二人の固有スキルとパルティアンショット
【ジャイアントグリズリーを討伐して一週間後】
「…………師匠。起きてください!修行の時間です」
「うにゃ…………もう、そんな時間か…………?」
ジャイアントグリズリー討伐の後、大きな外傷が見られなかったステラは、三日後には修行を再開していた。阿修羅が壊され、本格的に闘気を練る訓練をしている。
「……………早く起きないと、また雪さんに怒鳴られますよ?」
「それは…………嫌だな」
「…………なら、さっさと起きてください」
ステラは、部屋のカーテンを開け、ラルフは眠い目を擦りながら起き上がる。そして、朝食を取った後、すぐに修行が開始される。
「今日は、お前には闘気を練っての攻撃の型と防御の型を教える」
「………攻撃の型と防御の型?」
「あぁ、闘気は普段は体全体に纏っているだろ?あの状態でも、多少なり攻撃と防御の両方に役立つ。しかし、それはあくまでも多少だ…………。そして、両腕に闘気を溜めると攻撃力が膨れ上がる。それと同時に、防御力も膨れ上がる」
「…………なるほど」
「少し実戦で試してみるか。おーい雪、手伝ってくれ!」
ラルフ達と少し離れた場所で、吹雪のメンバーと話していた雪は、呼ばれると話を切り上げラルフの元へと走って行く。
「はいは~い?お呼びでしょうか?」
「ちょっと手伝ってもらいたいんだがいいか?」
「何なりとお申し付けください!」
「そしたらじゃ、雪はここに立って無慈悲な一撃を俺に撃ってくれ」
「…………えっ?師匠、本気ですか?ただじゃ済まないような気がしますけど」
「まぁ、見てろって!」
「全力でいいの?」
「えっ?いや、二割でお願いします。全力だと、流石に死ぬ」
「了解!」
そう言うと、ラルフは雪と少し距離を置き両腕に闘気を纏わせる。
「いいぞ!やってくれ!」
「はーい!じゃ、行くよ!」
雪は弓を構え、ラルフに向かって無慈悲な一撃を放った。
【キュィィィィン】
【シュッ】
【ズドドドドドッ】
相変わらず、物凄い速さで矢は飛んでいく。そんな目にも止まらぬ速さの矢をラルフは全力で受け止める。
【バッ-ン】
「………………」
「…………痛ぇぇぇぇぇぇ」
ラルフは、その場に倒れのたうち回る。
「…………言わんこっちゃない。大丈夫ですか、師匠?」
「あぁ…………何とか…………」
「だ、大丈夫、ラルフ?」
のたうち回るラルフの姿を見て慌てて雪は走ってくる。
「せ、雪?俺、二割って言ったよな?」
「うん、言った!だから二割の力でやったよ?」
「「…………」」
「何か問題あった?」
「…………いや、無い。俺の考えが甘かっただけだ」
「…………師匠、気になったことがあるんですけど」
「どうした?言ってみろ」
「…………あのぉ、雪さんの弓の構えなんですが、普通の人はこうやって前で構えてそのまま矢を放ちますよね?」
「あぁ、そうだな」
「…………でも、雪さんは背中で構えて撃っているのはなぜですか?」
ステラのその疑問に雪が答える。
「あー、それね!みんな言うよね…………」
「…………あれじゃ、狙うのが難しいような気がするんですけど」
「実はね、実際そうでもないんだよ?私も、昔は前で構えていたんだけど…………ほら、この胸でしょ…………」
雪がそう言いながら、大きな胸を両手で持ち上げる。
「前で構えて弓を放つと、どうしても弦が胸に当たっちゃうの。当たらないように、体から弓を離しちゃうと、放った時にブレてうまく当たらないの。でも後ろで構えると、その問題は解決されるのよ!ちなみに、この打ち方は『パルティアンショット』っていうのよ!」
「………パルティアンショット」
「まぁ、この構えで撃つ人少ないからね…………」
「…………それと、矢が見当たらないのですが何処にあるんですか?」
「あぁ!矢はね、闘気で生成しているのよ!言わば、闘気の塊ね!闘気で練った矢は、物理攻撃をガード出来る魔法をも貫通できるのよ!凄いでしょ!」
「…………じゃ、闘気を拳に集中させて殴ると、魔法でのガードは出来ないって事ですか?」
「うん、出来ないよ!その代わり、さっきラルフがやった両手に闘気を纏わせた防御は、魔法攻撃には意味無いの!あくまでも、闘気による攻撃を闘気でガードするって事よ!」
「…………なるほど。無敵じゃないんですね!」
「この世に、無敵って言葉は存在しないわよ♪」
「よし、ステラの疑問も解けたことだし、修行を再開すっぞ!」
「…………はい!」
「お前には、最終的に『雪の放つ無慈悲な一撃を避ける』ってところまで鍛えるつもりだ。覚悟しておけよ!」
「…………えっ?あれを避ける?ガードじゃなくて?」
「あぁ、ガードじゃなくて『避ける』だ!」
「…………あんな速いのどうやって…………」
「お前の身体能力と固有スキルなら出来るだろ」
「……………でも、私の固有スキルも無意識で出るものだし」
「それを、自分の意志で出させるようにする」
「…………そんなこと出来るんですか?」
「可能だ!実際、誰でも最初は自身の固有スキルは無意識のうちに使っている。そして、使い続ければ自ずと出せるようになる」
「…………ちなみに、師匠と雪さんの固有スキルって何ですか?」
「俺か?俺の固有スキルは『果てしないエネルギーだ」
「私は絶対的な力よ!どう?かっこいいでしょ?」
「……………何か、お二人が闘気使いなのが分かる気がします」
「そうか?」
「…………はい。まんま過ぎる固有スキルです」
こうして、この後もステラはラルフ雪と共に修行に明け暮れるのであった。そして…………
【約束の二か月後 勇者歴250年 10月1日】
午前11時、ステラとラルフはみんなとの約束の日を迎え、合流するため準備をしていた。そこへ雪がやってくる。
「やっぱり、心配だから私も行くー!」
「ダメだ!吹雪のリーダーであるお前がこの件に首を突っ込むべきではない」
「…………そうです。ここは下っ端の師匠に任せて雪さんは自分のやるべきことをやってください」
「ぶぅー!ステラちゃんまでそんなこと言って!」
「それに、こいつだって二ヶ月前よりはかなり強くなってる!だから心配すんな!」
「そうだけど…………」
「…………師匠そろそろ行かないと」
「そうだな…………。じゃ、ちっと行ってくるわ!」
「…………行ってきます」
「くれぐれも無理はしないでね!」
「おう!」
「…………はい!」
ステラ達は、雪の計らいによりお金を出してもらい転移水晶で一気にライザまで行った。そして、ここから馬に乗り2時間かけて勇者の村へと向かったのだが、村からは煙が上がっていた。
「……………師匠、あれって…………」
「あぁ、何かやばいことが起こってるみたいだ。飛ばすぞ、掴まってろ!」
「…………はい」
村の近くまで来ると、激しい物音と共に戦闘が繰り広げられていた。
「……………何これ、どういうこと?」
「これは…………。降りろステラ、あいつ等をぶっ飛ばして中に入るぞ!俺が、先頭を行くからお前は後ろからついて来い!」
「………はい!」
「おらぁぁぁぁ!そこを退けぇぇぇぇ!」
「ん?何だ、お前達は!?」
「うっせんだーよ!退けって言ってるだろ!」
【ドゴッーン】
ラルフは、右腕に闘気を溜めその拳で門の外に居たジャッジメントのメンバーを殴った。殴られた男は、勢いよく吹き飛んでいく。
「な、何だ…………?」
「邪魔だー!おらぁぁぁ!」
「うぎゃゃゃゃゃ!」
【ドゴッーン】
次々と、ジャッジメントのメンバーを吹き飛ばしていくラルフ。そして村の中に入るステラとラルフ。奥では、ボロボロになりながらも必死に戦っているルナ達が居た。
「…………ルナ―――――!」
「何だ!新手か?構わん、殺せ!」
「…………邪魔をするなぁぁぁぁ」
ステラは右手に闘気を集めて、
【スキル 双虎拳・一の牙・延拳】
【ドバッン】
ステラの延拳が当たった男は吹き飛び、その後体が粉砕した。
「ステラ!お前はそのままチビ熊の所へ行け!俺は、ユイと合流する!」
「…………はい」




