【天貫絶矢】
【ミシッミシッミシッ…………】
「グギャッャャァァァ」
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
ジャイアントグリズリーは、更に力を籠める。
「……う………うぅ…………た………すけ………て…………師匠」
「フギャャャァァァァ」
【ドンッ】
「…………ぐはっ」
ジャイアントグリズリーは、ステラを地面へと叩きつけ、両手を組み合わせハンマーの如くステラ目掛けて振り下ろそうとした。
【コンッ】
「グギャッャャ…………?」
突如、ジャイアントグリズリーの頭に小石が当たり、飛んで来た方向をジャイアントグリズリーが見ると、そこには腹を押さえ、フラフラになりながらも立っているアンが居た。
「こ、こっちよ化け物…………」
「フギャャャャャ!」
すぐにジャイアントグリズリーは、四本の手足でアンの方へと走っていく。
「は……はははっ…………私もここまでかしら。ごめん、イーサン、フロイド、先に向こうに行ってるね。またね…………」
「グギャッャャァァァ!」
「くっ!」
アンは自分がもう助からないと、確信していた。自分を含め、四人がかりでもジャイアントグリズリーの足元にも及ばない敵にどう、戦えば勝てるのか?そんな考えはもはや無かった。
「…………ダメっ」
ステラも最後の力を振り絞り、その場に起き上がる。しかし、もはや体力の限界で立っているのがやっとだ。そこから一歩も歩けず、ただアンの最期を見届けるしかなかった………が。
「無慈悲な一撃」
【キュィィィィン】
【シュッ】
【ズドドドドドッ】
【ドッ―――――ン】
雪の無慈悲な一撃が、ジャイアントグリズリーの頭部に当たり、ジャイアントグリズリーは地面を転がっていく。そして
、追い打ちをかけるように
【双虎拳・一の牙・延拳】
ラルフの延拳をまともに食らったジャイアントグリズリーは、大木へと当たる。
「おい!大丈夫か、ステラ!?」
ラルフはすぐにステラの元に行き、生死を確認する。
「…………し、師匠」
「良かった…………」
「…………すみません。全然敵いませんでした」
「そんな事は無い!よく俺達が戻るまで時間を稼いでくれた。後は俺達に任せてゆっくり休んでろ」
「……………はい」
「ラルフ、向こうの三人も無事よ。酷い状態だけど、命に別状はないわ」
「そうか…………。じゃ、殺るか…………」
「そうね…………。私、久々にキレちゃったかも」
「奇遇だな…………俺もだ」
「フギャャャャャ!」
ジャイアントグリズリーは、自分にダメージが与えられたことにより怒りが増す。
「あのオーラ…………。こいつも亜種か…………。面倒な奴だなぁ…………」
「ラルフ、この魔物って…………」
「雪はこの手の魔物は初めてか?こいつはなぁ、魔王軍によって作られたジャイアントグリズリーの亜種だ」
「魔王軍によって作られた?亜種?どういう事?」
「俺も詳しくは知らねーが、勇者がそう言ってたんだとよ!俺もエリスから聞いた話だがな…………」
「勇者って、前に聞いたステラちゃん達の保護者って言うあの勇者?」
「あぁ、そうだ。あいつのスキルで調べたから本当だろう」
「調べる?何それ?どういうことよ?」
「後で話す。それより今は、こいつをぶっ倒す!そこらの魔物より数百倍つえーから気をつけろよ!」
「私は平気よ!だって、ラルフが近接戦闘でどうにかしてくれるんでしょ?」
「ま、まぁそうなるか…………」
「なら、私は後ろから援護するね♪」
「頼むわ。まぁ、雪が居れば負ける気はしねーけどな!」
「そうよ!私は強いんだから!」
「はいはい、そうですね。じゃ、行くぞ!どっかの熊さんと違って、クソ可愛くねー熊さんがお待ちかねだ」
「はーい!」
「グギャッャャァァァ!」
「おいおい、そんな興奮すんなよ?弱い熊ほどよく吠えるってか?バカが…………」
「フギャャャャャャ!」
ジャイアントグリズリーは、怒りに身を任せラルフへと突進する。
「いいのか?ただ突っ込んでくると、雪の的だぞ?」
「!!!」
【キュィィィィン】
【ズドドドドドッ】
【ドゴッ―――――ン】
ジャイアントグリズリーは、またも顔面に雪の無慈悲な一撃を食らい両手で顔を押さえのたうち回る。
(……………すごい。これが雪さんの力………阿修羅ですら全くダメージを与えられなかったのに、こうも簡単に…………)
「グヒャャャャャ」
「ほら、言わんこっちゃない」
【ボトッボトッボトッ】
ジャイアントグリズリーの顔は、雪の無慈悲な一撃を食らい大量の血が流れ落ちている。
「おかしいな…………。本気で放ったんだけど、硬すぎじゃない?」
「ああ、俺も前に魔王軍によって作られた魔物と戦った事あるが、その時もだいぶ硬かったな…………」
「どうすんの、ラルフ?何か良い手はあるの?」
「あるにはあるが、それを使うとこの辺一帯が更地になっちまう」
「却下!デイズや拠点が無くなったら困るのはここで暮らす人たちだから!」
「だよな…………。雪は何か無いのか?」
「あるけど、それにはちょっと時間がかかるのよねぇ………」
「どれぐらいだ?」
「一分!それまで、私無防備になるけどちゃんと守ってくれる?」
「当り前だろ!意地でもここでこの熊を食い止めてやる!」
「よし、じゃお願いねラルフ!」
「あぁ…………」
雪はそう言うと、闘気を練り上げ始める。その間、ラルフはジャイアントグリズリーを雪に近づけさせない為、一人戦うのであった。
「グギャッャャァァァ!」
【シュッ】
「おっと…………」
【ザシュ】
「ほらよっと…………」
「グルルルルッ」
「どうした?もう終わりか?」
「グキャャャャャ」
(…………師匠もやはり尋常じゃない強さ。ジャイアントグリズリーの攻撃をものともしない)
「ありゃ、ちょっと挑発しすぎたかな…………。雪の方は……まだか…………」
「……………!」
「グギャッャャァァァ」
【ブォォォォン】
【シュッ】
【シュッ】
ジャイアントグリズリーは、更に自身のオーラを強めラルフへと飛び掛かる。先程とは打って変わって速度と力が上がっていた。
「あぶね!」
「グラァァァァァ」
「あーぁ、そんなよだれ垂らしてみっともねーな!」
もはや、ジャイアントグリズリーに意思があるのか分からず、ただ攻撃を繰り出す獣へと変わっていた。
【ドンッ】
「やべっ!」
「…………師匠!」
ジャイアントグリズリーの、攻撃がラルフを捉えるがラルフは右手に闘気を集めその攻撃をガードした。
「いてててっ。闘気を防御の方に回してもこの威力かよ。こんなの、闘気を纏えない冒険者じゃ粉々だぞ…………………。まだか雪…………」
そして、ようやく雪の闘気が両手に溜まる。
「ラルフどいて!」
「!!!」
「奥義!」
【スキル 天貫絶矢】
【ギリギリギリッ…………】
【バシュッ】
【ゴゴゴゴゴゴッ…………】
「……………きゃっ」
物凄い地響きを起こしながら、音よりも早く矢はジャイアントグリズリーの顔面へと当たる。
【バッ―――――ン】
【ズドドドドドッ】
【ボトッ………ボトッ……ボトッ】
雪の天貫絶矢は、ジャイアントグリズリーの顔を粉砕した後も、速度を緩めることなくそのまま遥か彼方へと消えて行った。
「…………まるで見えなかった。何が起こったと言うの」
「マジかよ………何て威力してんだ…………」
「ふぅ。疲れたぁぁぁぁ…………」
【バタンッ】
雪は闘気を使い果たし、その場に仰向けで倒れる。そして、すぐさまラルフは雪の元へと急ぐ!
「大丈夫か、雪!?」
「ちょっとダメかも…………。闘気を使い過ぎて立てないや……」
「まさかあんなにすごいとは俺も思っていなかった…………。いったい、どんだけ修行したんだよ?」
「そりゃ…………まあねぇ…………。もう一度ラルフに会いたかったから、いっぱい修行して一人でもラルフを探しに行けるよう頑張ったんだから」
「そうか…………」
「頭を撫でてもいいんだよ?」
「そうだな…………」
ラルフは、優しく雪の頭を撫でた。
「えへへへへっ」
雪の顔は、とろけんばかりのニタッ顔になる。そんな様子を見ていたステラが『私を忘れていませんか?」という顔でラルフを睨みつける。
「ラルフ…………ステラちゃんが凄い顔で見てるんだけど」
「あっ!やべっ…………」
ラルフは慌ててステラの方に走って行く。
「だ、大丈夫かステラ?」
「……………おかげさまで…………プイッ」
(あちゃー、ステラちゃんご立腹だ…………。あとで謝らないと)




