ウラジオストク上陸戦 3-6 ウラジオストク制圧と断罪
大陸救援作戦開始後の最初の上陸作戦。新連合艦隊のウラジオストク攻撃に合わせて、北方防衛開放軍北方軍の司令部、陸上戦力部隊を乗せた上陸艦艇、輸送艦隊は艦隊に合流し、ウラジオストクへ上陸を開始する。
ウラジオストク港は、事前の艦砲射撃によって地形そのものが変貌していた。立ち込める黒煙と、鉄と肉の焼ける臭気が支配する瓦礫の街に、上陸作戦司令官・伊勢神忠雄中将と参謀長・高瀬仁志少将が率いる揚陸艦隊が接岸を開始した。
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101号型輸送艦が、事前の艦砲射撃によって地形の歪んだ砂浜に乗り上げ、金属音を響かせながらランプドアを降ろした。ウラジオストク港に渦巻く黒煙の向こうから、海の潮風と、硝煙、そして消し炭と化した人間の焦げ臭い風が吹きつける。
「全車、上陸! 敵の沿岸阻止線を粉砕せよ!」
揚陸甲板から、エンジンの重厚な咆哮が湧き上がった。最初に砂浜の土を蹴り、瓦礫の街路へと躍り出たのは、統合型一式中戦車の車列だった。
かつての脆弱な鋲留め装甲は、本国の特殊冶金技術の刷新によって生み出された帰還鋼の装甲板を全溶接構造へと生まれ変わっている。避弾経始(傾斜装甲)を取り入れた低いシルエットは、従来の日本戦車とは一線を画す威容を誇っていた。
「前方、崩壊した倉庫の陰に敵対戦車砲! 距離四〇〇!」
車長がキューポラから身を乗り出し、怒号をあげる。
ソヴィエト軍の残存兵が、必死の形相で76mm野砲をこちらへ向けようとしていた。
「目標、敵対戦車砲! 榴弾、装填!」
砲手の迅速な操作により、長砲身の主砲が極めて滑らかに旋回し、ソヴィエト軍の陣地を捉えた。
対地艦砲射撃の衝撃波で激しく波打つアスファルトを踏み越えながら、一式中戦車は前進、停止し砲撃を開始した。
――ズガァァンッ!
マズルブレーキから凄まじい衝撃波を放ち、長砲身から放たれた榴弾が放たれた。
砲弾はソヴィエト軍の76mm野砲を命中。直後に防弾土嚢と砲兵たちを巻き込んで大爆発を起こし、一瞬にしてその存在を肉片と鉄屑の山へと変えた。
すぐさま別のビルから放たれたソヴィエト軍の対戦車ライフル(PTRD-41)の銃弾が、一式中戦車に命中した。カン、カンと金属音が響くが、刷新された特殊装甲はかすり傷程度でその衝撃を弾き返す。
「無駄だ。我々の装甲は、もうあの頃のものではない!」
操縦士がアクセルを踏み込む。
十ニ気筒のディーゼルエンジンが怒涛の馬力を絞り出し、三十トン近い鋼鉄の巨躯が、瓦礫のバリケードを塵芥のように踏み潰して進撃していった。
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一式中戦車が切り開いた大路の左右、崩落しかけた路地裏や細街路へは、統合型九七式中戦車の群れが電撃的な速度で侵入していった。対空機関砲を搭載した砲塔、頑強な傾斜防弾板で覆ったその車体は、近接火力支援の要だ。
「二階の窓、敵の機関銃陣地だ! 歩兵を近づけるな!」
瓦礫の死角から、ソヴィエト軍のデグチャレフ重機関銃が猛烈な銃撃を浴びせてくる。進撃する歩兵たちの頭上が鉄の雨で抑え込まれた。
「掃討しろ!」
新型九七式中戦車の砲塔のニ〇ミリ連装機関砲が咆哮した。
ドババババババッ!!!
すさまじい連射速度で放たれた重連装弾頭が、ビルの二階の窓枠ごと、コンクリートの壁を容赦なく削り取っていく。弾丸は壁をぶち抜いて内部で炸裂し、潜んでいたソヴィエト兵を肉の飛沫に変えて室内を赤く染め上げた。さらに対戦車速射砲塔型一式機動四十七ミリ速射砲を搭載したの新型九七式中戦車から一式榴弾が発射され、別の廃墟の窓を突き破り、内部の潜伏していたソヴィエト兵たちをひき肉に変える。
「ウラー!」と叫びながら、手榴弾を抱えて自爆特攻を試みようと飛び出してきたソヴィエト兵の群れは、随伴している歩兵と搭載された機銃による掃射で、辿り着く前にハチの巣にされて崩れ落ちていった。
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前線指揮車型統合型九七式中戦車から前線指揮官がさらに命令をくだす。
「装甲車両に続け! 一区画ずつ確実に沈黙させろ!」
指揮車両の背後から、新設計の「統合一型兵員輸送トラック」で迅速に最前線へ展開した歩兵たちが、一糸乱れぬ動きで散開した。
彼らが手にするのは、堅牢な九九式短小銃、そして近接戦闘用に配備された一〇〇式機関短銃である。
彼らはもはや、かつての「精神力」だけに頼る歩兵ではなかった。
航空隊、艦砲、そして目の前の戦車・装甲車と緊密に無線連携を取り合い、機械的な組織力で敵を追い詰めていく。
「南側の瓦礫に敵の狙撃手!目的になる建物の特徴と座標送れ、爆撃を要請する!」
歩兵部隊が無線機で指示を送ると、新連合艦隊の流星改が狙撃手ごと建物一棟を爆撃して消滅させた。徹底的に叩きのめされ、煤と血にまみれたソヴィエト兵が、崩れた防空壕から両手を挙げて這い出てきた。
「投降する! 撃たないでくれ(ズダユース)!」
怯えるソヴィエト兵の瞳には、かつて自分たちが満州で蹂躙した東洋人たちが、今や圧倒的な鉄量と冷徹な軍隊となって目の前に立ちはだかっている絶望が映っていた。
だが、日本軍の歩兵たちは、その差し出された手を一瞥しただけだった。
彼らの耳には、満州の各地で引き裂かれた同胞たちの悲鳴が、今もなお響いている。
「……前進。敵の息の根を止めろ」
小隊長の冷徹な命令。
次の瞬間、一〇〇式機関短銃の鋭い銃声が響き、投降を求めたソヴィエト兵は胸を撃ち抜かれて泥水の中へと崩れ落ちた。敗残兵を収容する手間も、捕虜に分ける食料も、この「逆・電撃戦」には存在しない。
「敵の残存戦力、すべて排除! 沿岸第一地区の確保完了!」
ウラジオストクの市街地全域に、重厚な一式中戦車のキャタピラが瓦礫を粉砕する金属音が不気味に響き渡る。伊勢神中将と高瀬少将が描いた勝利の軌跡の通り、日本軍はただの「一歩」も止まることなく、赤く染まったウラジオストクの街を蹂躙し、内陸へとその鋭い牙を突き進めていくのだった。
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要塞の陥落と「赤」の粛清
かつて「極東の不落の要塞」と謳われた都市は、いまや日本軍の完全な管理下に置かれた。街の要所には日章旗が掲げられ、生き残った司令部要員や政治将校は次々と拘束された。市街地の掃討と同時に、ソヴィエト軍による略奪や虐殺に関与した者たちの「粛清」が開始された。法的手続きを排した即決の処分は、数ヶ月にわたって繰り返された彼らの暴挙に対する、物理的な返答であった。
ウラジオストク郊外に設営された臨時司令部の一角。冷たいコンクリートの壁に囲まれた奥の部屋で、捕らえられた第1極東方面軍司令官、キリル・メレツコフ元帥の絶叫が響き渡った。
「こんな拷問、やり方はジュネーブ条約や国際法上許されない! お前たちを今度、我らが拘束した暁には、この百倍の苦痛を与えてやる!」
椅子に拘束され、血に塗れた顔を上げたメレツコフに対し、尋問官は感情を排した声で答えた。
「すでに日本は、お前たちの言う国際法という枠組みにはとらわれない。……問おう。お前たちは、助けてくれと懇願した日本の民間人や、傷ついた兵士に何をした?」
尋問官はメレツコフの眼前に、奪い取られた軍旗と、蹂躙された避難民の記録写真を突きつけた。
「我らは、日本に仇なすお前らという悪鬼を食らう、羅刹である。慈悲を乞う相手を間違えるな」
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情報の剥離 通遼への布石
その日を境に、尋問はさらに苛烈を極めた。生死を問わない徹底的な追及により、メレツコフら幕僚の口からは、ソヴィエト軍の満洲全域における作戦計画、兵力配置、そして予備部隊の移動経路が次々と剥き出しにされていった。
得られた情報は直ちに総司令官の掛井大将、そして武田総参謀長のもとへと電信で飛ばされた。
ウラジオストクの占領は、単なる拠点の奪還ではない。
それは、大陸に展開するソヴィエト軍を「通遼」という名の巨大な袋小路へ追い込み、共産軍という存在そのものを地上から抹消するための、最初の決定的な一撃となったのである。
粛清されたソヴィエト兵だった物は纏めれれて、基地に残された重油で燃やされた、その黒い煙ははるか遠くからも見えた。
その傍らで一人の兵が数珠を手に掛け、念仏をとなえていた。




