Parallel End-7
「草食動物」
――お別れの時、横になったまま挨拶する人がいますか……相変わらずですね、レオナさん。
「……そこは俺の自由だろうが。それにしても遅い、道草食ってんじゃねえぞ。あと少しで眠るところだった」
「シッシッシ。レオナさん、昨晩眠れなかったんっスよ。どうやら、監督生さんとのお別れが悲しいみたいで。寝不足なんですよ」
「マジでうるせえ、ラギー。購買のパンでも買ってこいよ」
「それはさすがに嫌ですよ。監督生さんとのお別れの挨拶なんですし、そんなくだらない野暮用やりません。消化不良で終わらせませんよ」
「ふん……」
「えーと、監督生さん……改めてこう対峙すると面映ゆいものですね。昨日、寝る前云いたいことや伝えたいことを沢山考えていたんだけどな。いざ、その場面に直面すると、ちょっと言葉が出てこないっス」
――ラギーさん。
「監督生さんとの初めての出会いは何だろう。食堂のパン争奪戦だったかな、マジフト大会だったかな。一番最初の出会いはよく覚えていないっス」
――自分もそうだよ。本当に色んなことがあったから。
「そうっスよね。でも、俺は何度時が巻き戻り繰り返したとしても、敵対しぶつかり合い、そして味方になる。これだけは決して誰にも変えられないものだと思うんです」
――マジフト大会前に見せたパルクール、凄かったです。
「そこはスラム育ちっスから~。あんまり褒められた経験から来る特技じゃないっスけど。ああそれと……監督生さんがいなくなっても、レオナさんの尻を叩いて留年させないよう引っ張るつもりっスよ」
「だからラギー、俺はどのパターンでも一浪していないと何度も……なんでそう思うんだ」
「怠惰だからじゃないっスかね」
「ラギー、お前……ああ……それよりも草食動物だったな……お前は、まあ他の奴らよりもガッツがあるよ」
――正直な話、あなたが一年分の記憶保持の契約を結んでなければ、詰んでいた場面があったかもしれません。
「いや、俺の助けがなくてもお前は持ち前の根性で乗り越えることが出来たと思う。俺とアズールの契約内容はただの保険でな……そこまで期待できるようなものじゃなかった。やはり、お前が主導となって物事や問題の解決に取り組まないと、取り返しのつかない出来事になっていたと思う。今まで繰り返される時の中で人為的に生み出されたオーバーブロット者が出ても、ファントム化した生徒や教師はいないんだ。素直にお前の功績だと述べておくぜ」
――ありがとうございます。
「俺はこれからストレートでこの学園を卒業して、国の安寧に取り掛かろうと思う。まず手始めにカリムと話をしながら、国を潤し良いものにしていく。一人の、国王の一員として働くつもりだ。いつか俺の国にこいよ。路地裏は観光名所は、隠れた屋台や古書を取り扱う出店のある賑わいのあるところになっている事だろう。俺の国の下町風景は、きっと絶え間ない朗らかな笑い声に包まれてるはずだ」
――レオナさん……行きます。いつかきっと、必ず行きます。あなたが治めた国の様子を……微笑みに包まれた国の様子を見せてください。
「ふん、必ず来いよ草食……いや、監督生」
「俺も待ってるっスからね」
――ありがとうございます。
「監督生!」
――ジャック、来ないかと思ってた。
「いやちょっとごたつきがあってな……エースの野郎、子供みてえな我満云いやがって。人の気も知らずに」
――エースと何かあったの?
「いや、なんでもねえ。それよりも、最後の挨拶だよな。お前と行動して一番びっくりしたのは、案外度胸があるところだな。肝っ玉が据わっていると云うか、思い切りがいいと云うか……アズールと不利な契約を交わした時は、さすがに閉口したぜ。こいつ、只者じゃないってな」
――そうかな。やけくそになっていただけかもよ。
「それでもだ。アズールの他にも、運動部の奴らでも見せねえド根性を見せて……俺も負けてられねえなと思ったもんだ。エースやデュース、セベク達と一緒になって勉強会をしたり、マジカメモンスターを撃退したり、色んな出来事があったよな……」
――懐かしいね。
「監督生、また会える時があったら、俺の度肝を抜くようなド根性を見せてくれ。俺はお前を通じて、人の強さは筋肉だけじゃないことを知ったぜ。お前から教わった様々な経験は、学園を卒業してからも役に立つだろうな」
――非常事態がゆえの火事場のクソ力だよ。それと皆さん、再会の為に、握手をしてくれますか?




