だからけんがくろくならないようにいいこでくらしましょう」
「ねえ、ジェーロ。人間は今日も幸せに生きているよ」
ジェーロと過ごした年の数を、両手の指の数より多く繰り返しました。繰り返す月日の中で人の営みは目まぐるしく変わっていきます。その中でずっとネーヴェは天使として人を導き続けました。
争いの種は芽吹く前に壊しました。孤独なものを見つければ寄り添うものを見つけました。絶望に怯えるものには救いを与えました。恐怖も悲哀も全部なくして、ただ人が幸福であるように天使は人を導きました。
それでも剣は時折黒く染まりかけます。それはもう天使の力だけではどうしようもありませんでした。その手は人間すべてを護れるほど大きくなかったのです。人がほんとうに優しくなければ、天使の力は無力でした。
「ジェーロ、ジェーロ。私、がんばるよ。ジェーロがまた廻ってきたときに、ここが幸せであるようにがんばるから」
何度も還りたいと思いました。何度もやめたいと思いました。それでもジェーロの願いを投げ捨てることなんてネーヴェにはできませんでした。人が幸せに生きられることだけが、ジェーロが確かに生きていた証なのです。優しいジェーロはここにいたのだと、それを証明する唯一の方法なのです。だからネーヴェは天使を続けるのです。優しいジェーロが願ったままに、天使という役割を果たし続けるのです。
「ねえ、君は何をしているんだい?」
長い長い孤独の先で一つの出会いがありました。




