『しゅぎょうなんか、ぜったいにしないぞ!』 其の2
ルナは今、ユイと修行をするため二人で屋敷の庭へと来ている。と言っても、他のメンバーも休憩やルナ達と同じく修行をしている者もいるためルナ達は隅っこの方に居る。
「じゃ、始めるわよ」
「…………はーい」
いつも怠けていて、疲れることをしたくないルナは全然乗り気ではなかった。
「まずは、ルナがどれぐらい強いか見せてもらえるかしら?これを使って、本気で私にかかって来なさい」
そう言うとユイは木製の斧をルナに渡した。
「ふふふふっ、バカなやつだ!このルナさまのじつりょくをみたいだと?いたくて、ないてもしらないぞ!?」
「御託はいいからさっさとかかって来なさい!」
「キィィィィ!このやろう、かくほしろ!わかったか!」
「はいはい、覚悟ね!わかったから来なさい!」
ユイも、木製の斧を持ち構える。
「うおぉぉぉぉりゃぁぁぁ!」
【ブンッ】
【スカッ】
【ブンッ】
【スカッ】
ルナは勢いよく飛び出して行き、木製の斧を振り回すがユイにはかすりもしない。そして、ルナの攻撃を避けたユイは隙だらけのルナの頭に木製の斧を振り下ろす。
【ゴンッ】
「………………」
「うっ………うわぁぁぁぁぁぁん!」
あまりの痛さにルナは泣き始め、ユイの足元にしがみつく。
「何をやっているのルナ?あなたは戦場で痛いからと言って、相手の足元にしがみつき泣くの?」
「だって、痛いんだもん。うわぁぁぁぁん」
「泣かないの!続けるわよ!」
「うぅ…………ステラ…………」
「ここには、ステラは居ないわよ?わかったなら、とっととかかって来なさい!」
「うぅ……うわぁぁぁぁん」
ルナは泣きながら、何度も攻撃をするが相変わらずユイには当たらず、ユイが斧を振り上げルナの頭に攻撃をしようとした時、ルナは先ほどの恐怖から斧を手放し、座り込んで両手で頭をガードした。
「………………」
「ルナ、何やってるの?」
「うぅ……うっ……………こわいからあたまをおさえた」
「あんた馬鹿なの?戦場で武器を捨てて、目を瞑りながら座るなんて、誰もしないわよ?」
「こわいんだから、しょうがないじゃん…………」
「はぁ………。わかったわ、今日はこの辺にしておきましょう。けど、明日からはちゃんとやるのよ?」
「やだっ!ぜったいやらない!いたいの、いやだもん!」
「そんなんじゃ、アギト様やステラに笑われるわよ?それでもいいの?」
「それでもいい!やりたくないもんは、やりたくない!」
「あっそ!じゃ、好きにしなさい!後で、修行つけてと言ってもやってあげないわよ!」
「いいもん!だれがやるもんか!」
こうして、ルナのビビりにより修行は終わりを迎えた。そして、次の日の朝ルナは辺りを気にするかのように、コソコソと屋敷の外へ出た。そして、門を抜け街に行こうとした時門番に捕まった。
「おっ?ルナじゃねーか!どこ行くんだ?確かお前、ユイ様に修行をつけてもらってるんじゃ…………」
「うるさいぞ、おまえ!だまれ、わかったか!」
「あぁ…………」
「いいか!ルナはけして、まちになんかいこうとしてないんだからな!いいな、ぜったいにいこうとなんかしてないんだからな!わかったか!」
「お、おう。んで、街に行って何やるんだ?」
「んっ?何って、さんぽにきまってるだろ!おまえばかだな!」
「ほら!やっぱりお前、街に行こうとしてるじゃねーか!それに、馬鹿はルナの方じゃないか!?」
「あぁぁぁぁ!おまえだましたな!ひきょうだぞ!」
「騙すも何も、お前が馬鹿なだけじゃん…………」
「キィィィィィ!きょうのところは、これでみのがしてやる!【あさって】きやがれ!」
そう言って、ルナは物凄い速さで街の中へと消えていった。
「…………明後日じゃなくて、一昨日だぞルナ」
【街のとある場所にて】
【カンッ………コロコロコロッ…………」
ルナが不機嫌そうな顔で、足元にある小石を蹴りながら、
「くそー!あのへっぽこ【こんばん】のせいでひどいめにあったぜ…………」
【カンッ……カンッ…………カンッ】
すると、少し離れた所から杖を地面に打ち付けながら歩いている女性がルナの方へと近づいてくる。その様子をルナは、黙って見ていた。
【カンッ……カンッ…………カンッ】
徐々にルナの方へと近づいてくる女性。そして、ルナの横を通り過ぎようとした時、女性の杖がルナに当たりそうになり、
「うわっ!」
「あっ!ごめんなさい」
「おい、おまえ!どこをみてあるいている!あぶないじゃないか!」
「ご、ごめんなさい」
「ちゃんとまえをみてあるけ!ばかものが!わかったか!」
「ご、ごめんなさい。私、目が不自由で…………」
「ふじゆう?なんだそれ?」
「目が見えないんです…………」
「………………」
女性の発言で、ルナは一瞬にして理解した。ぶつかりそうになったのも納得がいった。この世界には点字ブロックという物が存在しない。元の世界では、目の見えない人は点字ブロックによって歩く場所が確保されていて、その上を普通の人はむやみやたに歩かない事を。
「おい、おまえ!どこにいこうとしているんだ!?」
「えっ?私ですか?」
「おまえしかいないだろ!ばかなのか?」
「ごめんなさい。声で、ある程度の方向はわかるのですが、複数人近くに居ると難しくて…………」
「あ…………あぁ…………。そ、そうなのか…………」
「そう言えば、何処に行くのか?でしたよね。私は、街の中央にある噴水の前に行こうとしていました」
「ふんすいのまえ?そこにいって、どうするんだ?」
「これを吹くためです」
そう言うと、女性は左手に持っていたケースを持ち上げた。
「なんだそれ?」
「この中には、フルートが入っています。そして、これを吹いて路銀を稼いでいるんです」
「ふーん。それおもしろいのか?」
「はい!とても面白いです!」
「そうか!じゃ、ルナがおまえをふんすいのまえまでつれていってやる!わかったか!」
「えっ?いいのですか?」
「おう!なんってったって、しゅぎょうをサボってルナはひまだからな!」
「修行?サボる?」
「いいからついてこい!」
ルナは、女性の手を取り噴水の前まで歩き始めた。その道中、二人は何気ない会話をする。
「ありがとうございます、ルナちゃん。私の名前は、響輝月音といいます。響いて輝く月の音とかきます」
「おぉ!ルナのなまえもつきってかくみたいだぞ!おかあさんがいってた。ステラはほしってかくんだってさ!」
「ステラ?」
「ルナのふたごのおねえちゃんだ!」
「ルナちゃん双子なの?お姉ちゃんのステラちゃんは居ないの?」
「ステラは、きんにくマッチョとしゅぎょうちゅうだ!ここにはいない」
「そっか…………。会って見たかったな。ところで、ルナちゃんは何歳なの?」
「ごさいだ!」
「五歳!?五歳で修行って、何の習い事してるの?」
「ならいごと?わるいやつとたたかうしゅぎょうしてる!」
「えぇぇぇぇ!悪い奴って、強盗とかかな?」
「ごとう?ごとうってなんだ?」
「強盗よ!うーん、人の物を取ったりする悪い人達の事よ」
「ふーん。そうなのか…………なら、ルナたちはそいつらをこらしめるために、しゅぎょうしてる!」
「怖くないの?」
「こわいぞ!だから、さぼってぬけだしてきた」
「あははははっ。そうだったんだね!でも、そう言う事は大人に任せればいいんじゃないの?ルナちゃんみたく、小さい子がすることじゃないよ」
「それはちがう!ルナがやらなきゃダメなんだ!」
「何で?怪我しちゃうよ?」
「おかあさんをさがすためにつよくならないといけない。じゃないと、アギトといっしょにさがせない!」
「えっ?お母さんとは暮らしてないの?」
「くらしてない!なんか、こっちのせかいにてんせいとかいうやつをしたみたくて、おかあさんとは、はなればなれだ!いっしょにいたのは、ステラだけ!おとうさんも、いるかわからない」
「そんな…………」
「でも、アギトがいっしょにさがしてくれる!」
「アギトって人は良い人なの?騙されてない?」
「アギトはいいやつだ!ルナたちを、わるいやつからたすけてくれた!」
「そう!良かったね、良い人に助けられて!」
「うん。でもアギトは、いまわるいおんなにつかまってる。アギトをたすけないと…………」
「ルナちゃん一人で?」
「いや、ざんねんおっぱいや、おっぱいのおねえちゃん、それからひげたちもいっしょだ!」
「何か凄い名前の人たちばかりね…………」
「ぜんぶ、ルナがかんがえた!」
「あははははっ…………」
「おっ!みえてきたぞ!」
「本当?ありがとうね、ルナちゃん」
「べつにいいぞ!それにこんなの【おたかい】ごようだ」
「お高いの?い、いくらなのかしら…………。私、あんまりお金もってなくて…………」
「おまえ、バカだな!ルナはおかねなんていらないぞ!それに、おかねなんかもらったら、ステラにおこられる」
「そうなの…………。でも、少ししかないけどこれでジュースでも買って!」
そう言うと、月音は少量のお金をルナに渡した。
「ダメだ!ルナが、ステラにおこられる!ステラはおこるとこわいんだ!」
「でも、ここにはステラちゃん居ないよ?ルナちゃんが言わなければわからないよ?」
「……………た、たしかに」
「ねっ!だから、ジュースでも買って来れば!その間、私は準備してるから!」
「う、うん。わかった…………ありがとう」
「おぉ!偉いねルナちゃん、ちゃんとお礼が言えて!」
「おまえ、ルナをバカにしてるな!ルナだっておれいぐらいいえるぞ!」
「そっか、ごめんごめん!それとルナちゃん、せっかくだから私の事を【おまえ】じゃなくて【つきね】と呼んで欲しいな…………」
「あ…………あぁ………。わかった、つ、つきねちゃん」
「ちゃん付け!キャー、ルナちゃん可愛い!」
「う、うるさいぞ!そ、そんなことよりルナはジュースかってくる!」
「うん!いってらっしゃい、気をつけてね!」
「つ、つきねこそ…………」
そして、ルナは逃げるようにしてジュースを買いに行った。




