第22話 再会
少し前に目を覚ましたリアは、暗く固い地面に、一瞬「ここは……?」と分からなかったが、すぐに思い出すと心細くなった。
(マゴットさん、大丈夫だったかな……でも、なんで私が攫われたんだろう? 行方不明のダストン王子の関係かしら?? でも、ここはバール帝国だし……)
連れて来られた後、ここに来た牢屋番がそう言っていたと思い出す。その牢屋番は、リアのことを見ると憐れむような目をしていたので印象的だった。
しばらくすると、遠くから複数人の足音が響いてきた。その足音が、自分の牢の前を通り過ぎていく時、何気なくその集団を見たリアは、途端に目を大きく見開く。
「トア?!」
「あっ、リア! 良かった、大丈夫??」
「なんで、トアがここに??! 攫われたの?!」
「あー、うん、色々あってね……」
「そんな、ひどい! 孤児院の皆には手を出さないって言ったのに!!」
「リア、大丈夫だから、落ち着いて……」
そのやりとりを聞いていた、茶色いマントの男ラーラル・ダハンがニヤリと笑う。
「そもそも、こいつが本命だったんだよ」
「え、どういう……」
「だから、お前はもう用済みだ。おい、牢屋番、こいつの牢の鍵を開けろ」
命令を受けた牢屋番ザットは、牢の鍵を差し込もうとしたのだが……。
「あ、あれっ、開きません」
「何だと?」
ラーラルが鍵をひったくり、自分で開けようとするが、鍵はそもそも鍵穴に差さらない。
「なぜ差さらないんだ!? どけっ、鍵ごと壊してやる」
そう言うと、ラーラルは呪文の詠唱を始め、地面に手を置いた。牢の地面にある砂や土が集まって固まり、鋭利な形へと変化すると、まるで蛇のように鍵穴めがけて飛び掛かった。しかし——。
「グボッ……なに……?」
鍵穴めがけて放たれた攻撃は、当たったと思った瞬間、なぜかラーラルがダメ―ジを負うこととなった。
(結界に反射を付与しておいてよかった~)
張本人のトアはそんなことを考えていたが、いきなり膝を突いて苦しそうに呻くラーラルに、何が起こったのか分からず一同は驚愕する。透明化して付いて来ていたビームスは、「そういえば、魔連で結界のことを聞いたな」と思い出したが、その効果の凄さを目の当たりにして驚いていた。
「ぐっ……そいつに、そいつに枷をつけて牢に放り込んでおけ!!」
「はい!」
ビシッと返事をした牢屋番のザットは、嬉々としてトアに魔力封じの枷を付けた。トアは、フンッと自分の魔力を流し即座に無効化する。
ラーラルが負傷したことで、とりあえずトアはリアの隣の牢に入れられ、一同は去って行った。去り際にケイリュウたち四人が心配そうにトアの方を見たので、トアは大丈夫だと頷いた。
ビームスが近くにいることは知っていたが、トアはリアの牢との境まで行くと、リアに呼びかける。
「リア、リア……聞こえる?」
「トア! トアまでこんな所に……私のせいで……」
「違うんだよ! リアのせいじゃないよ、敵の目的は私なんだよ。さっきの茶色マントもそう言ってたでしょ?」
「でも、なんで……?」
「それは……」
「トア、何か知ってるなら話して! いつも何でも話してくれてたでしょ? それとも、もう話してくれないの? 私が離れちゃってたから……」
リアが悲しんでいくのが伝わって来て、トアは思わずリアの牢に転移していた。
「ごめん、ごめんね、リア! 違うんだよ、リアじゃなくて私のせいなの! 全部話すから、お願い、聞いて! 色々いっぱいあるんだよ、話したいこと!!」
「ト……ア……なんで、ここに…………??」
そう言ったままリアは不思議そうにトアの顔を見ていたが、ぽつりと呟く。
「トア、大きくなったね……」
「リアもだよ……」
トアはリアのことを遠視で確認していたので知っていたが、実際に目の前で話すリアはなんだか違って見えた。
「うふふふふ」
「あはは」
「そっか、そうだよね」
「うん、同じだもん」
「……トアと話したかった」
「うん(私も)」
「怖かったんだ、貴族社会」
「うん(知ってる)」
「毎日、大変で……」
「うん(見てたよ)」
「さ、寂しかっ……た」
「うん……」
目に溜まった涙が溢れる寸前で、二人は見つめ合う。そして、どちらからともなくお互いの身体をぎゅっと抱きしめた。
「トアっ、本当に本当に、トアなんだねっ……うぐっ」
「うん」
「私、何度も夢に見たんだよ、トアと一緒にお遣いに行く夢!」
「うん」
「会わない間に、私のこと忘れちゃうんじゃないかって焦ったりして……」
「そんなこと、あるわけないじゃん」
「なんか……トアの方がお姉ちゃんみたいだよ……」
「違うの……リアのこと、見てたから……」
「見てたの?」
「うん」
涙で潤んだ目をきょとんとさせるリアの身体を、ゆっくり放すと、トアは静かに自分のことを話し始めた。
ビームスの魔力の気配はいつの間にか無くなっている。
「リアが連れて行かれた後ね……」
そうして話し始めたトアの話は、リアが学院や貴族社会で学んだ、どんな範囲からも逸脱していて、話し始めからあまりの事態に突っ込む機会を見失っていたのだが、リアが受け取ったクッキーや水が温かくなる魔道具の話になると「えっ!!!」とついに遮った。
「ト、トア、待って待って、全然ついていけてないよ、私! でも、あのプレゼントの人はトアだったの??!」
「うん」
「すごく……すごく嬉しかったんだよ。私に見えない味方がいるって。あっ、もしかして、不思議な収納袋とか、倉庫の防犯撃退センサーやフカフカ寝具も??」
「うん」
「トア……」
そう言うと、リアはぎゅっとトアを抱きしめる。
「すごく頼もしかったの、本当に。あれのお陰で私、生きてこられた。ありがとう、トア」
「えへへ、良かった」
「そっか、見ててくれたんだ。私が思うより、ずっと近くにトアは居たんだ……でも、よくそんなすごい力、貴族に知られずに隠していられたよね。知られたら大変なことになってたと思うから、良かった……」
それを聞くと、トアは少し気まずそうな顔をする。
「その事なんだけどね……」
そう言って話し始めた内容にリアは更に驚愕することになるのであった。
これにて第四章が終わりました!
読んでいただいている全ての皆様に感謝です(^-^)
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明日から第五章が始まります。引き続き読んでいただければ幸いです♪
暑くて溶けそうですが、皆様くれぐれもご自愛ください(*^^*)




