狂い始めるシエナの計画
【シエナ達がバイス王国へと侵略を開始して、1ヶ月が過ぎた】
カイルの掛け声と共に、ジャッジメントのメンバーは一斉に攻撃を始める。それと同時に、バイス王国の騎士も攻撃を始める
「おい、お前、あれを出せ!」
「ハッ!直ちに!」
そう言うと1人の男がバイス王国の軍旗をあげると、騎士団の後ろにある村から巨大な鏡のようなものが姿を現す。そして、カイル達はその異様な鏡を見て戸惑う。
「な、何だあれは…………」
「終わりだ。侵略者ども…………。フハハハハハッ」
敵部隊のリーダーである騎士の男が高々と笑う。
「か、構わん!一気に畳み掛けるぞ!剣士部隊は前に出ろ、魔法部隊は剣士部隊を援護しろ!」
「「「シャインスピア」」」
数十名の剣士達が前に出て、バイス王国の騎士や盗賊達に攻撃を仕掛ける。そして、魔法部隊が光魔法を放ち敵部隊の数を減らそうとするのだが、魔法部隊の放った魔法はバイス王国の兵士たちに届く一歩手前で、進路を変え魔法を放った術者達の方へと一斉に向かっていく。そして、前方で戦っていた剣士部隊や魔法部隊は自分達の放った魔法を食らってしまう。
「ぐあぁぁぁぁぁ」
「なっ!」
カイルは突然の事で驚き、後ろを振り返る。カイルの見た光景は絶望的なものだった。魔法を放った部隊はほぼ壊滅し、一気にシエナ軍の部隊は半数へと数を減らしたのだった。そして、その光景を見たシエナも顔を歪ませる。
「いったい何が起こったと言うのですか…………」
「シエナ様危ない!」
シエナの前へ一人のジャッジメントのメンバーが立ち、シエナの元へと飛んできた光の魔法を全身で受け止める。
「ぐぁぁぁぁ!」
そして、アギトがすぐに声を上げる。
「下がれ、シエナ!ここは危険だ!」
「な、何でこんな事が…………」
シエナがその場で膝を突き、両手で体を押さえ震えはじめる。
「マホ!シエナを連れて後ろへ下がれ!ここに居たら確実に死ぬぞ!」
「そんな事はわかっている!クソ勇者、私に指示するな!」
マホはシエナを連れて後ろへと下がる。その間も、敵の攻撃は激しさを増していく。
「フハハハハハッ!いいぞ、いいぞ!もっとやれぇぇぇ!」
ジャッジメントの前線はどんどん押し返されていく。そして、リーダーである騎士の男が次の指示をだす。すると、村の門から複数の投擲機が戦場へと運び出された。アギトは、前線の状況を見るため駆け出していた。そして、投擲機に乗る不審な袋を目にする。
(何だあれは?どうみても岩ではないな…………。では、袋は何だ?)
アギトは、鏡の装置も気になったがまずは投擲機に乗る袋を調べる。
【スキル 調べる】
【毒袋】
・生物の状態を毒へと変える
・解毒薬及び回復魔法・デトックスで治療可能
・買値900ゴールド/売値300ゴールド
「逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」
「やれ…………」
アギトが後ろの部隊へと大声で言う。しかし、混乱しているジャッジメントの部隊は逃げようとしない。やがて、複数の投擲機から毒の粉が入った袋が放たれる。
【シュッ】
【ドシャァァァ】
大きな音と共に袋が破裂して、後方一面紫色の粉が漂う。
「カイル、撤退だ!急げ!」
アギトが呆然とした表情で後方を見つめるカイルへと声を掛ける。
「………………」
しかし、あっけにとられていたカイルは何の反応も見せない。仕方なくアギトは、声を張りカイルに言い聞かせた
「カイル!撤退だ!このままじゃ全滅だ!」
「!!!」
アギトの言葉で我に返ったカイルだが
「貴様、誰に指図している!この軟弱者が!今この場でこいつらを殺さないでいつ殺すと言うんだ!」
カイルは、自身の肩に置かれているアギトの手を払って言った
「馬鹿野郎!この状況がわからねーのか!このままじゃ、シエナも死ぬぞ!シエナが死んだら俺達も死ぬだけなんだぞ!」
カイルは周りを見て考える。前方では剣士部隊が戦ってはいるが押されている。そして、後方は毒の粉が蔓延しその場で倒れこむ大勢のジャッジメントのメンバーが居る。
「……………クソが」
カイルは剣を収め、そして前線から離れていく。アギトも離れようとするが、その前に一つやるべきことがあった。そう、鏡の兵器を調べる事だ。
【スキル 調べる】
【魔法反射鏡】
・あらゆる魔法を反射する。
・回復魔法も反射し意味をなさない
・物理攻撃にもろい
「魔法反射鏡だと…………」
カイルは下がりながら、ジャッジメントのメンバーへ大声で叫ぶ。
「回復魔法で治療を済ませしだいお前達も下がれ!ここに居たら死ぬぞ!」
「ゲホッ、ゲホッ…………。ダメです、デトックスが使えません…………ゲホッ、ゲホッ」
「な、何だと…………?」
絶望するカイル。そして、アギトもその場所へと合流した。
そして、カイルがアギトの両肩を掴み問いかける
「おい!いったいこれはどういう事だ!なぜ、回復魔法が使えない!それに、なぜシャインスピアが跳ね返された!説明しろ!」
「説明は後だ!今は撤退に専念しろ!その後で話す!」
「………クッ」
顔を歪ませ、納得のいかない顔をしたカイルはその場から離れていった。
「ゲホッ、ゲホッ…………。あなたも…………早く逃げて…………ください。このままでは…………」
男は体中に毒が回ったのか、口から血を吐きながらアギトに逃げろと言う。アギトは、アイテムボックスから解毒薬Aを出し男に差し出した。
「これは…………?」
「解毒薬だ。これを飲めばすぐに良くなる。今すぐ飲んでこの場から離れるぞ!」
男はアギトに言われた通り渡された解毒薬Aを飲む。すると、男の体からみるみるうちに毒が消えていく。
「す、凄い…………。体が楽になった。ありがとう」
「よし、なら走れるな?このまま一気に後退するぞ!」
「わ、わかった…………」
アギトと男はそのままシエナの居る後方へと下がる。出来る限り助けたいと思うアギトだが、手持ちの解毒薬Aには限りがあるため、悔しいが助ける人物の見切りをつける。
【一方、その頃後方に下がっていたシエナ達は…………】
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。シ………シエナ様…………大丈夫ですか?」
「ゲホッ、ゲホッ。えぇ…………なんとか…………」
「ゲホッ、ゲホッ。す、すぐにデトックスを使える者を連れて参ります」
「その必要はないわ…………ゲホッ。私が範囲魔法でかけます。今は少しでも多くの者を治療して態勢を立て直すわよ」
「わかりました。お願い致します」
シエナは深呼吸をして、天に右腕を上げデトックスを広範囲にかける…………。
【デトックス】
「………………」
しかし、デトックスが発動しても周り者は回復した様子を見せない。それはシエナも同じだった…………。今までに魔法が失敗したことなど無かった。それ故に、シエナもは混乱する。
「な、なぜ効果があらわれない…………」
もう一度シエナは魔法をかける
【デトックス】
「………………」
しかし、結果は同じだった。回復するはずの毒が全く消える様子はない…………。
「ゲホッ、ゲホッ…………そんな…………」
「シエナ様……………………」
【デトックス】
【デトックス】
【デトックス】
何度もシエナはデトックスを試みる…………………が。
「ゲホッ、ゲホッ。シエナ様、ここは一旦退きましょう。この状況で敵軍が来たら元も子もありません」
しかし、無情にも敵はすぐ側まで来ていた。バイス王国の弓騎士隊の無数の矢がシエナ達を襲う。
【ガッ、ガッ、ガッ、ガッ】
「クッ!」
「シエナ様、お下がりください…………ゲホッ、ゲホッ」
徐々に押し寄せるバイス王国軍。矢も先程より数が増していく。そして…………
【ホーリーシールド】
シエナが矢を防ぐため、自身とマホの周りに光の壁を作り物理攻撃を防ぐシールドを張ろうとするが、やはり魔法は発動せず、矢は無情にもシエナの左太ももと右肩に刺さる
【ボトッ、ボトッ、ボトッ】
シエナの体から大量の血が流れ、立っていられずその場に倒れこむ。
【ドンッ】
「……………グッ」
「シエナ様!…………クソッ、どうすれば…………」
と、その時前線に居たカイルとアギト達がシエナに合流した
「シエナ!大丈夫か!?」
「ゲホッ、ゲホッ…………。ポチ………遅いじゃない…………」
アギトは急ぎシエナを調べる。
【スキル 調べる】
【シエナ 19歳 女】
【職業:賢者】
【状態:毒】
【死に至る可能性:◎】
【冒険者ランク:S】
【所属クラン:ジャッジメント】
【固有スキル:大魔法】
*毒はアキサリ草の調合で作れる解毒薬及びデトックスで治療可能
*全身に毒が回っている為、即刻治療が必要
「クソッ…………。シエナ…………撤退だ」
「こ、これぐらい平気よ…………。私に指図しないで…………ゲホッ………」
「この状況を見ろ!戦えるものなどいないじゃないか。このままじゃ、いずれ全滅するぞ!」
「…………ゲホッ、ゲホッ………。ここまで来て…………ゲホッ、撤退なんて出来るわけないじゃない…………ゲホッ」
「マホ、撤退だ。お前の固有スキルならこの場所から逃れることなど造作もないだろ?それとも、お前はこのままシエナを見殺しにしたいのか?」
「……………クッ。わかったわよ」
「カイル、それとお前もこっちに来い。一時撤退だ」
「…………クソが」
「あ、はい」
「ゲホッ、ゲホッ。で、でも、何処に飛ぶわけ?」
「テレシアだ。奴らとなるべく距離を置く」
「わかったわ…………」
「…………ゲホッ。ダメよ…………マホ。このまま…………戦うわよ」
「シエナ様…………。ゲホッ、今は引きましょう………ゲホッ」
【スキル 次元跳躍】
こうして、アギト達は敗北を余儀なくされ、テレシアの街まで下がるのであった。




