Parallel End-4
「オーララ、トリックスターのお出ましだよ、毒の君……ムシュー・姫林檎!」
「随分と待たせるじゃない。でもまあ……どちらかと云うと、会いたくはなかったわ」
「ヴィルサン!?」
「だって、ここで出会うってことは別れを意味しているじゃない。だったら私は、一生監督生から逃げて、逃げて逃げて逃げて、世界の果てまで逃げて、絶対に顔を合わせてあげないの」
「気持ちは分かるけど、それって別れの挨拶もなしに帰られるだけなんじゃ」
「そうよ、エペル。それは何よりも避けなくちゃいけない最悪の事態。会いたくないと思う気持ち、早く顔を見たい矛盾した心持ちの中、私は待っていたのよ」
――みんな……。
「久しぶり……って、何度も云われて飽食気味よね。でも、云わせて。こうしてちゃんと顔を合わせるのは、何十年ぶりになるのかしら?」
――ポムフィオーレの方々とは、縁が薄い所為か協力し合うことは少なかったですよね。
「そうだね、トリックスター。君と私たちの縁は薄い。だけど、あの友情や思い出がなかったことにはならない。巻き戻された事象があったとしても、確かに有った出来事なのさ!」
――ルークさん。
「トリックスター、君との思い出は常に予測不可能で楽しいものだった。ジェットコースターに乗ったかのような激しい緩急を、どう云い現わそうか! 時折、詩を綴る私なのだけれど、敢えて言葉にしないのも一興かもしれないね。君は言葉で云い現わすか、得も知れぬままでいるべきか、どっちがいいと思うかい?」
――ルークさんの判断に任せます。
「詩とか詩人じゃあるめいし、よくそんなごっだ思いつくな。俺ァ、真似できねえだ」
――エペル……あれはルークさん独特の感性だと思うよ。
「そうだよな……ああ、ゴホン。訛りある言葉よりキチンとした言葉の方が、いいカナ……」
――方言があるほうが印象深いけど……。
「いいや、今回ばかりは標準語を使うよ。監督生サン……エヘヘ、僕が思い出すのは故郷で採れた林檎、アップルパイを美味しく食べる姿かな。じっちゃんとばっちゃんも嬉しそうに見ていたよ」
――そう云えば、エペルに故郷に行ったことがあるかな……?
「何もねえ雪国だけど、その土地で育てた寒さに負けない林檎は他にないと云えるほどの美味しさなんだよ。ロストタウンでしか買えないアップルジュースもあるんだけど、それは飲んだことはあるカナ……?」
「私は常に飲用しているわ。美容だの何だの関係なしに、あれほど美味しいリンゴジュースは飲んだことはないわね」
――ええ、ヴィルさんが常飲している……!?
「ええ、そうよ。何か驚くことがあるのかしら。私ぐらい林檎ジュースは飲むわよ……惜しむらくはロストタウンでしか購入できない点ね。何でも揃っていると豪語するサムの店にも置かれていないぐらいなんだもの。卒業したら飲めないじゃない」
――留年したらどうですか?
「リンゴジュースで留年? やめてよ、レオナじゃあるまいし……ああ、いや……アイツの留年はそうじゃないわね。未完成の一年の巻き戻しによる齟齬……時間の皺寄せによる影響で、留年してるだなんてこちら側が勝手に誤認していただけだったのよね」
――レオナさん云ってましたよね。留年したと思われるのは癪だって……。
「そうね。すべての元凶は理事長なんだけど、レオナにはそう思わせる貫禄があるわ。本人には悪いけど」
――本人に云ったら怒られそうですけど……。
「構わないわよ、本人が日頃怠惰なのがいけないのよ」
――そう、なのかな。ああ……ところで、ポムフィオーレの皆さん、自分と別れの握手をしてくれますか?




