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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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128/139

シベリア鉄道大爆破 空軍戦略爆撃隊出撃 4-5 ハバロフスク橋 1945年9月23日午前4時30分

ウラジオストク第一飛行場。


1945年9月23日


夜明けの冷え込みが厳しいコンクリートの滑走路、午前4時30分。薄明りの中、三種類の爆撃機が列線をなしている。海軍の一式陸上攻撃機三四型、陸軍の四式重爆撃機「飛龍」、そしてフィリピン戦線で鹵獲され、日の丸を塗り直された、B-17E「フライング・フォートレス」B-24J「リベレーター」。これら混成部隊の任務は、ハバロフスク近郊のアムール川鉄橋の破壊だった。


---


出撃の刻 午前4時30分


一式陸攻の操縦席で、村中大尉は計器盤を見つめていた。火星二一型エンジンの重低音が機体を揺さぶる。


「油圧、正常。回転数、上げます」


副操縦士の報告に無言で頷く。一式陸攻の細長い胴体には、800キロ爆弾が懸吊されていた。隣の滑走路からは、陸軍の「飛龍」が離陸を開始した。二式エンジンの凄まじい排気音が空気を引き裂く。海軍機に比べて防弾装備が厚く、機動性の高い「飛龍」は、この低空侵入任務における中核だった。


「二式エンジン」は、主に第二次世界大戦時の大日本帝国軍用機に搭載された空冷星型エンジンだ。代表的なものに、二式飛行艇などに搭載された三菱製「火星二一型(ハ109)」 や、二式単座戦闘機「鍾馗」に搭載された中島製「ハ5(ハ41/ハ109)」 がある。主に大型機や高速戦闘機向けに開発された。


飛竜に続くのはB-17である。その四発のライト・サイクロンエンジンが奏でる音は、日本機に比べて低く、重い。爆弾搭載量は日本機を凌駕している。


その最後尾にはB-24が続く。R-1830-43・通称ツインワスプエンジンから吹き上がる力はその爆弾槽に積んだ、大量の爆弾を戦地に運ぶ。今回、B-17、B-24は高空からの水平爆撃による制圧を担当していた。


---


越境


編隊は高度3000メートルを維持したまま、北へ向かった。眼下には、シベリアの深い針葉樹林がどこまでも続いている。


「ハバロフスクまであと20分。対空火器に警戒せよ」


無線にノイズが混じる。前回の徹底的な攻撃でソ連軍の迎撃機は上がってくる心配はほぼ無いが、ソ連の援軍が来ていたらと考えると油断はしない。アムール川が近づくにつれ、東から太陽が上がってくる。村中の操縦する一式陸攻は、その長い翼を微細に震わせながら気流を切り裂く。防弾燃料タンクを装備しているとはいえ、油断はしない。乗組員たちの緊張が、狭い機内に充満していた。



---


攻撃開始


ハバロフスク鉄橋が見えた。アムール川の黒い水面に、巨大な鋼鉄の影が横たわっている。ソ連側も既に編隊を察知しており、橋の両岸から12.7mm機銃と76.2mm高射砲が火を噴いた。ハバロフスク鉄橋(正式名称:ハバロフスク橋)は、ロシア極東のアムール川に架かるシベリア鉄道の要衝だ。1916年の完成時には「アムールの奇跡」と称えられ、シベリア鉄道の全線開通を支えた歴史的建造物だ。



「爆撃準備、扉開!」


まず、高空のB-17、B-24が初弾を投下した。


爆撃手はアメリカ製のノルデン爆撃照準器を覗き込み、計算通りにトリガーを引く。数秒後、橋のたもとの操車場で巨大な爆炎が上がった。土煙が数百メートルまで舞い上がり、敵の対空砲火が一瞬怯む。


その隙を突き、低空から「飛龍」が突っ込んだ。


陸軍の精鋭たちは、弾幕の中を縫うようにして橋梁に肉薄する。一機が主翼を被弾し黒煙を噴いたが、姿勢を崩さず、橋脚の中央部を狙って500キロ爆弾を放った。


「一番、二番、投下!」


村中の一式陸攻も続いた。


照準器の中に、鋼鉄のトラス構造が拡大される。衝撃。機体がふわりと軽くなった。


後方の旋回機銃手から、絶叫に近い報告が飛ぶ。



「命中! 橋脚、崩れます!」


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離脱


背後で、アムール川を跨ぐ巨大な鉄の背骨が、ゆっくりと折れ曲がっていくのが見えた。海回りのシベリア鉄道の動脈が断たれた瞬間だった。


「全機、反転。全速で離脱する」


村中はスロットルを押し込んだ。


高度を下げ、地形に沿って飛行する。B-17、B-24は既に雲の中へと姿を消し、数機の「飛龍」が護衛のように一式陸攻の脇を固める。



ハバロフスク橋の付近の操車場の方角からは、未だに黒煙が上がり続けている。後は基地まで帰還するだけだ。帰還までの十分な燃料の残量がある、村中の手元には、確かな手応えだけが残っていた。

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