二人の出会い 其の2
【夕食時】
夕食の準備が整い、皆がテーブルを囲い子供達にとって楽しい時間が始まる。今日のメニューは、みんなが待ちに待っていたハンバーグだ。そしてもちろん、その席には寄付で訪れていた男とその息子も来ていた。
「すみませんエドワード様、大したおもてなしも出来ないで」
園長は媚びを売る様に、甘い声でエドワードの機嫌を取っていた。
「いえいえ、構いませんよ。それよりすみません、私達の方こそお世話になってしまって…………」
「仕方ないですよ、この雨では外は危ないですからね。快適とは言えませんがゆっくりしていってください。食料のほうも余裕はありますから」
外は大雨。これでは、帰るに帰れなく今日は孤児院に泊まる事となったエドワード達。
「ほら、お前も皆さんに挨拶をしないか!」
そうエドワードが言うと、エドワードの横に座っていた男の子が席を立ち挨拶をする。
「…………ラルフだ」
場が一気に凍り付く。ラルフの発した言葉はとてもじゃないが挨拶とはほど遠い物だった。そして、ラルフはテーブルに座っている子供達を一通り見る。そして、
「おい、孤児院に居る子供達は、これで全てなのか?」
ラルフの問いに、園長を含め子供達も動揺する。そう、この場には雪だけが居ない。彼女は晩御飯抜きという仕打ちをうけて、今は倉庫に居るからだ。
「おい、ラルフ!何だ、その言い方は!すみません、うちのバカ息子が…………」
「い、いえ…………大丈夫ですよ。そうですよ、今ここに居る子達は私が預かっています。それより頂きましょうか…………」
「そうですね、ではいただきます」
そして、夕食後。エドワードは部屋に案内され休んでいた。ラルフはと言うと、子供達が寝泊まりしている部屋で話をしていた。
「あ……あの、ラルフ様!」
「なんだ?」
「そ………その…………………ラルフ様は好きな子とか居るのですか……………?」
ラルフは考える。自分が好意を寄せている子。今まで、エドワードと旅をしてきたが、その中で出会った人物でそんな感情を覚えた者なんていなかった。孤児院に来るまでは…………。
「そうだな…………。孤児院に気になる奴は居る」
ラルフの一言で、女子たちが一気に盛り上がる。自分ではないかと、顔を赤くするものまで出てきた。
「えっ!?ほんとですか?」
「そ、それは、誰ですか?」
「真っ白な髪をした、俺と同じぐらいの子だ。この場所には居ないがな…………」
子供達は、ラルフの言う真っ白な髪をした人物に心当たりがあった…………雪だ。しかし、子供達はとぼける。
「真っ白な髪をした子供?そんな子は居ませんよ?見間違いではないですか?」
「そ、そうですよ。孤児院にいる子供達は私達で全てです」
「きっと、ラルフ君が疲れてたんじゃねーのか!」
「そ、そうですね。なんせ、この雨の中来てくださったんだし…………はははっ」
「そうか?確かに見たんだけどな…………」
こうして、その日は夜遅くまで話していて園長に怒られ解散となった。
【翌日】
この日も大雨が降っていて、エドワード達は足止めを食らっていた。そして、ラルフが子供達の部屋で遊んでいた時、たまたま窓の外を見た。すると、ずぶ濡れになりながら森へと走っていく雪を見つけた。
「あいつだ!」
「えっ?」
子供達は慌てた。まさかラルフに雪を見られたと。今朝、孤児院の1人の女子が、絶対にラルフに姿を見られるなと念を押していたからだ。ラルフは急いで雪の後を追う。
【バッ】
「あっ!ちょ、ラルフ様」
大雨の中、必死に追いかけるラルフ。やがて雪を視界に捉えるが、森の中を熟知している雪に追いつくことが出来ず、完全に見失ってしまう。
「はぁ、はぁ、あ、あいつはいったい…………」
その頃雪は…………
(ええぇぇ!あの子早すぎでしょ!こんな足場の悪い森で私を追いかけてくるなんて…………。でも、どうしよう…………完全に見られちゃった。これはしばらく森の中で寝泊まりするしかないかな…………。虫が多くて嫌なんだけどなぁ)
結局、ラルフはその後も雪を探しに森の中を駆けたが、見つけることが出来なかった。そして、その日の夕食時ラルフが皆の前で言った。
「親父!俺、あと一週間ここに居たい!みんなと遊びたいんだ!いいだろ?」
「珍しいなラルフがお願いするなんて…………」
勿論、皆と遊びたいなんて嘘である。これっぽっちも思っていない。ラルフは意地でも雪を見つけるためにここに残ると言い出したのだ。そして、ラルフの滞在は一週間延びた。
【次の日】
天候は晴れて、エドワードだけが自分達が滞在している村へと戻る。そして、この日は外で皆と遊んでいるラルフ。
(外なら確実にあいつを見つけられる。出てこい、白髪女!)
しかし、ラルフの当ては外れる。今日、雪は孤児院の掃除をさせられていた。そして、掃除が終わると裏口から森へと行き明日の食事の材料を取りに行った。次の日も、またその次の日も…………。そしてその夜、ラルフが雪の存在を確信する発言をする。
「ここ、数日気になっていたんだが、これほどの食材はどうしているんだ?1日中、ここに居るが行商人が来た気配はない。しかし、食材はある?お前達は何を隠している?」
すると、園長がラルフの問いに応えた。
「こ、この場所は幸いにも食料に恵まれていて、順番で集めに行くと決まっているのです。ラルフ様が来てからは、なるべく子供達と接していただきたく、私自ら取りに行ってました」
「そうか…………」
ラルフは見逃さなかった。園長がヒヤリとした後、『うまくごまかせた』と安堵の表情を浮かべたのを。そして、その夜皆が寝静まった夜中、ラルフは1人孤児院から抜け出して、昼間見つけた、敷地の奥にあるボロ倉庫へと向かっていた。手にはランタンを持ち、倉庫までやってきたラルフはドアを開ける。
【ガラララッッッ】




