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トア・リア物語~双子の妹は姉を助けるため無自覚に無双する~  作者: 河童紀心
第五章

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第2話 行動力

 

「ふむ、その様子だと、図星だな! はは、やっと正解に行きついたぞ!」


 叔父の心底嬉しそうな様子に、マルスミアは不思議に思っていることを聞いてみることにした。


「叔父上は、どうしてその少女のことをそんなに気に掛けるのですか?」


 ドリアムは治癒魔法を受けて回復したが、意識はなかった為、それを見てはいないのだ。それなのに、どうしてこんなにしつこくトアを探すのか、マルスミアは気にはなっていた。しかし、聞いてしまうと逆に藪蛇になりそうで、今までは避けていたのだ。因みに、叡智が城に来訪した際にはトアもいたが、騎士団長のドリアムは城壁の上で陣頭指揮を執りつつ、自ら警備に目を光らせていたので、トアには会っていなかった。


「うむ、それはな……あの時……毒から回復した時、目を開けて見たあの子の顔が、フローリアに似ていたのだ」

「フローリア……ああ、確か……叔父上が昔話してくださった魔法学校時代の親友ですね?」

「ああ。しかも、回復してよく思い出してみると、トーマスにも似ていてな……」

「お二人はご夫婦でしたよね」

「そうなのだ。儂が毒に倒れたのは、ウェスリッド家からの手紙を受け取った直後だった。結局、手紙の内容は読めなかったが……起きたらフローリアとトーマスに似た子がいたのは、偶然だろうか? と思ってな……」

「なるほど……」


 それを聞いたマルスミアは、叔父に話すべきかどうかを少し迷った。


(これだけ気になっている叔父のことだ、トアが魔法学校に行っていることも、多分もう知っているのだろう……聞き込みをすれば、トアのルルド王との繋がりや規格外な噂もすぐに耳に入るだろう……)


 熱血漢ではあるが、思慮深さもある叔父の性格も考慮した結果、マルスミアはドリアムにトアの現状を話すことにした。ただ、規格外な魔法能力については極力避けて伝えることにする。


「叔父上、これから話すことは国家間の一大事でもあります。例え父上にでもお話にならないと誓えますか?」

「……それほどに重大なことに、あの子が関わっているということか…………分かった、秘匿すると誓おう」


 こうして、マルスミアは叔父ドリアムに、現在トアが帝国にいること、それには叡智も関連して動いていることを伝えた。


「な、なんと…………」


 それから、ドリアムはしばらく沈黙した。


「一人でのこのこと帝国に捕まりに行くとは、なんと肝の据わった少女だ! 騎士団にも欲しいほどだな! しかし、叡智も関わっているとなると、トアは何か特別なのだろう?」


(ああ、やっぱり叔父上はどんどん気付いてしまう……)


 叔父のそういう所も尊敬しているマルスミアだが、今はそれが恨めしい。


「まあ、特別です……が、言えません……お聞きになりたければ、直接『叡智』にお聞きください」

「ふはははは、分かった。これ以上は聞くまい」


 そう言うと、ドリアムは大きな手を振って去って行った。

 嵐が去ったというのに、ドリアムの背中を見送るマルスミアは、何か嫌な予感がしていた。


(叔父上は、頑固で行動力があるのは父上と同じだ……何も起こらないといいが……)


 しかし、マルスミアの心配は的中することとなった。

 その日のうちにドリアムは兄であるダンデリアム王に「ダストン第三王子の婚約者が帝国にいるとの情報が入ったので、ダストンの行方も捜索しながら調査に行ってくる」と言い、二名の部下のみを連れて出発してしまった。マルスミアはドリアムが出発した後に、言伝で「秘匿事項は守った」というメッセージを受け取り「はぁ」と溜息をついたのだった。



 翌日にはルルド王国に入ったドリアムは、直属の部下であるガカランとランゾウと共に情報を集め「ルルドの聖女」や「国王に謁見した魔法学校の生徒」など、銀髪の少女に関する情報を聞くと、次の日には魔法学校へ向かった。


(ふふふ、やはり色々興味深い情報が集まって来る。魔法学校でトアの友人にでも話を聞ければ良いが……まぁ、じっさんの所にまずは顔を出すか……)


 そう考えたドリアムは、ガカランとランゾウには、適当に町で調査しておくよう言い、一人魔法学校へ向かった。

 懐かしいかつての学び舎の門をくぐると、真っ先に校長室へと向かって行く。



 ——コンコンコン——


「誰かな?」

「じっさん、元気か!」

「おぉおお??! ドリアムではないか!」

「わはははは、元気そうで何より! その髭も変わってないなぁ!」

「お主のとさかのような赤髪も健在じゃなぁ!」


 校長テリウス・アーベンハーとがっちり握手をすると、ドリアムはどかっと椅子に座った。


「そう言えば、風の噂でお主が臥せっておると聞いて心配しておったのじゃが、すっかり元気そうじゃな?」

「ああ、助けてもらったんだ、ここの生徒にな」

「はて、薬か何かか?」

「とある少女に……トアというんだが……」


 途端に、テリウスが髭をクルクル指先に絡め始める。


(ははーん、じっさんもトアのことをよく知っているのだな……それにしてもあんなにクルクル巻きにするとは……そんなに興味のある生徒なのか)


 雄弁に物語る髭で確信を得たドリアムは、更に質問をする。


「トアについては、既に帝国にいることは知っているのだが、叡智も関わっているというので安心している。ただ、トアの姉のリアに関しては王族の婚約者ということもあり、我々が関わる必要があると思っている。ただ、なにせ帝国に関しては政変以降の情報が分からない。なので、色々知りたいのだが、確かトーマスの弟フロイスがここの理事になっていただろう? 彼と話せないだろうか?」

「うむ、分かった。フロイスに伝えてみよう」


 返事が来たら泊っている宿へ連絡がほしいと言って、ドリアムは部屋を出た。


(まったく、トアの話題からそれた途端に安心して……じっさんは相変わらず分かり易い)


 クククと思い出し笑いをすると、ドリアムは笑顔で学校を後にしたのだった。


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