「これであくまはしにました
「ねえ、ジェーロ。ジェーロは幸せだった?」
ネーヴェは誰もいない隣に向けて尋ねました。そこから返事が返ってくることはありません。ネーヴェの隣にもうジェーロはいません。
「私たち、ちょっとしか一緒に居れなかったね」
ネーヴェとジェーロが会ったのは、ジェーロが捨てられた時でした。捨てられた子がネーヴェと同じ間の子だったから、少し気になって近づいたのです。それからずっとふたりで一緒に生きてきました。それは穏やかで優しくてとても幸せな日々でした。ネーヴェはずっとずっとその日々が、ジェーロと一緒の日々が続くのを願っていたのです。
「ずっと一緒に居たかった」
ジェーロは両手で数えられるだけしか生きていませんでした。人間であってもジェーロの生きた年を両手の指の数くらい繰り返すくらい生きるのをネーヴェは知っていました。天界に生きる者はそれよりもっと長く生きるのも知っていました。
「天使はその剣で悪魔を殺しました」
ネーヴェはまっ白になった剣でジェーロを刺して殺しました。心臓を一突きしただけでジェーロは簡単に死にました。口からまっ赤な血を吐いてジェーロは笑って死にました。まっ赤な瞳はまっ黒になって、まっ黒な体はまっ赤になりました。
「こうして悪魔は死にました」
まっ黒なジェーロは人のために死にました。ジェーロに何もしてくれなかった人のために死にました。ジェーロが死んで喜ぶ人の、ジェーロが死んで笑う人の、ジェーロが死ぬのを願う人の、その幸福のために死にました。
「そして……天使は……」
そこでネーヴェは口を閉ざしました。もう何も考えたくなかったのです。たくさんやることがあるとわかっているけれど、どうしてもそれができないのです。だってジェーロが居ないのです。ネーヴェの幸せはもうないのです。どこにもないのです。
ただただネーヴェは泣きました。ひとりぼっちで泣きました。ふたりぼっちのネーヴェとジェーロはひとりぼっちのネーヴェになりました。
「ねえ、ネーヴェ」と優しく呼ぶ声は、もう二度と聞こえません。




