二人の再会 其の3
吹雪のメンバー達による無理矢理婚約パーティが開かれる中、ラルフは1人浮かない顔をしていた。
「どうしたのラルフ?楽しくないの?」
「えっ?いや、そうじゃなくて…………」
「本当に大丈夫?少し休む?」
「………あぁ。少し、夜風に当たってくる」
そう言うと、ラルフは席を立ち屋敷の外へと出て行った。
聞いた話しによると、雪はあの後1人孤児院を出て冒険者になったと言う。そして、12歳になった時にギルドで自分の職業を調べてもらったら弓聖だったことが分かったらしい。
それからの雪は、力をつけクラン【吹雪】を立ち上げ、その後は自分と同じ何処にも身寄りの無い人達を助けるために全力を注いできたらしい。
吹雪で稼いだお金を毎月少しずつ孤児院に寄付していたみたいだ。そう………エドワードがやっていたように。そしてある時、無関係の人間をいたぶる【赤き暴君】噂を聞きつけ、捕えるためにあの森を探索していた………そして、ラルフと出会った。
最初は雪も混乱していたみたいだ。だが、あの優しかったラルフがそんな事するはずがないと、心のどこかで信じていた。
(雪は今まで、人の為に戦って来た。でも、俺はどうだ?雪を失ったと思い込み無関係の人間を幾度となく殺してきた。そんな人間が、人の為に尽力してきた雪の隣に居ていいのか…………)
ラルフは、自分の両手を見た。そこにはハッキリと見えた…………。今まで殺してきた人間の血がびっしりとこびり付いているのを…………。
「うわっ…………」
ラルフは尻もちをつく。そして、自身の震える手をもう一度確認した。やっぱり、手には血が滴り落ちている…………と、同時に今まで自分が殺めた人間の声が聞こえる。
≪た、助けてくれ…………お、俺が何をしたって言うんだ≫
≪ど、どうか命だけは………。子供が生まれたばかりなんだ≫
≪うわぁぁぁ!殺さないでくれ…………≫
≪お願い、殺さないで。お腹の中には新しい命があるの≫
「…………止めろ」
≪た、頼む。この通りだ…………≫
≪か、金が目当てなのか?なら、ほ、ほれ!これをくれてやるから命だけはどうか…………≫
≪こ、この人殺し…………≫
「止めろ…………うわぁぁぁぁぁ!」
ラルフは両手で頭を抱えその場で両膝を付く。
「お、俺が悪かった…………許してくれ…………」
≪あんたに雪様は相応しくない≫
≪出て行け、この人殺し≫
≪お前の汚れた手で、雪様に触れるな!≫
≪私達の優しい雪様を奪わないで!≫
「そ、そうだ…………。俺はここには居ちゃいけないんだ。ここに居たら、雪まで汚れてしまう…………」
ラルフは絶望に晒される。まるで今まで自分がして来たことが自分に返ってくるかのように…………。
「ここから逃げよう…………。きっとここに居ちゃダメな気がする。何もかも忘れ、もう一度旅に出よう。今度は、今までの罪を償う旅へと…………」
そして、ラルフは誰にも気づかれず屋敷を後にした。そして、ラルフの様子が気になり、庭へと出てきた雪。
「ラルフ~?何処に居るの?」
雪がラルフを呼ぶ。しかし、返事は返って来ない。
「もう!ラルフってば、隠れてないで出て来てよ!怒るよ?」
そう言いながら、雪は庭中探す。しかし、一向にラルフは現れない。雪は導かれるように、屋敷の門へと向かった。すると、いつもこの時間には誰も出入りするはずがなく閉まっているはずの門が開ていた…………。
「…………まさか」
雪は慌てて敷地内から出て、デイズの街の中を探し回った。
「何で…………。何でよラルフ…………やっと会えたのに……」
雪の頬には大粒の涙が流れる。
「何でなのよぉぉぉぉぉぉ!」
雪の叫びだけが、デイズの街中に空しく響いた。
【そして、現在】
「…………要するに、師匠がヘタレって事ですね」
「ステラ…………なぜそうなる?」
「…………だって、そうじゃないですか!雪さんだって、過去は過去って言ってたじゃないですか!雪さんは吹っ切れているのに、師匠はいつまでも子供みたいにうじうじと。笑っちゃいますよ」
「お前だって子供じゃねーか!」
「…………師匠と一緒にしないでください!全く、師匠はルナとそっくりですね!」
「あのチビ熊と一緒にすんな!」
【へっくち】
【びろーん】
「汚いわよ、ルナ!鼻水垂れてるじゃない、ほらチーンして!」
「ありがと、ユイちゃん」
【チーン…………ズズッ――】
「全く、風邪ひいたの?いつもお腹出して寝てるからよ!」
「おなかはだしてない!へそはだしてるけど!」
「同じ事よ!」
「いや、いまだれかがルナのわるぐちをいってるのがきこえたような…………」
「ここには、私とルナしかいないわよ?」
「うーん。きのせいか…………」
「気のせいよ!さっ、続きを始めるわよ!」
「はーい!」




