表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

「これであくまはしにました

「ねえ、ジェーロ。ジェーロは幸せだった?」

 ネーヴェは誰もいない隣に向けて尋ねました。そこから返事が返ってくることはありません。ネーヴェの隣にもうジェーロはいません。

「私たち、ちょっとしか一緒に居れなかったね」

 ネーヴェとジェーロが会ったのは、ジェーロが捨てられた時でした。捨てられた子がネーヴェと同じ間の子(あいのこ)だったから、少し気になって近づいたのです。それからずっとふたりで一緒に生きてきました。それは穏やかで優しくてとても幸せな日々でした。ネーヴェはずっとずっとその日々が、ジェーロと一緒の日々が続くのを願っていたのです。

「ずっと一緒に居たかった」

 ジェーロは両手で数えられるだけしか生きていませんでした。人間であってもジェーロの生きた年を両手の指の数くらい繰り返すくらい生きるのをネーヴェは知っていました。天界に生きる者はそれよりもっと長く生きるのも知っていました。

「天使はその剣で悪魔を殺しました」

 ネーヴェはまっ白になった剣でジェーロを刺して殺しました。心臓を一突きしただけでジェーロは簡単に死にました。口からまっ赤な血を吐いてジェーロは笑って死にました。まっ赤な瞳はまっ黒になって、まっ黒な体はまっ赤になりました。

「こうして悪魔は死にました」

 まっ黒なジェーロは人のために死にました。ジェーロに何もしてくれなかった人のために死にました。ジェーロが死んで喜ぶ人の、ジェーロが死んで笑う人の、ジェーロが死ぬのを願う人の、その幸福のために死にました。

「そして……天使は……」

 そこでネーヴェは口を閉ざしました。もう何も考えたくなかったのです。たくさんやることがあるとわかっているけれど、どうしてもそれができないのです。だってジェーロが居ないのです。ネーヴェの幸せはもうないのです。どこにもないのです。

 ただただネーヴェは泣きました。ひとりぼっちで泣きました。ふたりぼっちのネーヴェとジェーロはひとりぼっちのネーヴェになりました。





 「ねえ、ネーヴェ」と優しく呼ぶ声は、もう二度と聞こえません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ