジン音の中で、第9師団長(武部隊)と第62師団長(石部隊)が固い握手を交わした。


「清津へ逃げるチスチャコフの残党は、我が第9師団が追撃する。平壌の警備と東海岸の掃討は任された」


「宜しく頼みます。我が第62師団(石部隊)はこれより直ちに南下を開始。京城(けいじょう)の残存共産党軍を叩き潰し、朝鮮半島の南を完全に奪還する」


平壌の確保が完了したこの瞬間、作戦の次なる段階が始動したのである。


「石部隊、全軍発進! 目標、京城《けいじょう》!」


号令とともに、エンジンを咆哮させたM18「電光」の群れが、補給を終えたばかりの車体を震わせ、南へと続く街道へと躍り出た。機動力を武器とする第62師団は、平壌の街に別れを告げ、残存する共産勢力を一網打尽にすべく、疾風のごとき速度で京城《けいじょう》を目指し南下を始めたのである。

京城=ソウル特別市

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。