フィリピン救援上陸軍と第14方面軍は合流する
1945年6月。ルソン島北部の険しい山嶺、バギオの洞窟陣地。
かつて「マレーの虎」と恐れられた第14方面軍司令官・山下奉文大将は、泥にまみれた地図を凝視していました。軍服は擦り切れ、その体格は数ヶ月の飢えで一回りも細くなっていましたが、眼光だけは不気味なほど鋭く、絶望の淵に踏み止まっていました。
そこへ、参謀長・武藤章中将が、転がるようにして通信室から飛び込んできました。
「閣下……閣下ッ! ラジオが、ラジオが信じがたい声を拾いました!」
天を回らし戦局の逆転を告げる放送
武藤中将が抱えてきた鉱石ラジオから、激しいノイズがあるが「声」がイヤホンから聞こえてくる。それは、スービック海軍基地を電撃的に占領した新・連合艦隊――『菊水艦隊』からの放送でした。
『……こちら、新連合艦隊。フィリピンの日本軍全将兵に告ぐ。我々は沖縄を解放し、今、マニラの門を打ち破った。救援部隊は既にマニラ埠頭へ上陸。繰り返す、もはや諸君らは孤立無援ではない。再び我らと合流されたし』
その声を聞いた瞬間、山下大将の肩が激しく震えた。
「……沖縄を、解放しただと? あの牛島君が、生きているのか。そして、艦隊が……大和が、ここに来ているというのか」
その情報は静かに軍全体に伝わり、飢えで動けなかったはずの兵士たちが、泥の中から這い出した。静かに、決意をもって。
山下大将の頬を、熱い涙が伝い落ちる。
「……待たせてしまったな。皆、よく耐えてくれた……!」
巨躯を震わせ、声を上げて泣く山下大将の姿に、武藤中将もまた、ボロボロの袖で目を拭った。
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マニラへの進撃:分断された14方面軍・再集結
「全軍に伝えろ! 最後の予備弾、最後の乾パンを配れ。これより山を下り、マニラへ突入する!」
山下大将の号令は、血脈を逆流させる火薬となりました。
北部の尚武集団(第10、19、23、103師団、戦車第2師団、独混旅団)は、アメリカ軍の重包囲網を正面から突き破るべく、死に物狂いの攻勢を開始した。
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1945年6月。しかし、ルソン島北部の険しい山岳地帯は、焦燥と硝煙が渦巻く「死の谷」だった。
山下奉文大将率いる第14方面軍は、マニラへの反撃を開始したものの、その歩みは遅々として進まなかった。コルディリエラ山脈の切り立った断崖と深い谷を縫うように進む将兵たちの前に、アメリカ軍の長距離砲弾が容赦なく降り注いでいた。
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ルソンの雷鳴 —— 流星改・空からの援軍
絶望の峡谷
「伏せろッ! また来るぞ!」
地を揺るがす轟音と共に、155ミリ榴弾が山肌を削り取りました。爆風で跳ね上がった土砂が、骨と皮ばかりになった兵士たちを容赦なく埋めていきます。新連合艦隊の上陸によってアメリカ軍は混乱しているはずでしたが、高台に陣取った彼らの砲兵陣地は、未だに「山の虎」の喉元を正確に狙い撃っていました。
「くそ……あと数里、あと数里進めば友軍と合流できるんだ……!」
泥に顔をうずめた一人の兵士が、血の滲む拳で地面を叩きました。
空腹、熱病、そして止まない砲撃。限界をとうに越えた肉体に、絶望が鉛のように重くのしかかります。
「お天道様、どうか、どうかお助けください……!」
誰かが叫んだその祈りは、虚しく谷底へと吸い込まれていくかのように見えた。
空を切り裂く「流星」
その時だ。
アメリカ軍の連射音が響く空の向こうから、これまでのアメリカ軍の攻撃機とは明らかに違う、力強く、そして鋭いエンジン音が近づいてきた。
「……飛行機の音だ。野郎、また爆撃か?」
兵士たちが恨めしげに空を仰ぎ見た瞬間、山の稜線をかすめるような低空で、逆ガル翼の優美な影が飛び出してきました。
艦上攻撃機『流星改』。
新連合艦隊から放たれた、最新鋭・汎用攻撃機だ。
「あれは……日の丸だ! 日本の飛行機だぞ!」
颯爽たる鉄槌
流星改は、アメリカ軍の砲兵陣地が潜む対岸の谷間へ向け、猛然とダイブを開始しました。
ヒュルルルルという風切音が響いた直後、谷の向こう側で巨大な火柱が立ち上がります。正確無比な急降下爆撃によって、日本軍を苦しめていた長距離砲が、その鉄の肉体ごと木っ端微塵に粉砕した。
次々と飛来する流星改の編隊が、機銃掃射でアメリカ軍の残存陣地をなぎ払っていく。
ひと仕事終えた一番機が、歓喜に沸く日本兵たちの頭上を低空で通過しました。パイロットは、泥まみれで立ち上がった地上兵たちを見届けるように、左右の翼をひらひらと振る「翼振」で応えました。
「ありがとう……! ありがとうよおッ!」
兵士たちはボロボロの帽子を振り、涙を流しながら叫ぶ。眩しい太陽の光を浴びながら空を飛ぶその颯爽とした姿は、彼らにとって文字通り「たいようのけしん」そのものだ。
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「諸君、見たか! すでに援軍は来ているぞ!」
山下大将は、愛刀を杖に立ち上がり、枯れた声を振り絞って全軍を激励しました。その目にも、熱いものが浮かんでいる。
「あの上空の友軍こそが、我らの不屈の戦いに対する答えだ。このまま一気に山を下り、マニラへ突入する! 友軍との合流は目前である。続けッ!」
「おおおぉぉぉッ!」
さっきまで立ち上がる力さえなかったはずの兵士たちが、地鳴りのような咆哮を上げ、銃を握り直す。
将兵たちの足取りは、もはや絶望では立ち止まることはない。
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激闘と犠牲の果てに
合流への道は、決して平坦ではなかった。
アメリカ軍は混乱しながらも、圧倒的な火力の優位を盾に反撃を仕掛けてくる。
「進め! 立ち止まるな! 噴煙が見えるぞ、そこに同胞がいる!」
第23師団の兵士たちは、降り注ぐ迫撃砲弾を全身に浴びながら、倒れた戦友を担いで走り続けました。
「あと少しだ……あそこに行けば、食い物がある、薬がある……日本へ帰れるんだ!」
隣の兵を励ましながら突き進む。
重傷を負い、自決を覚悟していた第103師団の将兵も、新連合艦隊から飛来した『烈風改』の翼がアメリア軍陣地を機銃掃射で薙ぎ払うのを見て、最後の力を振り絞り立ち上がった。
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一方、マニラ近郊。
横山静雄中将率いる振武集団は、東方の山岳から市街地へ向けて雪崩れ込んだ。
「海軍が来たぞ! 弾丸なら向こうにある。奪え!」
塚田理喜智中将の建武集団も、アメリカ軍の背後を突き、混乱に陥ったアメリカ第6軍の兵站線を寸断。マニラ市街地は、上陸してきた第32軍と、山から降りてきた第14方面軍による「巨大な挟撃」の舞台へと変貌した。
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奇跡の合流
そして、マニラ郊外の平原。
ついに、先鋒の戦車第2師団の生き残りが、最新鋭の自動火器を構えた第32軍の上陸部隊と接触した。
「……第14方面軍、山下大将の使いです! 援軍に、感謝します!」
泥まみれの伝令兵が、上陸部隊の兵士と向き会う、
「よくぞ、よくぞ生きていてくれた。この戦いは我らに任せろ」
「違う、これからの戦いは我々の戦いだ」
お互い、戦意を高め「ニカッ」笑いながら、お互いの肩を叩きあう。
そして、フォート・マッキンリー突入の時を待つ。
分断されていた各集団は、多大な損害を出しながらも、奇跡のようにマニラへと結集。
山下奉文と牛島満。二人の将軍が、燃えるフォート・マッキンリーを背に、ついに手を取り合う時が来た。
上陸部隊から差し出された食料と、冷たい水。それを口にした兵士たちの目には、かつての「敗残兵」の影はなく、誇り高き「日本軍人」の魂が再び宿っていた。」
ep.4[南方奪還——「曙光作戦」の胎動]へと続きます。




