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OCTAGON  作者: 海内裏


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第六話:交差する刃、新たな道

「次、私だね」

小平萌香は、手にした大刀と短刀のグリップを握り直した。特訓後初とも言える実戦を迎える萌香。二刀流など相手にしたことのない星ヶ丘高校の部員相手では、まともな練習にもならなかった。期待を胸に試合に臨む。

「第五試合、始め!」

しかし、試合が始まるとじりじりとポイントを取られる萌香。

(この人、二刀流を相手に戦い慣れてる……)

太刀を弾かれ、短刀の隙をつく。冷徹なブザーが鳴り響き、萌香の負けが告げられた。

「何もできなかった」

落ち込む萌香。ステージを降りた萌香は、手元に残った二つの刃を見つめながら、ぽつりと呟いた。形だけの模倣から脱却し、正しい理合を学んだはずだったが、金佐三鹿の経験値の前には手も足も出なかった。

「仇は任せて」肩を叩き羽美が立ち上がる。

高知はベンチで自分の掌を見つめたまま、試合など興味はないようだった。

【第七試合:星ヶ丘・亘理羽美 vs 浜南大学付属・金佐三鹿】

試合の合図、様子見のエースに一気に間合いを詰める羽美。——世界が静止する。羽美の代名詞である究極の抜刀アクション。

...シャキィィィン!!!!

一瞬で勝負が決まる。羽美の木刀は完璧な角度とスピードで、その胸元へと叩き込まれていた。

「一本! 勝者、星ヶ丘高校・亘理羽美!」

喜ぶ羽美に、背中でエースの金佐が悔しがる。無名の星ヶ丘高校部員の得意技など知る由もない、そして、その研ぎ澄まされた技。自分の油断に悔しがる金佐にキャプテンが声をかける。

「今回は仕方ない、次は負けるなよ」

「もちろんです」フッと笑い、羽美を睨む。

浜南大学付属高校との激闘を終え、星ヶ丘高校の部室に戻った一行。

「名門を相手に、新入生があれだけの大健闘を見せてくれたんだ。誇っていいぞ!」

副部長の今井がタブレットを片手に、全員のスタッツを振り返りながら温かく健闘を労っていた。

いつの間にか奥羽高知と、部長の五代の姿が消えていた。

小平萌香は悔しさをバネにするように、早くも真新しい樹脂製短刀を手に二刀流の自主練へと励み始めていた。


――浜南大学付属高校の三年生キャプテン。彼は決して、異次元の天才的な実力があったと言えるわけではなかった。

だが、初見のはずの羽美の神速の抜刀を、名門のプライドと執念、そして徹底した対居合いの防御姿勢で見事に凌ぎきってみせたのだ。抜刀を破られたその後、羽美は一度も完璧な一本を取ることができなかった。最終的には10点減点方式の、わずか1ポイントという最小の差で、キャプテンは羽美を泥臭く下した。

羽美には、抜刀しかなかった。相手を瞬殺する一撃必殺の刃。しかし、それを対策された瞬間に、彼女の手札は尽きる。プロのレーダーが光るサムライ・コロシアムを見据えるには、その戦術はあまりにも細すぎたのだ。

夕闇が迫る校舎裏。冷たい風が吹き抜ける中、五代は高知の前に立ち、深く頭を下げていた。

「頼む、奥羽。羽美に、お前のあのステップや、BUSHIDOの格闘技アクションの理合を指導してやってくれないか」

高知は、頭を下げる先輩を冷ややかな目で見つめ、即座に首を振った。

「断ります。そんなことをしている暇は、俺にはありません。もっとスタミナをつけないと……俺にスタミナさえあれば、あの試合だって勝てたはずだ……」

悔しさに拳を握りしめる高知を見つめ、五代はふう、と一息つくと、茜色に染まる空を仰いだ。

「……わかった。なら、萌香の練習相手を頼む。桐生さんから四六時中しごかれている萌香のスタミナは、もうプロ並みだぞ!」

その言葉に、高知の眉がピクリと跳ねた。プロ並みのスタミナを持つ、二刀流の怪物。その豊富な運動量に泥臭く食らいつき、実戦形式で凌ぎ合えば、自らのスタミナ不足を解消できる。高知の口元に、ギラリとした不敵な笑みが浮かんだ。

「……いいですよ。やってやります」

五代はもう一つの行動を起こす。彼は隣町にあるサムライ部用品店へと走り、元プロの武道具店店主・桐生陣の前で、再び深々と頭を下げていた。

「お願いします、桐生さん! 萌香だけでなく、羽美や新入生たちの指導もお願いできませんか!」

自分のプライドなどとうにない。万年予選落ちの自分にできるのは、この泥をすべて被ってでも、後輩たちに最高の環境を用意することだけだった。五代が頭を下げる姿に、桐生は困ったように頭を掻きむしると、フッと優しく笑った。

「頭を上げてくれ、五代くん。……若い君たちの剥き出しのエネルギーを見ていたらね、僕の方こそ、忘れかけていた青春を思い出させてもらったよ。お礼を言いたいのは、こちらの方さ」

桐生は五代の熱い願いを快諾した。

プロの壁にぶつかり、挫折を知る元サムライが、星ヶ丘の熱量に火を灯された瞬間だった。

それぞれ新たな練習メニューへ気持ちを新たに気を引き締める。凸凹だった10人のサムライたちは、4億円の夢が動く公式リーグの頂点へ向け、固く気を引き締め直すのだった。

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