シベリア鉄道大爆破 空軍戦略爆撃隊出撃 4-10 東清鉄道を支配下へ、快速部隊の進撃
「ハルビン降下兵団、主要拠点を完全制圧。敵通信司令部、消滅」
無線のノイズを突いて飛び込んだその報告は、ウラジオストクから怒涛の勢いで西進する機甲快速部隊の全車両へと即座に伝波した。
1945年9月。雨の少ない乾いた満州平原に、途切れなく続く東清鉄道の黒い鉄路。その一本道に沿って、地平線を覆い尽くすほどの黄色い土煙を巻き上げながら、日本軍地上部隊が爆走していた。
先頭を切るのは、新技術によって生まれ変わった「新九七式中戦車」の群れである。
従来の華奢な車体から一変し、特殊冶金技術による低重心の傾斜溶接装甲と、長砲身の戦車砲を据えたその姿は、満州の平原を時速60㎞以上で巡航する猛獣そのものであった。
「ハルビンの降下兵団が退路を断った! 我らが遅れるわけにはいかん、全車、最大戦速!」
先頭を進む「一番車」のキューポラから身を乗り出し、双眼鏡を覗き込む戦車長の志摩大尉が叫ぶ。
後方には、車体に重機関銃を架装した「統合一型兵員輸送トラック」と多目的装甲車が長蛇の列をなし、キャタピラとタイヤが泥と乾いた土を激しく撥ね上げていた。
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鉄路の障害 ―― 距離一二〇〇の砲撃戦
「前方、東清鉄道三二号保線区付近に敵陣地! 特火点および対戦車砲を確認!」
操縦士の報告と同時に、志摩大尉は視線を前方へ飛ばした。
崩れかけた赤レンガの駅舎と鉄道の盛土を利用し、ソヴィエト軍が急造の防衛線を敷いている。ハバロフスクへの戦略爆撃とハルビンの陥落によって完全に補給網と上級司令部からの通信を絶たれたソヴィエト軍残存部隊だったが、死に体とはいえ、その陣地には依然として攻撃力が残されていた。
「前方、ソヴィエト軍小規模陣地。距離一二〇〇!」
志摩の鋭い短い声が、空冷ディーゼルエンジンの爆音が轟く狭い車内に響く。
「目標、右側の土嚢陣地! 対戦車砲! 徹甲弾装填!」
「装填完了!」
砲手が滑らかな手つきで旋回手動ハンドルを回す。最新式の光学照準器に同軸機銃照準装置 、必死の形相で76.2mm野砲の砲身をこちらへ向けようとするソヴィエト兵の姿が鮮明に浮かび上がった。
――ズガァァァンッ!!
長砲身から吐き出された衝撃波が、戦車前方の土煙を放射状に吹き飛ばす。
初速900メートルを超えて放たれた徹甲弾は、1.2キロの距離を一瞬で駆け抜け、ソヴィエト軍の野砲を防盾ごと豪快にぶち抜いた。直後に内部の砲弾が誘爆を起こし、土嚢とソヴィエト兵の肉体が真っ赤な爆炎とともに激しく宙へ舞い上がる。
「命中! 敵砲兵陣地、沈黙!」
だが、その直後であった。
キン! カカンッ!!
甲高い金属打撃音が、新九七式中戦車の傾斜フロント装甲を激しく揺らした。
廃駅舎の二階窓から、ソヴィエト軍のPTRD-41対戦車ライフルが猛烈な狙撃を加えてきたのだ。14.5mmの超大型弾頭が車体を打つが、強化された高張力鋼板は表面に浅い擦り傷を作るのみで、その威力を軽々と跳ね返した。
「無駄だ!」
志摩大尉が不敵に弾け飛ぶ火花を睨みつける。
「主砲、榴弾装填 撃てッ!」
二発目の砲撃が廃駅舎の二階を直撃した。爆風が内部を吹き荒れ、壁ごとソヴィエト軍の狙撃手を粉砕。破片と煙が吹き出し、対戦車ライフルの銃砲身が折れ曲がって地上へと転がり落ちた。
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武装トラックの突入と機動歩兵の展開
「戦車小隊に続け! 敵の防衛線を食い破れ!」
新九七式中戦車の対空戦車型の機関砲から連射を浴びせ、バリケードや重機関銃座を次々と物理的に「粉砕」しながら盛土を乗り越えていく。そのすぐ背後から、エンジンを咆哮させた武装トラックの群れが崩れ落ちた土砂を乗り越えて殴り込んできた。
トラックの荷台に据えられた九八式20ミリ高角機関砲が、死角から自爆特攻を試みようと飛び出してきたソヴィエト兵の群れに向けて咆哮を上げる。
ドバババババババッ!!!
重厚な20ミリ弾の連射が、瓦礫の陰に潜んでいたソヴィエト兵を遮蔽物ごと微塵に引き裂いていく。肉片と土煙が混ざり合い、真っ赤な霧となって空中に散った。
「降車! 散開! 泥を喰らっている暇はないぞ!」
トラックが急停止すると同時に、アオリ(荷台の囲い)が叩きつけられるように開き、九九式短小銃と一〇〇式機関短銃を抱えた機動歩兵たちが雪崩を打って飛び出した。
歩兵たちは新九七式中戦車のその陰に素早く身を隠す。彼らの動きに一瞬の躊躇もなかった。
「一番分隊は左の塹壕へ! 二番分隊は機関銃座の側面に回り込め!」
分隊長の鋭い号令とともに、九九式軽機関銃が二脚を瓦礫に固定され、軽快な断続音を奏で始めた。
タタタタタタタッ! タタタタッ!
正確無比な抑え込みの点射が、生き残ったソヴィエト兵の頭上を奪う。その隙を突いて、一〇〇式機関短銃を持った歩兵たちが跳びだした。
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孤立した赤軍の崩壊 ―― 容赦なき掃討戦
通信を絶たれ、友軍からの救援も絶望的となったソヴィエト軍の残存兵たちに、かつての精強さは残っていなかった。目の前に立ちはだかるのは、圧倒的な火力を背負い、寸分の隙もなく連携して迫りくる日本軍の「システム化された破壊」であった。
「ウラー……っ!」
半ば狂乱したソヴィエト兵の一人が、手榴弾の安全ピンを抜きながら塹壕から飛び出してきた。しかし、彼が腕を振り上げるより早く、戦車の影から躍り出た日本軍歩兵の一〇〇式機関短銃が火を噴く。
ズババババッ!
9mm弾の連射がソヴィエト兵の胸元を深く穿ち、崩れ落ちた彼の弾元で手榴弾が炸裂。自らの爆風で陣地の一角が吹き飛んだ。
「捕虜は取るな! この進撃の足を止めるな!」
通信が不通となり、指揮系統が完全不全に陥ったソヴィエト軍の拠点は、個々の抵抗も虚しく、わずか十数分のうちに「面」で圧殺されていった。
手を挙げて投降の姿勢を見せようとしたソヴィエト兵もいたが、ハバロフスクの爆撃戦と通化要塞での同胞の苦闘を知る機動歩兵たちの引き金が緩むことはなかった。殺気を込めた銃声が弾け、敗残兵たちは次々と泥と煤にまみれて崩れ落ちていく。
「全領域の敵残存勢力、排除完了!」
最後の一発の銃声が静まり返ると、周囲にはただ、燃え上がるソヴィエト軍の破壊されたトラックから立ち上る黒煙と、焦げ付いた鉄の臭気だけが漂っていた。
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ハルビンへ ――快速機甲部隊の旋風
「進撃再開! 乗り遅れるな!」
志摩大尉がキューポラから叫ぶと、歩兵たちは手際よく空薬莢を蹴り飛ばし、再び武装トラックの荷台へと飛び乗った。エンジンが再び轟音を上げ、黒い排気ガスが9月の乾いた風に流されていく。
東清鉄道の線路は、遥か西の空――赤く染まり始めた夕闇の向こうにあるハルビンへと、どこまでも真っ直ぐに伸びている。
ハルビンでは、上空から舞い降りた安藤大佐の陸軍挺進団と、加藤中佐率いる海軍横一特の猛者たちが、今この瞬間も敵の心臓部を締め上げているはずであった。
「エンジン全開! ハルビンで空挺の猛者たちに追いつくぞ!」
新九七式中戦車が再びキャタピラで瓦礫を踏みつぶし、大地を激しく揺らしながら加速する。
ウラジオストクから放たれたこの鉄の旋風は、あらゆる障害を粉砕し、ソヴィエト軍の極東派遣軍を完全なる破滅へと追い詰めながら、ハルビンへの一本道を突き進んでいくのだった。
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《帰還艦隊》航空隊の急襲
上空では、ウラジオストク(ヴォズドヴィジェンカ)基地から絶え間なく飛来する圧倒的な航空軍が、地上の進撃路における安全を完璧に担保していた。
地上で新九七式中戦車や機動歩兵が泥を跳ね上げて爆走するその数キロ先――。空の最前線を切り拓いていたのは、新・連合艦隊(帰還艦隊)から発進した強力な艦載機攻撃隊であった。
25番(250kg爆弾)の爆撃 ―― 流星改の急降下
雲間を切り裂いて高度を下げてきたのは、新連合艦隊の誇る艦上攻撃機《流星改》の機群であった。
その逆逆鴎翼の腹の下、そして両翼のハードポイントには、高威力爆薬を充填した「25番(250kg爆弾)」がずらりと懸吊されている。本来なら魚雷や大型爆弾を1発運ぶ超大型艦攻でありながら、強力なエンジンと強固な機体構造を活かし、対地支援用の大量の爆弾を過不足なく翼下に抱え込んでいた。
「前方3キロ、鉄道沿いの林の中にソヴィエト軍の伏撃陣地! 76.2mm対戦車砲および重機関銃多数!」
高度一万メートルから先行していた高度偵察機《彩雲》からの通信が、リアルタイムで流星改隊の搭乗員たちの耳に届く。
「全機、急降下爆撃の体勢に入れ! 敵の伏撃陣地を根こそぎ粉砕する!」
流星改の指揮官機が翼を揺らすと、十数機の流星が一斉に機首を下げた。風切り音が甲高い咆哮へと変わり、時速600キロを超える猛烈な速度でソヴィエト軍の頭上へと急降下していく。
ソヴィエト軍の陣地からは、自車を隠していた偽装網を跳ね飛ばし、必死に12.7mm対空重機関銃が火を噴いた。しかし、流星改はびくともしない。
「投下ッ!」
高度数百メートル、ソヴィエト兵の青ざめた顔がはっきりと視認できる距離で、流星改の翼下から大量の25番が一斉に解き放たれた。
――ドガァァァァァンッ!!
爆風が大気を激しく歪め、林そのものが根こそぎ吹き飛ぶ。爆弾の衝撃波は、浅く掘られた塹壕を押し潰し、潜んでいたソヴィエト軍の対戦車砲を丸ごと鉄くずの塊に変えた。250キロ爆弾の持つ圧倒的な質量と破壊力は、ソヴィエト兵の肉体を爆風の圧力で一瞬にして小片へと分解し、黒い土煙とともに空へと舞い上げさせた。
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空の絶対優位 ―― 烈風改・零戦六十四型改の戦闘爆撃
流星改の猛打に続いて空を舞い降りたのは、直衛と制空を担う最鋭戦闘機隊――《烈風改》および《零戦六十四型改》の編隊であった。
ソヴィエト軍の残存航空力が地に落ちた今、この空の至高の覇者たちは単なる制空戦闘機にとどまらず、両翼に「25番」をそれぞれ2発懸吊した強力な「戦闘爆撃機」として地上を恐怖に陥れていた。
「流星隊が撃ち漏らした砲兵陣地がある! 零戦隊、突入するぞ!」
凶暴なまでの出力を秘めた「金星七一型エンジン」の重厚な重低音を響かせ、零戦六十四型改が軽快な機動力で反転する。
両翼から解き放たれた25番爆弾が、鉄道の盛土の陰に隠れていたソヴィエト軍の野砲陣地に正確に吸い込まれた。直後に大爆発が巻き起こり、弾薬箱が次々と連鎖誘爆を起こして真っ赤な火柱を上げる。
続いて高度を下げてきた重戦闘機・烈風改は、爆弾を投下し終えるやいなや、低空を旋回しながら翼内の20ミリ機関砲を一斉に斉射した。
ズバババババババッ!!!
地面を穿ち、土煙の帯を作り出す凄まじい掃射。逃げ惑うソヴィエト軍の輸送トラックや装甲車は、20ミリ弾の直撃を受けて燃料タンクが爆発し、炎を上げる鉄の棺桶へと変わり果てた。
ソヴィエト軍に反撃の猶予など一秒たりとも与えられない。上空からの「死の雨」によって、伏撃部隊も、砲兵陣地も、日本軍の地上部隊の視界に入る前に、物理的にこの世から消滅させられていった。
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敗走の足跡 ―― 怒涛の西進
「地上部隊、予定地点を通過。空域の敵影なし。──繰り返す、前方空域の完全安全を確保」
航空部隊からのノイズ混じりの爽快な無線報告を受け、新九七式中戦車を先頭とする陸上機甲部隊は、一切速度を落とすことなく鉄路沿いを猛スピードで北上・西進し続けた。
車窓やキューポラから見える景色は、かつて世界を震撼させたソヴィエト赤軍の惨めな末路そのものであった。
路傍には、艦載機隊の25番爆弾によってひっくり返り、黒煙を上げて燃えさかるソヴィエト軍のZIS-5トラック。
砲身が妙な方向に折れ曲がり、周囲に肉片と化した砲兵たちの遺体が散乱する放棄されたZiS-3野砲。
そして、爆風によって吹き飛ばされ、泥水の中で無残に転がっているソヴィエト兵の鉄帽や瓦礫の山――。
それは、ハバロフスクからハルビン、そしてこの東清鉄道沿線に至るまで、完全に空の支配権を奪われ、退路を断たれて敗走するソヴィエト軍の悲惨な「死の足跡」そのものであった。
「空の援護は完璧だ! このままハルビンまで、止まらずに突き進めーっ!」
新九七式中戦車の排気音が満州の空に轟き、キャタピラが燃えるソヴィエト軍の残破を豪快に踏み荒らしながら、陸と空が一つとなった「完全なる殲滅戦」の鉄槌は、どこまでも力強く振り下ろされ続けていた。
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鉄道 ―― 満州平原を穿つ蒸気の巨人
爆撃部隊と快速部隊による怒涛の掃討戦と並行し、後方では鉄道工兵部隊が即座に路盤の点検と補修作業に入っていた。
ソヴィエト軍が撤退時に画策していた「焦土作戦」――線路の爆破や橋梁の途絶は、新九七式中戦車と機動歩兵による電撃的な突進によってことごとく阻止されていた。
ハルビンまでの主要沿線における「安全」が完全に確認されるや否や、後方の集結地では北方防衛開放軍・北方軍本隊の本格的な大移動が開始された。
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ウラジオストク駅の咆哮
ウラジオストク駅の長大なプラットホームには、黒く重厚な鋼鉄の躯体を震わせ、もうもうと白い蒸気を吹き上げる軍用列車群が居並んでいた。
「第一梯団、全員乗車完了! 扉、閉め!」
操車係の怒号と笛の音が響き渡る。
泥と硝煙に塗れた防寒服に身を包んだ兵士たちは、黙々と無蓋車や有蓋車に乗り込み、九九式短小銃の銃身を膝の間に立てて静かに腰を下ろした。彼ら歩兵本隊がハルビンへ到達したとき、これまでの「点での強襲占領」は、二度と崩れぬ「面での確実な統治と包囲」へと完全昇華するのである。
「全機、火入れ完了! 出発準備、整いました!」
機関区からの連絡を受け、ホームに立つ榎本大佐が時計の針に視線を落とした後、伊勢神忠雄中将のもとへ素早く歩み寄り、敬礼を捧げた。
「閣下、先頭の機動部隊より『ハルビンまでの鉄路、異状なし』の連絡が入りました。第一〜第五列車、いつでも発車可能です」
「うむ。通遼の包囲網を完成させるぞ。全列車、進撃を開始せよ」
伊勢神中将が重厚に頷き、進発の最終許可を下した。
「――全機、汽笛鳴らせッ!」
操車係の号令一発、プラットホームに連なる十数機のデカポッド(軸配置1-5-0/イェア型重機関車)が一斉に高圧の汽笛を吹き鳴らした。
「ヴォオオォォォォォォン!!!!」
大気を激しく震わせ、駅舎のガラス窓をガタガタと打ち鳴らすその暴力的なまでの咆哮。
ウラジオストクの山々に何度も反響したその重低音は、広大な満州平原の奥深く、ハルビンへ、そして通遼へ向けて「日本の鉄槌」が下されることを告げる轟音であった。
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炎と鋼鉄
「準備はいいか、山井!」
先頭に立つデカポッド重機関車の運転台。徳田機関士が窓から身を乗り出して前方の信号を確認し、巨体を揺らすレバーへ分厚い手袋を嵌めた手をかけた。
機関助士の山井が、額の汗を拭いながら投炭スコップを握り直し、不敵な笑みを浮かべて返す。
「いつでもいけます、徳田さん! 進撃の合図とともに、一気に圧力を上げますよ。……スターリンへの『逆向きの特急券』です。最高速度で、地獄の最前列まで届けてやりましょう!」
投炭口の重い鉄扉が開くと、眩いばかりの紅蓮の炎が吹き出出し、二人の顔を真っ赤に照らし出した。
山井が熟練の手さばきで石炭を火室へ投げ込むたび、ボイラーの圧力が極限まで跳ね上がる。石炭が燃え盛る火室の灼熱は、ウラジオストクの空気を一瞬で真っ赤に焼き焦がすほどだった。
ソヴィエトから鹵獲・改修した質実剛健なE型機関車の底力と、アメリカから供与され洗練されたデカポッドの怪物的な出力。
二種類の鉄の巨人は、吐き出す濃密な蒸気のカーテンを豪快に切り裂き、巨大な動輪を「ガタゴト、ガタンゴト!」と激しく回転させ始めた。
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ハルビンへ
「シュシューッ! ダンッジョ、 ダンジョ、シュ、シュ、シュ、シ、シ、シ」
重厚なシリンダー音とともに、長大きわまる軍用列車が滑るように動き出す。
1編成、また1編成。列をなした鉄の巨人たちが、満州の鉄路へと解き放たれていく。
シベリアから吹き抜ける風は、秋の深まりとともに日毎に冷たさを増していた。
しかし、いま満州の広大な平原を揺らしているのは、冬の訪れではない。
踏み鳴らされる日本軍の凄まじい軍靴の音。
新九七式中戦車の無限軌道が大地に刻み込む深い溝。
そして、無数の兵員と重火器を載せてひた走る列車の、地鳴りのような大振動――。
ハルビンを奪還し、北から、東から、そして南から。
掛井大将と武田総参謀長が呉の地で描いた巨大な図面通り、赤軍を呑み込むための完全なる三軍統合包囲網が、いま通遼という名の軸において、カチリと音を立てて完成しようとしていた。




