『絶体絶命のステラ。そして、何かを感じ取るルナ………』
急ぎ、デイズへと戻って来たステラ。しかしそこはすでに魔物の襲撃に遭っていた。街の外にも魔物は来ており、ステラとその護衛は魔物討伐を余儀なくされる。
「な、なぜこんなにも早く街に魔物が…………」
「…………そんな事より、今は1匹でも多く魔物を何とかしないと」
「そ、そうだな…………」
護衛の男は剣を構え、魔物へと向かっていく。そして、ステラも阿修羅を装備しようとするが…………
「…………しまった。阿修羅がない」
ステラは、修行の邪魔になると思い闘王の手甲・阿修羅を部屋に置いて来てしまった。
「きゃぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!し、死にたくない!」
「た…………助けて…………誰か」
「皆さん、街の外は魔物で溢れかえっています!吹雪の拠点へと避難してください!くれぐれも街の外には出ないようにしてください」
吹雪のメンバーが、拠点を解放して街の人々を誘導している。しかし、街の中は、すでにパニックに陥っており人々は吹雪のメンバーの誘導も虚しく次々に街の外へと出て行ってしまう。
「…………来ちゃダメ!」
【ザシュ】
【バシュ】
「ぐぁぁぁ…………」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
魔物達の容赦ない攻撃は、次々と街から出てきた人々を襲う。
「………くっ」
ステラも負けじと魔物を攻撃する。
【ガンッ、ドンッ、ドンッ】
「ぐぎゃゃぁぁぁ?」
しかし、幼いステラの攻撃など効くはずもなく魔物はステラへと襲い掛かってくる。
【ドンッ】
【ガッ】
(…………数が多すぎる。どうすればいいの師匠)
それでも、魔物を攻撃しながらどうにかならないものかと考えていたステラは一瞬油断してしまう。
「…………しまっ…………」
魔物の攻撃が当たる直前に、大輔との対決の時に見せたステラの固有スキルが発動する。
【スキル 武神の瞬き】
【ヒュッ】
ステラは間一髪の所で魔物の攻撃を避ける。
(…………見える。これなら!)
ステラの固有スキル【武神の瞬き】は、今はまだ1秒先しか見えないが、今のステラにはそれで十分だった。攻撃さえ受けず、出来るだけ魔物のヘイトを自分に向ければそれだけ街の人は助かる。
その後も、ステラは魔物に襲われそうになっている人々の元へ行き魔物を自分へと引き付けるため、攻撃をする。ステラの計画通り、魔物は攻撃してきたステラに対してヘイトを向ける。
(…………くっ!せめて阿修羅さえあれば)
その時、ステラの元へ三人組の冒険者パーティが助太刀に入る。
「大丈夫か、嬢ちゃん!助太刀するぜ!」
「よく、ここまで耐えてくれました。後は私達にお任せください」
「あんたはさがってろ!」
そう言うと、そのパーティがステラに代わり魔物を引き付ける。
「…………三分待っていてください。すぐに戻ります!」
「三分?あぁ、何かわかんねーけど任せろ!」
「…………すみません、すぐ戻ります」
そう言うとステラは、自分が寝泊まりしている吹雪の拠点へ行き阿修羅を取りに戻る。すぐさま阿修羅を両手に着けて、先程助太刀してくれた冒険者パーティの元に戻る。
「…………すみません、お待たせしました」
「おう!でも、嬢ちゃん戦えるのか?後ろに下がっててもいいんだぞ!?」
「そうよ!まだ小さいんだから、隠れていても誰も文句なんて言わないわ!」
「そうだぜ、ここは俺達に任せろ!」
「…………戦えます!私にも手伝わせてください!お願いします」
冒険者パーティの者達は考える。手が足りていないのは事実。だがしかし、こんな小さい子に本当に戦わせてしまっていいのか?そして、リーダーであろう男が、
「わかった。では、嬢ちゃんは俺達が打ち漏らした魔物を頼む!」
「……………わかりました!それと、私はステラと言います。どうか、皆様も無理はせず」
「俺はイーサン!もちろん、そのつもりだ!」
「私は、アンよ!よろしくね、ステラちゃん」
「俺の名は、フロイド!危なくなったら遠慮せずに下がれよ!」
「…………はい!」
こうして、ステラも加わり門の入り口でこれ以上街の中に魔物を入れることのないよう戦い始める。街の中では、吹雪のメンバーのおかげで、見る見るうちに魔物の数は減っていった。
「………ハァァァァ!」
ステラは出し惜しみせず、いきなり魔石での攻撃を開始した。
【ドゴンッ】
【ビチャッ】
【パ―ッン】
ステラの攻撃を受けた魔物は、手や足が一瞬にして消し飛んでいく。改めて大輔の作った阿修羅の威力がとんでもないと実感したのだった。
【ズシャンッ】
【ドゴンッ】
そんなステラを見たイーサン達はと言うと…………
「す、凄いなステラは…………」
「魔物の部位が一撃で吹っ飛んでいくなんて、いったいどんなからくりよ?」
「大丈夫か、ステラの嬢ちゃん!」
「…………大丈夫、問題ない!」
息一つ切らさないステラ。ラルフ達との修行のおかげで、体力は上がっていた。今までなら、数体倒したら確実にバテていただろうと思うステラ。しかし、今の自分はまだまだやれると確信していた。
「………ハァァァァ!」
その後も、ステラ達は次々と魔物を倒していき、その数あと数体という所まで来ていた。いったい、幾体もの魔物を倒したんだろうか。辺りには、魔物の死骸がずらりと転がっていた。
しかし、休むことなく魔物を倒してきたステラ達も徐々に体力の限界が訪れる。
「ハァ、ハァ、ハァ。大丈夫かみんな?」
「大丈夫と言いたいけど、そろそろきついかも…………」
「もう少しは平気だが、俺の体力が切れる前に武器が壊れそうだ。切れ味も、魔物の血でだいぶ落ちてきている」
「確かに…………。俺の剣もボロボロだ」
イーサン達は各々自分の武器を見る。皆が剣の類の武器で、刃こぼれをしてしまっている。これではいつ折れてもおかしくない状態だ。しかし、無情にも奥から雄たけびを上げ一体の魔物が近寄ってくる。
「グギャャャャアアア!」
「クッ!何だ…………?」
辺りの木々が揺れるほどの雄たけび。イーサン達は皆、耳を押さえながらその魔物を確認する。
「グググゥウウウ」
イーサン達の前に現れた魔物は全長三メートルを超える大きな熊だった。
「ジャ、ジャイアントグリズリー…………だと?」
「そ、そんな…………。何でそんな魔物がこんな所に…………」
「いや、待て!何処か様子が違うぞ!何か変だ…………」
皆がジャイアントグリズリーを見る。そこには目に見える禍々しいオーラと呼べるべきものがジャイアントグリズリーを包んでいる。
「グギャァァァァ!」
ジャイアントグリズリーは、体勢を低くして四本の手足を使いステラの方へ突進していく。
【ドドドドドドッ】
「…………クッ」
ジャイアントグリズリーの突進よ避けたステラはそのままジャイアントグリズリーの後ろから攻撃しようとする。
「よ、よせ!」
ジャイアントグリズリーは向きを変え、二本足で立ってステラを迎え撃つ。
【グギャャャァァ】
右手で間合いに入ってくるステラを薙ぎ払いしようとするが、ステラは瞬時に速度を落とし左側に躱す。そんなジャイアントグリズリーの攻撃はステラの腹を少しかすめる程度だった。
「…………まったく、可愛げのない熊ね。これなら何処かのチビ熊の方が………………」
「!?」
「…………ぐはっ」
【ボトッ、ボトッ、ボトッ】
突然、口から血を吐くステラ。確かに避けたはず、まともには食らっていないと思っていた。しかし、突如腹のあたりが熱くなり血を吐いていた。
(……………なぜ?まともには当たっていないはず…………。かすめただけでこの威力…………。まずい)
「嬢ちゃん!コノヤロォォォォ!」
(……………ダメ。来ちゃダメなのに声が出ない)
「うぉぉぉぉぉぉ!」
イーサンが剣を構え、ジャイアントグリズリーに突っ込んで斬りかかる。
【パキンッ】
ジャイアントグリズリーはイーサンの攻撃を左腕で受ける。そして、すでにボロボロだったイーサンの剣は折れ、ジャイアントグリズリーは右腕でイーサンの顔を平手打ちする。
「ブヒャッ」
【ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ】
と、音を立てて転がっていくイーサン。そして、止まった先で体が痙攣を起こし動けずにいた。
「イーサン!このぉぉぉ、よくもイーサンを…………!」
「おりゃゃゃぁぁぁ」
アンが、両手で剣をジャイアントグリズリーに振り下ろす。
【ガキンッ】
ジャイアントグリズリーはアンの攻撃に合わせ、右手の拳で両手剣を弾き返す。後ろへと剣ごと持っていかれたアンの体は無防備となり、すかさずジャイアントグリズリーは左の拳でアンの腹を殴る。
【ボキッ、ボキッ、ボキッ】
アンは吹き飛ばされると同時に、頭の中で何かが折れるのを感じた。
【バタッン】
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ…………」
アンの口から大量の血が流れる。
「こ、このやろぉぉぉぉぉ」
フロイドも、直ぐにジャイアントグリズリーへ攻撃を仕掛ける。手にした二本の短剣をジャイアントグリズリーの胴体に刺す。
【バキンッ】
フロイドの短剣もまた二本とも折れてしまう。そして、ジャイアントグリズリーはフロイドの頭を掴み、力を籠める。
【ミシッ、ミシッ、ミシッ】
「ぐぎゃゃゃゃゃ」
頭を潰されそうになるフロイドが悲鳴をあげる。そして、ジャイアントグリズリーはそのままフロイドを近くの大木へと投げる。
【バコッ―ン】
大木に打ち付けられたフロイドは一瞬で気を失ってしまった。
「…………クソォォォォォ」
ステラも負けじと、ジャイアントグリズリーに突っ込む。魔石攻撃の準備をして、素早く間合いに入り胴体目掛け攻撃をする。ジャイアントグリズリーは、両手をクロスさせステラの攻撃を受け止める。そして、すぐに攻撃を仕掛けるが、ステラの武神の瞬きが発動して、ステラはその攻撃を避ける。
着実に攻撃を当てては避けを繰り返し、ジャイアントグリズリーの顔に焦りが見え始める。そして、
「…………うおぉぉぉぉ!」
ステラの渾身の一撃がジャイアントグリズリーの顔に当たると同時に、
【バキンッ…………】
「…………そんな」
ステラの右腕の阿修羅が音を立て壊れる。一瞬だけ、唖然としてしまったステラを、ジャイアントグリズリーは見逃さずステラの小さな胴体両手で掴む。
【ギシッ、ギシッ、ギシッ】
「きゃぁぁぁぁ」
徐々に力を強くしていくジャイアントグリズリー。まるで玩具を握りつぶすかのように。そして…………
【ガシャン】
「ん、どうしたのルナ?顔色が悪いわよ、大丈夫?」
「ステラ…………」




