Parallel End-3
「あ、兄さん……監督生さんだよ!」
「あ、ウッス……どうも。久しぶり、なのかなコレは……」
――久しぶりかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
「まあ、分からないよね。七〇年分の記憶を取り戻したと云っても、繰り返される一年で出会うこともあれば、出わないこともあったんだから。でも、僕は再会の挨拶として云っておくよ。久し振りだね、監督生氏」
――イデアがタブレット越しじゃなく、生身で出るのは珍しいね。
「ヒヒッ、そうでしょう。僕も珍しいと思う。でも最後ぐらい、顔を合わせて話をしたいなと思うわけでして。それにちょっとした事後報告もありますんで」
――事後報告?
「用件は、捕らえた理事長の魂だよね、兄さん。アレは今、嘆きの島の霊廟の奥深くに厳重に幽閉しているのだけど、成仏していないんだ。でも、グリムさんが持つ青褪めた炎なら問答無用で消滅することが出来るんじゃないかなって」
「グリム氏の持つ特別な青い炎は、アンデット特攻。生きた亡者であるファントムにも有効なものですからな。当然、死者の仲間であるゴーストにも理論上、効くわけでして。あんな危険人物、一秒でも早くこの世から葬り去りたいところなんですわ」
――学園長の即死の魔法でも死ななかったね。確かにグリムの青い火が効くのかも。
「ヒッ! 俺様は嫌なんだぞ! 朧気ながら記憶にある……あいつに操られている時、自分の思考が上書きされたような……熱に浮かされていた……俺様は誰も傷つけたくねえのに、正義感で学園長を……もしかしたら殺してたかもしれないんだゾ! またあんな目に遭うと考えると、もう嫌なんだゾ!」
「正義感……あ~、所謂ネット特有の叩きみたいなもんですか。コイツは悪い奴だから叩け~的な思考。ドーパミンどばどばで歯止めが効かなくなるわけね……確かに、無暗に合わせるのは危険かもしれない」
「でも完全に遺恨なく葬り去るには、成仏か焼却かの二つだよね。兄さん……」
「あー、やめやめ。暗い話はよそうか。今更アイツのこと悩んでも時間の無駄。それよりも監督生氏、覚えてるかな。拙者としたゲーム内容。あの裏ボスは強敵でしたな! ホームランしか許さないあのクマの勇姿は今でも忘れない……トラウマかな?」
「兄さんが珍しく苦戦した相手だね。監督生さんもゲーム好きなのか、一緒に攻略法を模索したのを僕は覚えているよ」
――元の世界にもゲームがあったから。
「ふひひ、色んなゲームをやりましたなあ。例えば安置を探し出し一方的に攻撃する。見事な神回避、脳汁が出るほど素晴らしいものでしたぞ。インディーズゲームとは思えない高難易度の裏ボス、まさか経験値にあんな意味があるだなんてね」
――びっくりしたよね。
「表ボスのラストバトルの音楽も素晴らしかったし、小気味の良いジョークも好感触。ラスボスのやり応えに、プレイヤーを試すようなメタ要素。どれをとっても非のつけようがない。拙者の中で……監督生氏と過ごした記憶の中で一番鮮やかな記憶がコレなんっスわ」
――え、そうなの?
「ごめんね……拙者引きこもりだから、ゲームぐらいしか共通の思い出しかなくて。でもこれも友情の思い出として数えてもいいよね?」
――こっちも楽しかったよ。
「それは良かった。ああ、でもゲームのほかに文化祭とか色んな思い出が溢れ出て来る……語りたいことが一杯あるけど……オルト、どうにかして時間止められない?」
「それは出来ないよ、兄さん。でも、今記録している。決して忘れることも色あせることもないように、この会話はライブラリに厳重に保管するんだ。あとで兄さんと一緒に見返そうね!」
「そうだね、オルト。兄ちゃんも見たい……」
――二人とも本当に楽しそう……あ、二人とも最後に握手をしてくれない?




