↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/133

第5話 皆の希望

 

 トアが消えた場所を見つめたまま、ドリアムが首を捻りフロイスに尋ねる。


「それにしても、トアは一体……先ほどの食事もどこへ消えたのだ?」

「あれは、トアが言うには『収納空間』らしいです。なんでも、人も入れるのだとか。私達も転移させてもらったのですが、一瞬その空間を使うそうです」

「もう次元が違う魔法だな……まるで……」

「はい、伝え聞く賢者のようですね……」

「よく、そのような存在が大事にならずにいられるものだ」

「マルスミア王子が魔法学校の推薦状を書いてくれたようですよ」

「わはははははは! そうだったのか! マルスミアめ、なかなかやりおる。兄上に知られずにそんなことをしていたとは! あいつは良き王となるな!」


 ドリアムは心底愉快そうに笑う。


「しかし、あれほどの力があれば、人質の救出もなんとかなりそうな気がしてくるなぁ」

「そうなんです。まさか初等部の生徒が計画の要とは、我々としては情けない話なのですが……」

「しかし、トアにはそれを成し遂げるだけの力がある。そういう者は遅かれ早かれ、偉業を成す道に進んで行くものだと思うぞ」

「そうかもしれませんね……」

「儂らは、救出した後の貴族達の人生を支える道を考えねばな……とりあえず儂は兄へ連絡を取り、当面の避難先の確保を当たってみよう。いずれ国が落ち着いたら帰れるやもしれぬしな。帝国はトアを捕えて安心しておるが、一番の過ちは、トアの能力を過小評価しておることだ。まさか自分たちが自ら大きな力を招き入れたとは思っていまい」

「そうですね。まさか枷を嵌めた少女が自由に他国を飛び回っているとは、考えてもいないでしょうね」


 そう話すと、ドリアムは早速伝令を飛ばした。



**

 トアはトーマスの牢に食事を届けると、早速手紙を渡した。それを読んだトーマスは、驚きに目を見開いたが、読み終えると、そっと手紙を胸元で握りしめぎゅっと目を瞑る。


(フロイス、ありがとう……本当に……ありがとう……)


 そして、トアの方を見ると手紙を返す。


「トア、私と弟を繋いでいてくれて有難う。食事と一緒にいつも希望を届けてくれている。君はね、私の妻に似ているんだ。だからかな、また妻にもきっと会えると希望が湧いてくるんだよ」

「そうなんだ」


「えへへ」と笑うトアを見て、トーマスは「ああ、本当にフローリアの若い頃にそっくりだ」と穏やかな気持ちになる。


「フロイスには『有難う。皆に情報共有する』と伝えてくれるかい?」

「うん、分かった!」


 そう言うとトアはシュンッと消えて行った。


(本当にすごい子だ……トアを見るだけで生きる力が湧いて来る。どんなに彼女に助けられていることか……)


 トーマスはその日も、柔らかな寝具に包まれて幸せな眠りにつくのだった。


 翌日、この日はちょうど囚人たちが日光浴をする日であった。

 トーマスは手枷をつけられたまま、長く大きな石造りの螺旋階段を上り、地上まで到達する。普段は、思い思いの場所に座ったり軽い運動程度で、体力を過度に使わずに日光浴をするのだが、今日は目的を持って数人の人物に近づいて行く。


「ウォーダー、ベルリス、ミケーディオ……」

「トーマス様……! お声が……」

「しっ……声のことは秘密で頼む」

「はい、承知しました。しかし、本当に良かったです」


 三人の中で一番年上のウォーダーが声を落としてそう言うと、他の二人も頷く。ウォーダー以外の二人は以前のトーマスと同様、拷問により話すことができない。三人はトーマスを牢屋番から隠すように、さり気なく移動した。


「皆、変わりないか?」

「はい」

「実は、弟のフロイスが皆の救出作戦を考えてくれている」

「フロイス様が……! なんと有難いことでしょう」

「また連絡が来ると思うが、情報を共有できる時間は限られている。とりあえず信頼できる者たちに広めて、いつその時が来ても動じず冷静に行動するよう伝えてくれ」

「分かりました」


 他の二人も真剣な表情で頷く。その様子にトーマスは「さすが私の信頼できる部下たちだ……その気力は衰えていないな」と安心する。トーマスが幼い頃より一緒に育った三人は、元々は身寄りのない孤児だった。しかし、魔法が使えることが分かり、トーマスの父カルディマス・ウェスリッドによって引き取られたのだった。ウェスリッド家では、トーマス付きの使用人として十分な待遇を与えられて育った。残念ながら、トーマスの父母は政変時に死去しているが、ウェスリッド家に恩義を感じている三人は、生涯に渡る忠誠をトーマスに誓っている。三人とも、魔法の能力は元より、剣術などの武術の能力も高かった。


(男性の囚人たちには、これで大方広められるだろう……しかし、問題は女性の方だ。どうしたものか……)


 そうトーマスは思いながら、男女の囚人を隔てている金網のフェンスを見る。二重に張り巡らされたそれに近づくだけでも、牢屋番の鋭い警告が飛ぶため、おいそれと近づくことはできない)

 思案していたトーマスだが、女性のエリアの中に目立つ髪色を見つけ、驚愕に目を見開いた。成人女性たちより背の低いその少女たちの髪は銀色で——。


「ト……ア…………?!!」


 トーマスの心臓はどくんと跳ね上がった——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。