二人の出会い 其の1
結局、あの後ステラの修行の続きをしようとしたが、それを許さなかったのか、雪の矢が幾度となくラルフ目掛け飛んできたため、仕方なく修行を止めてデイズの宿へと戻ることにしたラルフ達。そして、宿屋と併設されている酒場で夕食を取りながらステラは、一つの疑問をラルフに問う。
「…………師匠は昔、雪さんと何かあったのですか?何か、彼女とか言っていた気が…………」
「えっ?あ、あぁ…………まぁ…………その何だ…………いろいろとな…………」
【ジーッ】
ステラは持っていたフォークを置き、ラルフを見つめる。
「な、何だよ…………!お、お前には関係ないことだ」
「…………教えてください」
「お前は知らなくていい…………」
【ジ――――――ッ】
再びステラは無言の圧でラルフを見つめる。
「わ、わかった、わかった!話すからそんなに睨むなよ!」
「…………わかりました。で、何があったのですか?」
ラルフも箸を置き、淡々と話し始める。
「あれは、俺達がまだガキだったころの話だ…………」
【勇者歴240年 ラルフ11歳 雪10歳】
とある村の孤児院…………
【ガシャン】
「何をやっているのこのゴミが!」
「ご、ごめんなさい。園長…………」
「全く、こうも毎日毎日物を壊されたら、たまったもんじゃないわよ!もういいわ、あなたは草でもムシってなさい!ったく、本当に使えないんだから…………ブツブツ」
「やーい!また怒られてやんの!」
「馬鹿力のゴミ!」
「ほんと、困るのよね!掃除する私達の身にもなってよね!」
「う…………う…………ごめんなさい」
雪が泣きながら謝るのを見て、他の子供たちは面白がって側にあった花瓶をわざと地面へと落とす。
【カシャンッ】
「きゃっ!」
雪は音に驚き小さな悲鳴をあげる。そして、
「園長~、またこの汚物が花瓶割ってる!」
すると奥から、園長の怒鳴り声がする。
「いい加減になさい!今日のあんたの晩御飯は抜きよ!わかったわね!」
「あははははっ!」
「良かったわね、今日の晩御飯はあんたの大好きなハンバーグだったみたいよ!」
「そ、そんな…………」
孤児院で、ハンバーグと言えばかなりの高級品。そんな代物は、孤児院では半年に一度食べられるかどうかの代物だ。そんな高級品をいつも子供達は楽しみにしていた。そして、今日はその日だった。悪さをすればその日の晩御飯は抜き。そして、余った晩御飯はそれぞれ他の子供たちに支給される。
それを知っていた子供達は、わざと雪に嫌がらせをして、自分達に支給されるようにしていた。
雪は、一番年下というわけではないが、孤児院に入って来たのは一番遅く、完全な下っ端扱いだった。
下っ端の雪は、他の子供達が請け負うはずの仕事も全て押し付けられていた。今日もまた、いつものように仕事をこなしていた雪。
「あ~ぁ、ハンバーグ食べたかったな…………」
【時刻は15時】
今日の仕事を終えた雪は、外で遊んでいる子供達とは合流せずに、明日のご飯の材料を調達するために、近くの森へと来ていた。手には自分で作ったお手製の弓を持ち、今日も野生のウサギを狩っていた。休む暇もなく、遊んでいる暇もない。これはいつもの事だ。そして、その場で狩った数体のウサギを解体してたいた時、突然の大雨に襲われすぐに孤児院へと戻る雪。
すると、孤児院の入り口には、月に一度寄付の為に訪れる身なりの整った男性の馬車が止まっていた。
雪は自身の体を見る。服は雨でびしょびしょで、誰よりもボロボロで、所々穴が開いている。そして、ウサギを解体した時の返り血で全身血だらけだ。おまけに匂いも酷い。
そんな雪は、園長から絶対に寄付をしてくれている男性と会ってはダメだと言い聞かされていた。そして、誰にも気づかれぬようにして、台所に行きウサギの肉をしまい慌てて脱衣所へと向かい体を洗おうとしたのだが、ここで雪の人生を変える1人の人物と出会うこととなる。雪は慌てて服を脱ぎ、風呂場へと入る。あまりにも慌てていたため、タオルの1枚も持たずそのまま生まれたばかりの姿で、ドアを開ける。
【ガラララッッッ】
ドアを開けて入るのだが、雪の目の前には、やはり生まれたままの姿で体を洗っていた1人の男の子が居た。
「えっ!?」
「あっ…………」
お互いが静止する事2秒。2人はお互いの体を上から下まで見て固まっていた。
「………………」
「ご、ごめんなさい」
【ガラララッッッ…………バンッ】
雪は慌てて扉を閉めて、頭をフル回転させ考える。
(な、なんで知らない男の子がいるの?あれは誰?私と同じぐらいの男の子?あんな子見たことない。新しい子がここに来るって話も聞いていない…………じゃ、あの子はいったい)
雪は慌てて衣服を取り、そのままの姿で、窓から抜け出し自分が寝ている物置へと走って行った。




