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待たせたな!  作者: 僧籍
第四部 北方防衛開放戦線

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116/119

ウラジオストク上陸戦 3-9 兵站線破壊計画 1945年9月18日

挿絵(By みてみん)


第十二航空軍兵站遮断計画


1945年9月18日、夜明け前の北方本国軍司令部。高瀬仁志少将は、白熱灯の下で広大な満洲の地図を凝視していた。入室した佐伯中佐は、血の跡一つない清潔なバインダーを机に置き、無機質な敬礼を捧げた。


「……終わったか」


高瀬の問いに、佐伯は感情を排した声で応じた。


「はい。両名とも、実によく語ってくれました」


---


剥離された赤軍の全容


佐伯が淡々と読み上げる報告は、ソヴィエト軍が隠し持っていた最後のカードをすべて曝け出すものであった。侵攻の終着点、第一・第二極東軍、およびザバイカル方面軍の最終目標は、大連・奉天を経て朝鮮半島北部で合流することにある。すでに第25軍チスチャコフ将軍の別動隊が沿海州から南下し、関東軍の防衛拠点以外の主要部は占領下にある。


兵站の限界 

ソヴィエト軍の攻勢限界はあと20日。弾薬、燃料、食糧ともに供給が追いついておらず、特に燃料の欠乏が致命的となっている。


スターリンの最終命令

「11月15日までに満洲全土を制圧せよ」


高瀬の視線が地図上を這う。ソヴィエト軍の進撃速度は驚異的だが、それは同時に、補給線という細い糸が限界まで引き伸ばされていることを意味していた。


---


第十二航空軍の急所


高瀬の思考は、ザバイカル方面軍を援護する第12航空軍へと集中した。1,000機を超える赤い星の群れ。しかし、その圧倒的な物量の裏側には、致命的な脆弱性が潜んでいた。


「……1,000キロ以上の砂漠と山を越えてきた第12航空軍。彼らの強さは、同時に『極限まで張り詰めた糸』でもある」


高瀬は傍らの定規を地図上の野戦飛行場に当てた。脆弱な野戦滑走路、進撃速度を優先したため、敵の飛行場は防空設備が皆無に等しい急造品ばかりである。空輸依存の燃料供給、大重量の航空燃料の大部分を、Li-2輸送機による空輸に頼っている。この空の生命線を断てば、1,000機の航空機は地上に繋がれた鉄屑に過ぎない。


しかし、ソヴィエト軍鉄道部隊による満州を横断する東清鉄道の広軌化と関東軍が撤退時に破壊した路線の復旧状態によっては兵站の主流が航空機ではなく、鉄道に移行している可能性があるので情報収集を急がせている。


---


カウンター・ストライク 空からの兵站切断


高瀬は決断を下した。正面から敵航空部隊とぶつかるのではなく、その「兵站」を狙い撃ちにする作戦である。


「ウラジオストクの航空基地から、一式陸上攻撃機、飛龍、そして鹵獲・再整備したB-17、B-24を飛ばす。目標は南満洲鉄道の結節点、ハルビン。ここを叩き、占領する」


ハルビンが陥落すれば、ソヴィエト軍の鉄道輸送は麻痺する。さらに、佐伯が聞き出した座標を基に、西から進撃するザバイカル方面軍の前線燃料集積所をピンポイントで爆撃する。


「陸と空の補給を絶てば、あの怪物のような戦車師団も、満洲の平原で動けなくなる」


---


挺身攻撃の布石


「よし、南方軍の航空連絡参謀、桜木徹少佐に協力を依頼しろ。挺身攻撃隊の編成を急がせる」


高瀬の言葉に、佐伯が静かに頷く。佐伯が手に入れた「野戦飛行場の座標」という名のメスが、いまや巨大な赤軍の肉体を切り刻む準備を整えていた。これは、大連・旅順から上陸を開始する南方軍本隊を援護するための、戦略的な助攻である。日本軍の重爆撃機隊がハルビンの空を焼き、ザバイカルの生命線を断ち切るための飛行を開始しようとしていた。

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