シベリア鉄道大爆破 空軍戦略爆撃隊出撃 4-11 報復を受けるソヴィエト軍の兵士
ハルビン占領
ハルビン市街地では、主要な官公庁の制圧が完了していた。駅のホームには、ねじ切れた通信線が垂れ下がり、ソヴィエト兵の遺棄した装備が散乱している。陸海軍の空挺兵たちは、互いの無事を確認し合う暇もなく、市街の外縁部に防御陣地を構築し始めた。シベリアからの増援ルートは、上空からの爆撃によって完全に寸断された。
ハルビンの街には、乾いた秋風が吹き抜け、爆撃で焼けた家屋の臭いだけが漂っている。道路には刻まれた戦車の無限軌道の跡と、日本兵の無反動砲によって破壊された戦車とソヴィエト兵の躯と無数の薬莢だけが戦闘の激しさを物語っていた。
ハルビンは、落ちた。
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ハルビン市街から組織的な抵抗が消えたのは、降下開始から数時間が経過した頃だった。爆撃で剥離した外壁や、黒焦げになった軍用車両が転がる路上に、静寂が戻り始めた。
閉鎖からの解放
地下室や倉庫に身を潜めていた日本人居留民たちが、おそるおそる地上へ姿を現した。
彼らの服は汚れ、顔は恐怖と栄養不足で土気色をしていた。ソヴィエト軍による占領下で、彼らが受けた扱いは過酷を極めていた。家財は奪われ、男たちは正当な理由なく暴行を受け、女たちは路地裏や自宅で陵辱の対象となっていた。
「日本軍だ……。本当に来てくれたのか」
痩せこけた老人が、瓦礫の中に立つ海軍陸戦隊の紺色の制服を見て、地面に膝をついた。あちこちから、嗚咽とも叫びともつかない声が上がった。
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敗残兵
横一特と挺進旅団の兵士たちは、生き残ったソヴィエト兵を建物から引きずり出した。
武器を取り上げられ、ベルトを外されたソヴィエト兵たちは、広場に一列に跪かされた。かつての傲慢な態度は消え、一様に怯えを含んだ目で周囲を見回している。
日本軍の指揮官たちは、捕虜の処遇を検討していたが、そこへ居留民たちが殺到した。
「こいつだ! 私の娘を連れて行ったのはこの男だ!」
一人の父親が、顔を腫らしたソヴィエト兵の一人を指さした。続いて、腕を吊った女性や、親を殺された子供たちが、怒りと悲しみに震えながら兵士たちの前に立ち塞がった。現場の空気は急速に殺気立った。軍による統制を、積年の憎悪が上回ろうとしていた。
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《悪鬼羅刹》の義務
「略奪、暴行、そして殺人。これらは戦時国際法以前の罪だ」
現場を指揮していた加藤中佐は、居留民たちの凄惨な証言を聞き、跪くソヴィエト兵たちを見下ろした。本来、捕虜には保護の権利がある。しかし、目の前の市民たちが受けた傷は、紙の上の法律で癒えるものではなかった。
兵士たちが、ソヴィエト兵の背後に銃を構えて並んだ。
武装を解除されたソヴィエト兵の中には、許しを請うて泣き叫ぶ者もいれば、虚空を睨んで黙り込む者もいた。
「撃て」
短い号令とともに、九九式小銃が一斉に火を噴いた。
乾いた銃声がハルビンの石造りの建物に反響し、数名ずつソヴィエト兵が前のめりに倒れていく。かつて市街で暴虐の限りを尽くした者たちが、自分たちの放った銃弾と同じ重さの鉛を受け、地面に転がった。
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静まり返る街
処刑が終わった広場には、火薬の臭いと、重苦しい沈黙が漂った。
日本人たちは、倒れた敵兵の姿を冷めた目で見つめていた。復讐が終わっても、奪われた命や、辱められた尊厳が戻るわけではないことを、誰もが理解していた。
「遺体を片付けろ。衛生兵、負傷した民間人に治療を」
加藤の指示で、兵士たちが動き出す。ハルビンの空には、黒煙がまだ薄くたなびいていた。9月の強い日差しが、血に染まった乾いた土を容赦なく照らし出している。
ソヴィエト兵達の死体は兵士たちの力でいくつかの大きな爆撃痕を利用して、その底に積まれて、重油や瓦礫の中の木材の残骸によって荼毘に付された。
その傍らにはかつてウラジオストクで、念仏を唱えていた一人の兵士が祈り共に見送った。
兵士たちは、ただ黙々と、次の警戒任務へと戻っていった。




